外れスキル【釣り】を極限にまで極めた結果 〜《神器》も美少女も釣れるようになったけどスローライフはやめません。〜
第4話 ……可愛い……
イライザ教団教主のハレイに頼んで取ってもらった王都最高級ホテルの一室にて、俺達の前で項垂れるエミュール。
それを死んだ魚のような目で見下ろす俺達。
あれから三日だぞ。俺達が総出で手伝って急ピッチで開店したとは言え、客が来ないってのはどういうことだ?
「エミュールちゃん、この三日間何してたのだわ……?」
「そ、そんな残念な子を見るような目で見ないでくださいっ!」
いや、こんな目で見たくもなるって……。
「うぅ……私だって精一杯頑張ったんですよぅ……」
「因みにどんなことやったんだ?」
「え? えっと……タナトさんから装備を受け取って、それを元に値段を下げました。流美シリーズなら定価一〇〇万ゴールドのところを、五〇万ゴールドとか……それにチラシを作って配布したり、珍しいアイテムをガラス越しに展示したり……」
……確かに俺達の言った通りのことをやってるな。それなのに客が増えないってのは一体どういうことだ……?
「えっと……エミュールさん。聞きたいんだけどいいかしら?」
「は、はいミケさん。何でしょう?」
「装備の鑑定証は作ったの?」
…………。
「あ」
ダラダラと脂汗を流すエミュール。
鑑定証……ってのは何だ?
首を傾げてると、ミケが口を開いた。
「鑑定証って言うのは、この装備は本物ですっていう証明書みたいなものよ。初心者向けの装備は大量生産だから要らないけど、激レア装備やアイテムには鑑定証が必要になるの。それが本物かなんて、素人には分からないから」
確かに……俺みたいな素人が、大量生産の武器と激レアの武器を並べられても区別なんて付かないもんな……。
……思い返してみると、一か月前のあの時も鑑定証なんて見なかったな……。
「鑑定証の発行は、鑑定系のスキルを持ってる人なら誰でも出来るはず。……エミュールさんのスキルは確か【審美眼】だったわよね?」
俺達の視線が一斉にエミュールに突き刺さる。
「エミュールさんの【審美眼】なら、問題なく鑑定証を作れるはずだけど」
「……あ、あは、あはははは……わしゅれてました……」
…………。
「だ、だってしょうがなかったんだもん! タナトさんに会うまでは装備を作るためのアイテム集めで奔走してたし、コネを使ってバタバタ動き回ってたから……そ、それにこの三日間も開店準備で忙しかったし……ね?」
……ふむ、なるほど……。
「エミュール、悪かった。俺はお前のことを……悪い言い方をすれば、馬鹿なんじゃないかと思ってた。すまなかった、許してくれ」
「え? や、やだなぁタナトさん。そんな謝らないでくだ──」
「お前は、正真正銘本物の馬鹿だ」
「……言葉もございません……」
◆◆◆
更に一週間後。エリオラとルーシーとイライザは、他の都市の装備屋やアイテム屋をリサーチして商品の相場を調べまくり、ミケとエミュールには手分けをして鑑定証を作ってもらった。
その間俺は、商品となる装備釣りをずーっとやってた。細かい作業は苦手だし。
「へとへと……」
「な、何とか終わったわね……」
「疲れたのだわ……」
おぉ、死屍累々……あのエリオラも、こんなに疲れた顔をしてるのは初めて見た。
「たなとぉ……たなとぉ……」
「おにぃちゃん、なでなでしてほしいのだわ……」
「あー、はいはい。よしよし」
エリオラとイライザが幼児退行してる……この一週間構ってやれなかったからなぁ。今は言う通りにしてやろう。
「タナト……二人の後でいいから、私も、その……」
「ああ、ミケもお疲れさん。よく頑張ったな」
あのミケですら痩せこけてるように見える……あとでたっぷり焼き魚を食べさせてやろう……。
「皆さん、ほんっっっとーーーに助かりました……! まさかここまで大掛かりになるなんて……」
「お前、こういうのは装備屋を開店する前に調べておいたり、用意しておくもんだろ……」
「しゅみましぇん……ただ、装備屋を開けるのが本当に嬉しくて……」
エミュールは店内を見渡し、近くに置かれていた黒天シリーズをそっと撫でた。
店内は装備屋らしいゴテゴテした感じではなく、女性でも入りやすいように明るいイメージの内装となっている。
その上で店先のガラスケースには流美シリーズを男女一式起き、値段を一〇〇万ゴールドに斜線を引いて六五万ゴールドの値札を掛けた。当然、この方がお得感が増すからだ。
更にガラスにはエミュールの顔写真と、【審美眼】スキルを持っていることを明記した紙を貼っている。
そのお陰か、開店前だというのに既に十人以上の客が外で待っていた。鑑定人の顔写真があるのと無いのとでは、こんなに違いが出るんだな……。
「あばばばばばっ……私の店にこんなに沢山の人が……!」
「おい、緊張し過ぎだぞ。店主ならどしっと構えろ」
「はははははははひぃっ……!」
……大丈夫かこいつ?
