外れスキル【釣り】を極限にまで極めた結果 〜《神器》も美少女も釣れるようになったけどスローライフはやめません。〜

赤金武蔵

第9話 私の番ね♪

「……たっか……」


 ジェットウォーターコースターに登って下を見る。


 うわ……下で待ってるエリオラとイライザが小さい……。


 よくよく考えると、俺こんな高い所に登ったの初めてかも……。


 横に並んでる人達を横目に、空いている通路歩くと、奥にいたスタッフが笑顔で近付いてきた。


「こんにちはー、チケットを拝見いたしまーす」


「あ、これお願いします」


「はい。ではカップルシートへどうぞー」


 ……は? カップルシート? 何それ聞いてない。


 スタッフに着いていくと、二席ある横並びの台とは違う、一席しかない台に案内された。台の大きさも一回り小さく、確実に密着するほどの大きさだ。


「では彼氏さん、こちらへどうぞー」


「え、いや彼氏じゃ……」


「いいから座りなさいよっ」


 ミケに押されて、台の前に立つ。……これ、どうやって乗るんだ?


「あ、初めてですか? なら、ゆっくり足から入れてください。面白い感覚が味わえますよ」


 脚から……。


 にゅ……じゅぶぶぶ……う、おっ!? 中が生暖かいお湯みたいだ……!


「これ、星天アクアリウムと同じ水だから、中で会話も出来るし息も出来るわよ。さあ、入りなさいっ」


「ちょっ、押すな押すなっ」


 ゆっくり、体も入れる。


 全身をお湯で包まれてるのに、息も出来て外の景色もクリアに見える。本当にアクアリウムと同じ原理なんだな。


「タナト、そこ座って!」


「あ、おう」


 水で作られたクッションに身を埋める。全身柔らかいもので包まれすぎて意識が飛びそうだ……。


「では、彼女さんもどうぞー」


「はーいっ」


 ……え?


 ミケが中に入ると、俺の股の間に入り込むように座った。


「ちょっ、ミケ!?」


「こ、これがこの台の乗り方よっ」


 とか言いながら、お前まで顔真っ赤じゃねーか!


 ミケが全身を俺に預けてくる。


 水の中、まるで絹のように揺らぐミケの髪。


 ここが水中で良かった。ここでミケの匂いを直で嗅いだら、俺は間違いなくどうにかなってただろうな。


「あ、彼氏さーん。彼女さんの腰に手を回してくださーい」


「はいっ!?」


「こういう席なのでー」


 マジで言ってんの? マジで言ってんの!?


「は、早くしなさいよっ。皆を待たせてるわ……!」


「お……おぅ……」


 落ち着け俺。落ち着くんだ。そう、これはルール。このアトラクションに乗るルールだから……!


 ゆっくり、ミケの体に手を回す。


「んっ……ぁ……」


「うっ……!」


 う……わ……細い……。


 ミケの体って、こんなに華奢で、壊れそうなものだったのか……?


「も、もっと強く、抱き締めて……」


「こ、こうか……?」


 キュッ──。


「んんっ!」


「あっ。ご、ごめっ……!」


「ち、違うの。だから、もっと強く……」


「お……おう……」


 ええいままよ!


 ギュッ──。


「ぁ……」


 う、わぁ……ヤバい、これ……。


 あのミケが、俺の腕の中で小さく縮こまっている。


 そのせいで密着度が半端じゃない。


 ミケの体を全て感じられて……これはヤバい……! 主に俺の理性と下半身が……!


 心臓の音がうるさすぎる……!


 スタッフの人が何を言ってるのか聞こえない。けど、スタートするとか何とかって言ってる気がする。


 直後、ゆっくり動き出す水の玉。


 その玉が徐々にスピードを上げ……速く、速く、速くなり……!?


「うおおおおおっ!?」


 なななななな何これ何これ何これ!?


 上下左右に振り回され、さらに一回転してってまた一回転!?


 うぎゃあああああああああああ!?


「ぁっ、んっ……た、タナトっ、お尻、当たっ……!」


「無理無理無理無理無理無理無理ィ!」


 うばばばばばばばばばばばはぁ!?


