外れスキル【釣り】を極限にまで極めた結果 〜《神器》も美少女も釣れるようになったけどスローライフはやめません。〜

赤金武蔵

第2話 見た目によらず大食漢

 焼き魚を食べ終えた俺達は、釣れた魚をユニコーンのレニーに運ばせ、並んで村への帰路を歩いていた。


「はぁ……なんかどっと疲れたわ……」


「おいおい。そんなんで騎士の仕事が務まるのか?」


「主に! あんたの! せいよ!?」


 そ、そんなに詰め寄ってくるな、危ないだろ。


「天龍シリーズもだけど、炎獅子の宝玉やら麒麟のたてがみやら戦王のペンダンドやら、あれをガラクタ扱いするなんてありえないわよ! 非常識よ!」


「だ、だから全部やるって言っただろ?」


「あんなの持ち帰って、どう言い訳しろってのよ!? 下手するとあんたのことも上層部にバレて、レア装備生産機みたいな扱いにされるわよ!?」


 そ、それは困る! 俺は趣味で、のんびりと釣りを楽しみたいだけだ!


「とにかく、あれは人目のつかない場所に隠しなさいよ。この天龍シリーズは、借金して買ったってことにするから」


「わ、分かった。恩に着るよ」


「釣りを楽しむのもいいけど、もう少し常識を学びなさいよね」


 そうは言っても、ミケは身にまとった天龍シリーズ? とやらを見て、口角を上げている。どうやら相当気に入ったみたいだ。サイズも色々あったけど、丁度ミケに合うサイズがあってラッキーだったな。


「ところで、何でいきなり帰ってきたんだ? 本当にただの帰省ってわけでもないだろ」


「……あんた、ホントに気づかないの? ホントに?」


 な、何だよ。何でそんなに詰め寄ってくるんだ?


「え、えっと……?」


「……ま、あんたは昔からそうよね……はぁ」


「な、なんか……ごめん?」


 俺のせいか? これ、俺のせいなのか?


「別にいいわよ。あんたは私に変わってないって言ったけど、あんたも昔から全然変わってないわね」


「おう。レベル以外はなんも変わってねーぞ」


「そこ自慢するところじゃないから」


 それほどでも。


「なあミケ。王都のこととか、戦場のこととか、色々と聞かせてくれよ」


「ええ、いいわよ。でもその前に村に帰りましょうか。今日は村の広場で、みんな私の帰りを祝ってくれるって言うし」


「そうなのか? じゃあ魚パーティーだな」


「魚パーティー!? 食べ放題!?」


「おう、食べ放題だ」


「やったー! 早く帰るわよ! 早く早く!」


 おいおい、そんなにはしゃぐと……。


 こけっ。


「「あ」」


 ずざーっ!


 …………。


「いひゃい……」


「どんまい」


   ◆◆◆


 しばし歩いて日も傾いた頃、ようやく村の方に戻ってこれた。村の広場ではミケの帰りを祝う席が作られていて、既に数箇所で火を焚いていた。


「おーい、おっちゃーん」


「お! 戻って来たな、タナト、ミケちゃん!」


 昔から世話になってるおっちゃんを呼び、レニーに乗せていた魚を降ろした。


「全部で六二五匹いる。今日の祝いの席で使ってくれ」


「おー、流石タナトだ。全部上物だし、丸々太ってやがる。みんな! メインディッシュが来たぞ! 焼け焼けー!」


「「「「「おーーーーー!」」」」」


 そうして始まったミケの帰りを祝う祭り。いつの間にか鎧姿から私服に着替えたミケと、村のみんなが楽しそうに笑いながら、魚を頬張っている。


 それを少し離れた場所から見つつ、俺も自分の魚を焼いていると、レニーが俺の側に近寄ってきた。


「お、レニー。楽しんでるか?」


「ぶるるるる……!」


「そうかそうか、それは良かった」


 近くにあった野菜箱の中から、人参を一本レニーに与えると、嬉しそうに食べる。


 レニーは、小さい頃にミケが卵を拾ってきて、そこから生まれた幻獣と呼ばれるモンスターだ。幻獣は総じて、幾何学模様の刻まれた卵から生まれるらしい。


 産まれてからは、レニーはうちの村の大事な家族になった。特にミケのことは母親だと思ってるのか、ミケだけが唯一背中に乗ることが出来る。それは【騎乗】のスキルとなって現れ、完璧なまでにレニーを乗りこなせるようになっていた。


 あんな小さかったレニーも、今では見上げるほどの巨馬だ。他の馬に比べても、一回りも大きい。


「レニー、お疲れ様。よく今までミケを護ってくれたな」


「ぶるっ」


 ドヤ顔のレニー。可愛い奴め。


 レニーに人参を食べさせながら、俺も焼きあがった魚を頬張る。うんっ、やっぱりレインボーフィッシュは最高だな!


「ぶるっ、ぶるっ」


「え? 食べたい?」


「ぶるっ」


「ダメダメ。お前は草食だろ? 人参なら大量にあるから、こっちを食べてなさい」


『しょんなぁ……』


 …………ん?


「お前、喋った?」


「ぶ、ぶる?」


 ……ま、気のせいか。


「タナト! レニー! こっち来てみんなで食べましょうよ!」


「た、タナトっ! ミケちゃんを止めてくれ! もう一人で二〇匹近く食ってるぞ!?」


 ……ぷっ。ふふっ……はぁ、しょうがねぇな、あいつは。


「ミケ、それ以上食うと腹壊すぞ」


 見た目によらず昔から大食漢だったが、それも磨きがかかってるな。


「大丈夫! まだ腹三分目!」


 いやどんだけ食う気だこいつ!?

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