「開店十秒前なのだわっ」
「エミュール、気張るべし」
「あわわわわわわ……!?」
五……四……三……二……一。
「開店なのだわ!」
イライザがドアを開けると同時に、客が店内へとなだれ込んで来る。
「あばっ……あばばばばっ……!?」
「ほらエミュールさん、挨拶」
ミケに背中を押され、エミュールは客の前に立つとギュッとエプロンを握る。
「あ、あにょっ……しょにょっ……」
客の視線がエミュールに刺さる。
頑張れ、頑張れエミュール。
「……ぇぅ……いっ……いいいいいらっしゃいましぇ! 装備屋エミュールへようこしょぉ!」
……お前……ここでも噛むか……。
「ぁぅ……」
噛んだことで余計恥ずかしくなったのか、目に涙を溜めて目を回している。
こりゃあ、俺達も手伝わないとダメか……?
「……可愛い……」
……何? 今何と……?
「ああ、可愛い……」
「小動物みたいだ……」
「プルプル震えてていい……」
「エミュールたん萌えーーーー!」
客の一人の呟きが周りに広がり、厳つい冒険者のおっさん達が盛り上がる。
「「「「「かっ、わっ、いい! かっ、わっ、いい! かっ、わっ、いい!」」」」」
「えっ、えっ、えっ?」
…………これは……結果オーライ、か?
それを死んだ魚のような目で見下ろす俺達。
あれから三日だぞ。俺達が総出で手伝って急ピッチで開店したとは言え、客が来ないってのはどういうことだ?
「エミュールちゃん、この三日間何してたのだわ……?」
「そ、そんな残念な子を見るような目で見ないでくださいっ!」
いや、こんな目で見たくもなるって……。
「うぅ……私だって精一杯頑張ったんですよぅ……」
「因みにどんなことやったんだ?」
「え? えっと……タナトさんから装備を受け取って、それを元に値段を下げました。流美シリーズなら定価一〇〇万ゴールドのところを、五〇万ゴールドとか……それにチラシを作って配布したり、珍しいアイテムをガラス越しに展示したり……」
……確かに俺達の言った通りのことをやってるな。それなのに客が増えないってのは一体どういうことだ……?
「えっと……エミュールさん。聞きたいんだけどいいかしら?」
「は、はいミケさん。何でしょう?」
「装備の鑑定証は作ったの?」
…………。
「あ」
ダラダラと脂汗を流すエミュール。
鑑定証……ってのは何だ?
