外れスキル【釣り】を極限にまで極めた結果 〜《神器》も美少女も釣れるようになったけどスローライフはやめません。〜

赤金武蔵

第8話 卑劣、外道、ミケ

 翌日、今日は観光がてら思いっきり遊ぶことにし、ミケおすすめのテーマパークへやって来た。


「水の都アクアキアと言えばここ! 最先端の技術の結晶、水のテーマパーク、アクアグランデ!」


「「「おぉ〜……!」」」


 全部……全部……全部……水!?


 建物も、ベンチも、アトラクションも……水だ……!


 色水ってやつかな。色鮮やかな水の組み合わせで、一つの施設を作ってる……。


 近くにある、木の形をした水に手を伸ばす。


「……触れる……これ、触れるぞっ」


「ぷにぷに、ふにふに、ひんやり♪」


 エリオラの言う通りだ。何だろう、この不思議な感触……!


「むぅ……やるのだわ、今の魔法も……まるでミケちゃんのおっぱい……」


「え?」


「なななな何言ってるのイーラちゃん!?」


 ……おっぱい……。


 ぷに、ふに。


「触るなあああああああ!」


「びんたっ!?」


 お、おぅふ……ばいおれんすっ……。


 景気よくぶっ飛ばされたけど、水の木のお陰で痛みは少ない……頬、めっちゃ痛いけど……。


「全く……タナトのエッチ、スケベ、変態……」


「いちちちっ。わ、悪かったって……」


 でも……ミケのビンタって、こんな痛かったんだなぁ。


 これが、人を、国を……今俺達を守ってくれてる奴の、力か……。


「へへ……ミケ」


「な、何よ……」


「……ありが──」


 ……違う。今ミケに言うセリフはこれじゃない。


 でも……。


「──とうな、いつも……」


「え。何でビンタされてお礼言ってるの? 気持ち悪い……」


「ち、違う! そうじゃなくてだな……」


 んー……言葉にしづらい。もやもやする、この感じ。何だ?


「タナトはドM? 叩く? 鞭持ってくる?」


「私はお姉ちゃんに叩かれたいのだわ!」


「びんたっ」


「あひんっ!」


 ……イライザはイライザで平常運転だな。


「? 分かんないけど、考えがまとまったらでいいわよ。あんた、小さい頃から勘だけは良かったからね。言語化出来るまで待つわ」


「……おう、悪いな」


「気にすんな。それじゃ、めいっぱい楽しむわよぉ!」


「「うにゃっ!?」」


 エリオラとイライザを担ぎあげたミケは、アトラクションに向かって走っていった。


 ……って、俺は置いてけぼりかよ!?


   ◆◆◆


「ジェットウォーターコースター……?」


 何その横文字のオールスター。


 見上げると、水の龍のようにうねっている細い管に、巨大な水玉がついて超スピードで走り回ってる。


 その中にいるのは……人? 二人が、横に並んで走ってる?


「一つの台に二人で乗って、魔法の推進力で二分間、縦にも横にも、管に沿って回転もする絶叫系アトラクション! これが一番の目玉!」


「一番の目玉に最初に乗るのか?」


「これを見なさい!」


 と、鞄から取り出したのは四枚の紙。


 ……これが何か?


「これ、ジェットウォーターコースターの優遇券なの! 通常四時間待ちなんてザラなアトラクションに、優遇して乗せてもらえる券がなんと四枚!」


「凄いのだわ! 私、お姉ちゃんと乗るのだわ!」


 抱きついてこようとしたイライザの頭を鷲掴みにし、エリオラは首を傾げる。


「ミケ。これ、どうしたの?」


「騎士団長から譲ってもらったわ!!」


 清々しいまでの越権行為!?


「さあタナト、行くわよ!」


 ミケが俺の右腕を引く、と。


「待った」


 ……エリオラ?


 反対の腕にしがみつくエリオラ。


「最初は正妻の私。ミケは二番手」


「おんやぁ? そんなこと言っていいのかしらエリオラちゃん?」


 ミケは四枚のチケットを広げ、ヒラヒラと扇ぐ。


「今、この場で、どちらが上か……分からないあなたじゃないでしょ?」


「寄越すべし……!」


「おっと動かないで。動いた瞬間に、一枚を除いて破り捨てるわ」


「ぐっ……なんて卑劣。外道。ミケ」


「私の名前を蔑称にしないでくれる!?」


 あ、あのエリオラが、ミケに対して遅れを取ってる……。


「……仕方がない。今回は譲る。次は私」


「最後でもなんでもいいから、お姉ちゃんと乗るのだわ!」


「はいはーい。じゃ、タナト。行きましょ♪」


「えっ。お、おう?」


 ミケに腕を引かれ、ジェットウォーターコースターへ向かう。


 ……あの、楽しそうなのはいいことなんですがね……?


 自分でもわかるくらい引き攣った顔で上を見る。


 楽しそうではあるが、ワーキャー叫んでいる搭乗員達。正しく絶叫系アトラクションという名に相応しいのだが……。


 ……俺、これに二回も乗るの!?

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