「ひぐっ! んっ、あんっ……! し、振動、がっ……!」


「ミケっ、大丈夫かミケ!? 安心しろっ、怖くないっ、俺怖くないからあああああああああああああ!?」


 やっぱこわいいいいいいいい!!!!


   ◆◆◆


「死ぬかとおもた……」


 俺氏、げっそりの巻。


「ぽぁ〜……」


「……ミケ、大丈夫か……? 怖かったもんな、これ……」


「……へ……? ……大丈夫、大丈夫……幸せすぎただけだから……」


 あの状況に幸福を見出すミケさん、パネェっす……。


 ジェットウォーターコースターを降り、二人の所に戻った。


「お待たせー、二人共」


「んっ、待った」


「なのだわ!」


 はぁ、疲れ──。


 ガシッ。


「……がし?」


 俺の右腕に感じる違和感。


 見ると、俺を見上げるエリオラ。


 …………………………あ。


「タナト、私の番ね♪」


「えっ、ちょっ、待っ……!?」


 せ、せめて休憩を! 休憩させてぇぇぇ!?


   ◆◆◆


「こんにちはー。……あら?」


「違います人違いです」


 スタッフが俺の顔とエリオラを見る。


 違う、違うんや。だからそんな女の敵のような目で見んといてや……。


「……チケットを拝見いたします」


「はい。これ」


「……カップルシート?」


 やめてっ、そんなゴミを見るような目で見ないで!


「カップルシート。私と、タナト」


「……それではこちらへどうぞー」


 あぁ……俺の尊厳がゴリゴリ削られていく……。


 俺が先に台に乗り込む。あぁ、この包まれてる感覚……俺の癒しだ。


「よいしょっ」


「…………あの、エリオラさん?」


「なぁに?」


 なぁに? じゃなくてですね……。


「反対じゃね?」


「問題ない。乗り方の指定はない」


 いや、そうだけど……!


 エリオラが俺の背中に手を回し、俺の太ももを締めるように脚を広げる。


 エリオラはパッと見、十五、六歳の美少女だ。身長は大きくないが、それに反するかのようにたわわな胸を持っている。


 それが、俺の体に潰されてムニュムニュ動き……。


「はーい、えっと……彼氏さん? 彼女さんを抱き締めてあげて下さーい」


「タナト、早く」


「う、うぅ……」


 ギュッ──。


「んっ……はふぅ……しゅごい……」


 くっ……耐えろ……耐えろ俺の理性と下半身……!


「はいっ、それでは空の旅、スタートです。行ってらっしゃーい」


 今度はハッキリとスタッフの声が聞こえる。


 それと同時に、あの恐怖が俺を襲った。


「あば……あばばばばばばばばばばばっ!?」


 はや、はやっ、速ァ……!


「んぁっ……! た、タナトっ、あれが、その……!」


「待って待って待って待って待って! マジやばいマジやばいマジやばい!」


 無意識に、エリオラに回している腕に力が入る。


「んんんっ……♡ ま、待って、これっ、すごっ……!」


「確かになっ!? 凄いなっ、凄いなこれ!?」


 もう無理もう無理もう無理ぃ……!


「……ぁ、イライザとミケ」


「んぇっ!?」


 ああ本当だな! でもそれどころじゃなあああああああああああ!!!!


「……イライザ、ムスッとしてる。かわい♪」


「だから俺そんな余裕ねぇよおおおおおおおおおおおおお!!!!」


   ◆◆◆


「なるほど、正面前座位も中々素晴らしい」


 なんでこの子、こんなツヤッツヤなの……?


「くっ……エリオラちゃん、やるわね……!」


「ふふん。正妻は全てに勝る」


 あの、張り合ってないで水もらえません……?


「……あっ。イーラたん、次私と乗るんでしょ? 行こ?」


「ぁ……えと……」


 ……ん? イライザ、どうしたんだ?


 イライザは俺をチラチラと見ると、すすすーっと寄ってきて……俺の服を摘んだ。


「……お、お兄ちゃんっ、一緒に乗って欲しいのだわ!」


 …………。


「はぇ?」

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