外れスキル【釣り】を極限にまで極めた結果 〜《神器》も美少女も釣れるようになったけどスローライフはやめません。〜

赤金武蔵

第29話 最強可愛い、最愛の妹

 そうしてるうちに、イライザの体が徐々に明確になっていき、映像の中のイライザは薄くなっていく。


 え、え、え……な、え、これ……えっ!?


 全員唖然。


「激どや」


 エリオラ得意気。


『この魔法は、エリィの作り出した一〇八の魔法の一つ。所謂、タイムトラベルじゃ。本来ならここまで明確なトラベルは無理じゃが、今回は映像水晶のおかげで遡る時間軸を明確に出来た。どうじゃ? これが魔法というものじゃ』


 …………。


 愕然、唖然、呆然、驚愕……どんな言葉を並べても足りない。


 魔法素人の俺でも、この魔法のヤバさは伝わってくる。これはヤバい。マジヤバい。


『現代人は、魔法に対しての見識が浅すぎる。確かに魔法は超常の力ではあるが、それ以前にこれは神の御業。奇跡を起こしてこそ、魔法は完成するのじゃ』


「超どや」


 ……なんか、もうめちゃくちゃだな……。


 惚けている俺達を置き去りにして、エリオラはイライザに近付いた。


「イライザ」


「お姉ちゃん……」


 まだ事態を認識してないのか、エリオラを見てイライザは目を白黒させている。


「今は、イライザのいた時代から千年後の未来。ちゃんと私は復活した。……イライザのメッセージ、見たわ」


「っ……あ、はは。な、何か恥ずかし──」


 ギュッ──。


 エリオラはイライザを抱き締める。


 力強く、しっかり。


「イライザ。さっき、言ってた。私と肩を並べたいって」


「…………っ」


「でも──イライザは、もう十分私を超えたよ」


「……ぇ……?」


 ゆっくり頭を撫で、背中をとんとんと叩く。


 姉ではなく、まるで母親のように。


「イライザは、私の出来なかったことをやってのけた。私が目指した、人間との融和を完成させた。……凄い。本当に、凄過ぎるよ」


「……ぁ……ぅ……」


 イライザの目から、涙が零れ落ちる。


 止まることなく、ボロボロと。


「あなたは、私の自慢。──今も、昔も、これからも……イライザは、私の最強可愛い、最愛の妹よ」


「……ぁぁ……ぁぁぁ……あああああっ! うわああああああぁぁ……! おね、ぢゃっ……! あ、あいっ、あいだがっだああああああああああ!」


「よしよし。よしよし」


 ……暫く、そっとしておいてやろう……。


 二人から離れて、ハレイとレヴァイナスの隣に並ぶ。


「うぅ……感動的ですぅ〜……涙が止まらんですぅ〜」


「教主殿、鼻水汚いぞ。……ところでタナト君。いいかな?」


「何だ」


「彼女は……エリオラ様は、ミケの友達だと言っていたが……」


「ああ。友達だ」


「……そうか……」


 ? 何が聞きたいんだ、こいつは。


「ひっく……えぐっ……」


「落ち着いた?」


「ん……だいじょーぶ。またおねーちゃんに会えたから」


「よかった」


 ……何だかイライザの奴、幼児退行してるように見えるんだが……。


 まあ、会いたくて会いたくてたまらなかったエリオラに会えたんだ。こうなるのも、仕方ないか。


「……私、見て回るよ。イライザが作った、この平和な世界を」


「ほんと……?」


「うん、本当」


「すごかったら、またほめてくれる?」


「ん、めためたに褒める。褒めまくる。そして色んな人に自慢する。どうだ、私の妹は凄いだろって」


「えへへ……」


 涙が止まったイライザは、子供のように微笑む。


 エリオラがたまに見せる笑顔と、本当にそっくりだ。


 エリオラはにこやかに笑うイライザの髪を上げ──額に、キスをした。


「昔やった、仲直りのおまじない」


「……テンション爆上げ……どうしよう、お姉ちゃん大好き過ぎる」


「嬉しいけど、私の全てはタナトのもの。イライザにもあげられない」


「……たなと?」


「ん。私を復活させてくれた恩人。私の旦那」


 いや旦那ではない。


 イライザが、俺を射殺すような目で睨み付けてくる。ごめんなさい許してください。


「……タナトさん!」


「は、はいぃっ!」


「……お姉ちゃんを泣かせたら──殺す」


 いや怖すぎない……?


「こら、イライザ。タナトはイライザのお兄ちゃん。ちゃんと、お兄ちゃんって呼ぶこと」


「ぅ……お兄ちゃん死ね」


 こ、こいつ……エリオラのこと好きすぎてやばい方向に向かってないか? 病みが深い気が……。


 イライザはエリオラを強く抱きしめると、俺を睨み付けて……。


「あんたなんて、お兄ちゃんって認めないんだから。べーっ」


 いや認める認めないの前に、別にエリオラと結婚してないんだが……。


 ……ま、お姉ちゃん大好きな妹ってことで、今はこれでいいか。

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