首を傾げてると、ミケが口を開いた。
「鑑定証って言うのは、この装備は本物ですっていう証明書みたいなものよ。初心者向けの装備は大量生産だから要らないけど、激レア装備やアイテムには鑑定証が必要になるの。それが本物かなんて、素人には分からないから」
確かに……俺みたいな素人が、大量生産の武器と激レアの武器を並べられても区別なんて付かないもんな……。
……思い返してみると、一か月前のあの時も鑑定証なんて見なかったな……。
「鑑定証の発行は、鑑定系のスキルを持ってる人なら誰でも出来るはず。……エミュールさんのスキルは確か【審美眼】だったわよね?」
俺達の視線が一斉にエミュールに突き刺さる。
「エミュールさんの【審美眼】なら、問題なく鑑定証を作れるはずだけど」
「……あ、あは、あはははは……わしゅれてました……」
…………。
「だ、だってしょうがなかったんだもん! タナトさんに会うまでは装備を作るためのアイテム集めで奔走してたし、コネを使ってバタバタ動き回ってたから……そ、それにこの三日間も開店準備で忙しかったし……ね?」
……ふむ、なるほど……。
「エミュール、悪かった。俺はお前のことを……悪い言い方をすれば、馬鹿なんじゃないかと思ってた。すまなかった、許してくれ」
「え? や、やだなぁタナトさん。そんな謝らないでくだ──」
「お前は、正真正銘本物の馬鹿だ」
「……言葉もございません……」
◆◆◆
更に一週間後。エリオラとルーシーとイライザは、他の都市の装備屋やアイテム屋をリサーチして商品の相場を調べまくり、ミケとエミュールには手分けをして鑑定証を作ってもらった。
その間俺は、商品となる装備釣りをずーっとやってた。細かい作業は苦手だし。
「へとへと……」
「な、何とか終わったわね……」
「疲れたのだわ……」
おぉ、死屍累々……あのエリオラも、こんなに疲れた顔をしてるのは初めて見た。
「たなとぉ……たなとぉ……」
「おにぃちゃん、なでなでしてほしいのだわ……」
「あー、はいはい。よしよし」
エリオラとイライザが幼児退行してる……この一週間構ってやれなかったからなぁ。今は言う通りにしてやろう。
「タナト……二人の後でいいから、私も、その……」
「ああ、ミケもお疲れさん。よく頑張ったな」
あのミケですら痩せこけてるように見える……あとでたっぷり焼き魚を食べさせてやろう……。
「皆さん、ほんっっっとーーーに助かりました……! まさかここまで大掛かりになるなんて……」
「お前、こういうのは装備屋を開店する前に調べておいたり、用意しておくもんだろ……」
「しゅみましぇん……ただ、装備屋を開けるのが本当に嬉しくて……」
エミュールは店内を見渡し、近くに置かれていた黒天シリーズをそっと撫でた。
店内は装備屋らしいゴテゴテした感じではなく、女性でも入りやすいように明るいイメージの内装となっている。
その上で店先のガラスケースには流美シリーズを男女一式起き、値段を一〇〇万ゴールドに斜線を引いて六五万ゴールドの値札を掛けた。当然、この方がお得感が増すからだ。
更にガラスにはエミュールの顔写真と、【審美眼】スキルを持っていることを明記した紙を貼っている。
そのお陰か、開店前だというのに既に十人以上の客が外で待っていた。鑑定人の顔写真があるのと無いのとでは、こんなに違いが出るんだな……。
「あばばばばばっ……私の店にこんなに沢山の人が……!」
「おい、緊張し過ぎだぞ。店主ならどしっと構えろ」
「はははははははひぃっ……!」
……大丈夫かこいつ?
「開店十秒前なのだわっ」
「エミュール、気張るべし」
「あわわわわわわ……!?」
五……四……三……二……一。
「開店なのだわ!」
イライザがドアを開けると同時に、客が店内へとなだれ込んで来る。
「あばっ……あばばばばっ……!?」
「ほらエミュールさん、挨拶」
ミケに背中を押され、エミュールは客の前に立つとギュッとエプロンを握る。
「あ、あにょっ……しょにょっ……」
客の視線がエミュールに刺さる。
頑張れ、頑張れエミュール。
「……ぇぅ……いっ……いいいいいらっしゃいましぇ! 装備屋エミュールへようこしょぉ!」
……お前……ここでも噛むか……。
「ぁぅ……」
噛んだことで余計恥ずかしくなったのか、目に涙を溜めて目を回している。
こりゃあ、俺達も手伝わないとダメか……?
「……可愛い……」
……何? 今何と……?
「ああ、可愛い……」
「小動物みたいだ……」
「プルプル震えてていい……」
「エミュールたん萌えーーーー!」
客の一人の呟きが周りに広がり、厳つい冒険者のおっさん達が盛り上がる。
「「「「「かっ、わっ、いい! かっ、わっ、いい! かっ、わっ、いい!」」」」」
「えっ、えっ、えっ?」
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