外れスキル【釣り】を極限にまで極めた結果 〜《神器》も美少女も釣れるようになったけどスローライフはやめません。〜
第16話 よく言った
愕然とロゥリエを見ていると、イライザが俺の前に立ち塞がってロゥリエを見上げる。
「ロゥリエ」
「あぁ? 誰だァ、テメェ。……あれ? あなた……まさか、イライザさんですの?」
「ええ。久しぶりなのだわ」
ロゥリエの目が見開かれる。
それもそうだ。イライザは千年前に亡くなったとされる魔族。それがまさかここにいるとは思わないだろう。
「何故ここに……? 輪廻転生……? いや、その体は間違いなくイライザさんの……あなた、死んだのでは……?」
「……私にも色々あったのだわ」
まあ、エリオラのあの魔法は説明しようとしても難しいもんな……俺も今だに理解出来てないし。
「……ああ、なるほど。タナト様から感じたいけ好かない匂いは、裏切り者のイライザさんの匂いでしたか……」
ロゥリエは苛立ったように脚を組み替える。
「……ふーん……イライザさんにとって、タナト様はとっても大切な人のようですね」
「にゃっ……!? にゃにゃにゃっ、にゃっ……!?」
ボシュッ……! ちょっ、瞬間湯沸かし器みたいな赤くなり方やめろ……!
「そーれーなーらー……イライザさん、もう一度こっちに来ませんか?」
「……へ?」
ロゥリエがくすくすと笑い、イライザに手を伸ばす。
「匂いでモロバレですわ。あなたは今、不安で悩んでいることが」
「っ……何のことだか、分からないのだわ……」
「相変わらず、嘘も下手っぴですね」
ロゥリエは手を大仰に広げ、空を仰ぎ見る。
「混沌と破壊が蔓延っていた三〇〇〇年前。あなたは、全てを破壊する最悪の権化として生き生きしていました」
右手から黒い何かが吹き出し、憎しみの表情のイライザを形作る。
「イヴァロン様が封印された二〇〇〇年前。あなたは、人間との架け橋になるべく、古今東西を走り回っていました」
左手から白い何かが吹き出し、柔和な笑みのイライザのを形作る。
「ですが今のあなたは、どちらでもない。今までは破壊か融和か……確固たる目的のために生きてきましたが……それを失ったあなたは、目的も不確定、未来も不明瞭な今を、ただ生きている」
「……それ、は……」
……後ろからじゃ見えないが、多分イライザは図星を突かれて戸惑ってるみたいだ。
「家族を全員失い、一人ぼっちのあなた……あぁ、なんて可哀想。なんて不憫。なんてお気の毒。なんて憐れ。なんて無惨。なんて痛々しいのでしょう!」
両手を合わせ、白と黒のイライザをかき消した。
「それなら、また一緒に世界を壊そうではありませんか。自分で作り上げた世界を自分で破壊する……これ以上ない、極上の体験だと思いますわァ♡♡♡」
……何だよ、それ……そんなのイライザが承諾するわけないだろ……!
だが……イライザは、黙っている。拳を握り締め、俯いて……。
「アァァンッ、タナト様ぁ♡♡ そう、それ、その怒りと絶望と悲哀の混じった表情……♡ とってもグレイト、とってもエクセレント、とっても素晴らしいですわァ♡♡♡」
クソッ……キチガイ女が……!
「黙って聞いていれば……! ロゥリエ・ウンターガング! あんた、イライザちゃんの何を知ってるってのよ!」
「……誰だよお前。部外者は引っ込んでろ」
「いいえ引っ込まないわ! 目的が不明確? この世界なんてねぇ、目的もなく生きてる人は山ほどいるわよ! 未来も不明瞭? 当たり前じゃない。未来は不明瞭だからこそ、生きていて楽しいのよ!」
ミケは槍をロゥリエに向け、正義と信念の篭った目で睨みつける。
「確定された未来なんてクソよ! 未来が分からないから、今を精一杯生きて、泥臭くても生き抜いて……そうしてやって来た未来にこそ意味がある! イライザちゃんはそれを分かっていて、不安な今を楽しもうと私達と共にいる! ──私達と一緒にいることを、意味が無いように言うんじゃないわよ!!!」
……ミケ……。
「ミケ、ちゃ……」
「よく言った、ミケ」
ゴオオオオオッッッ──!!!!!!
ぐっ……! この圧迫感……エリオラ……!?
俺の背後に隠れていたエリオラが、ふわりと浮かんでイライザの隣に並ぶ。
「イライザに家族がいない……いつからそう錯覚していた?」
「お姉ちゃん……」
「安心して、イライザ。あなたは一人じゃないわ」
イライザの手を握って笑みを浮かべるエリオラ。
……そうだ、こいつはもう、一人じゃない。
「イライザ、俺達はもう家族だ。だからお前のことは──何があっても守ってやる」
「────おに、ちゃ……」
安心させるように、一人じゃないと思わせるように、心の支えになるように、イライザの頭を撫でる。
そうだ、こいつは一人じゃない。俺達がいる。
そこだけは絶対に譲れない。
そんな覚悟を込めた目でロゥリエを見上げる。と……。
「……あれ? あな、た……は……?」
……何だ? ロゥリエの奴、エリオラを見て固まってるぞ……?
「ロゥリエ、私のこと覚えてる?」
「……え、いや……あの……え? 嘘、そんな、え……は? マジですの……?」
全身から滝のように汗が流れるロゥリエ。
エリオラはそれを、空虚な目で見据える。
「昔、同じように調子に乗ってたことがあった。今でも忘れないわ、あの時のあなた」
「ぁぅ……ぇぅ……っ!?」
「あの時は半殺しで済ませたけど……今回は、タナトを傷付けようとした。私の妹を誑かした。──万死に値する」
エリオラから迸る圧が、時間を追うごとに濃密に、厚みを増して周囲へ広がる。
「まっ、まままままままままままままままままままままままっ、ましゃか、この魔力……!? え、え、え……エルルルルルルルルルルルルルルィオルルルルルルルルルルルルルルルルァァァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアア!?!?!?!?」
「ぶい、久しぶり」
全身をガタガタと震わせ、明らかに恐怖しているロゥリエ。昔エリオラに半殺しにされた時のトラウマが蘇ってるんだろうな。
「な、ななななな何でっ、何であなたがここに……! イヴァロン様に封印されたんじゃないのですか!?」
「色々あって復活した。今はそんなことどうでもいい。──ロゥリエ、あなたを始末する」
「ロゥリエ」
「あぁ? 誰だァ、テメェ。……あれ? あなた……まさか、イライザさんですの?」
「ええ。久しぶりなのだわ」
ロゥリエの目が見開かれる。
それもそうだ。イライザは千年前に亡くなったとされる魔族。それがまさかここにいるとは思わないだろう。
「何故ここに……? 輪廻転生……? いや、その体は間違いなくイライザさんの……あなた、死んだのでは……?」
「……私にも色々あったのだわ」
まあ、エリオラのあの魔法は説明しようとしても難しいもんな……俺も今だに理解出来てないし。
「……ああ、なるほど。タナト様から感じたいけ好かない匂いは、裏切り者のイライザさんの匂いでしたか……」
ロゥリエは苛立ったように脚を組み替える。
「……ふーん……イライザさんにとって、タナト様はとっても大切な人のようですね」
「にゃっ……!? にゃにゃにゃっ、にゃっ……!?」
ボシュッ……! ちょっ、瞬間湯沸かし器みたいな赤くなり方やめろ……!
「そーれーなーらー……イライザさん、もう一度こっちに来ませんか?」
「……へ?」
ロゥリエがくすくすと笑い、イライザに手を伸ばす。
「匂いでモロバレですわ。あなたは今、不安で悩んでいることが」
「っ……何のことだか、分からないのだわ……」
「相変わらず、嘘も下手っぴですね」
ロゥリエは手を大仰に広げ、空を仰ぎ見る。
「混沌と破壊が蔓延っていた三〇〇〇年前。あなたは、全てを破壊する最悪の権化として生き生きしていました」
右手から黒い何かが吹き出し、憎しみの表情のイライザを形作る。
「イヴァロン様が封印された二〇〇〇年前。あなたは、人間との架け橋になるべく、古今東西を走り回っていました」
左手から白い何かが吹き出し、柔和な笑みのイライザのを形作る。
「ですが今のあなたは、どちらでもない。今までは破壊か融和か……確固たる目的のために生きてきましたが……それを失ったあなたは、目的も不確定、未来も不明瞭な今を、ただ生きている」
「……それ、は……」
……後ろからじゃ見えないが、多分イライザは図星を突かれて戸惑ってるみたいだ。
「家族を全員失い、一人ぼっちのあなた……あぁ、なんて可哀想。なんて不憫。なんてお気の毒。なんて憐れ。なんて無惨。なんて痛々しいのでしょう!」
両手を合わせ、白と黒のイライザをかき消した。
「それなら、また一緒に世界を壊そうではありませんか。自分で作り上げた世界を自分で破壊する……これ以上ない、極上の体験だと思いますわァ♡♡♡」
……何だよ、それ……そんなのイライザが承諾するわけないだろ……!
だが……イライザは、黙っている。拳を握り締め、俯いて……。
「アァァンッ、タナト様ぁ♡♡ そう、それ、その怒りと絶望と悲哀の混じった表情……♡ とってもグレイト、とってもエクセレント、とっても素晴らしいですわァ♡♡♡」
クソッ……キチガイ女が……!
「黙って聞いていれば……! ロゥリエ・ウンターガング! あんた、イライザちゃんの何を知ってるってのよ!」
「……誰だよお前。部外者は引っ込んでろ」
「いいえ引っ込まないわ! 目的が不明確? この世界なんてねぇ、目的もなく生きてる人は山ほどいるわよ! 未来も不明瞭? 当たり前じゃない。未来は不明瞭だからこそ、生きていて楽しいのよ!」
ミケは槍をロゥリエに向け、正義と信念の篭った目で睨みつける。
「確定された未来なんてクソよ! 未来が分からないから、今を精一杯生きて、泥臭くても生き抜いて……そうしてやって来た未来にこそ意味がある! イライザちゃんはそれを分かっていて、不安な今を楽しもうと私達と共にいる! ──私達と一緒にいることを、意味が無いように言うんじゃないわよ!!!」
……ミケ……。
「ミケ、ちゃ……」
「よく言った、ミケ」
ゴオオオオオッッッ──!!!!!!
ぐっ……! この圧迫感……エリオラ……!?
俺の背後に隠れていたエリオラが、ふわりと浮かんでイライザの隣に並ぶ。
「イライザに家族がいない……いつからそう錯覚していた?」
「お姉ちゃん……」
「安心して、イライザ。あなたは一人じゃないわ」
イライザの手を握って笑みを浮かべるエリオラ。
……そうだ、こいつはもう、一人じゃない。
「イライザ、俺達はもう家族だ。だからお前のことは──何があっても守ってやる」
「────おに、ちゃ……」
安心させるように、一人じゃないと思わせるように、心の支えになるように、イライザの頭を撫でる。
そうだ、こいつは一人じゃない。俺達がいる。
そこだけは絶対に譲れない。
そんな覚悟を込めた目でロゥリエを見上げる。と……。
「……あれ? あな、た……は……?」
……何だ? ロゥリエの奴、エリオラを見て固まってるぞ……?
「ロゥリエ、私のこと覚えてる?」
「……え、いや……あの……え? 嘘、そんな、え……は? マジですの……?」
全身から滝のように汗が流れるロゥリエ。
エリオラはそれを、空虚な目で見据える。
「昔、同じように調子に乗ってたことがあった。今でも忘れないわ、あの時のあなた」
「ぁぅ……ぇぅ……っ!?」
「あの時は半殺しで済ませたけど……今回は、タナトを傷付けようとした。私の妹を誑かした。──万死に値する」
エリオラから迸る圧が、時間を追うごとに濃密に、厚みを増して周囲へ広がる。
「まっ、まままままままままままままままままままままままっ、ましゃか、この魔力……!? え、え、え……エルルルルルルルルルルルルルルィオルルルルルルルルルルルルルルルルァァァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアア!?!?!?!?」
「ぶい、久しぶり」
全身をガタガタと震わせ、明らかに恐怖しているロゥリエ。昔エリオラに半殺しにされた時のトラウマが蘇ってるんだろうな。
「な、ななななな何でっ、何であなたがここに……! イヴァロン様に封印されたんじゃないのですか!?」
「色々あって復活した。今はそんなことどうでもいい。──ロゥリエ、あなたを始末する」
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