外れスキル【釣り】を極限にまで極めた結果 〜《神器》も美少女も釣れるようになったけどスローライフはやめません。〜
第3話 ヤワな鍛え方はしてないのだっ
夜。宴が終わった村は、静寂に包まれていた。みんな酒もたらふく飲んだからか、誰一人として起きてくる気配はない。
そんな中、村に動く影が一つ。
そう、俺である。
広場で倒れるように寝てるみんなを起こさないように動き、ひっそりと村を抜けて森を歩く。この辺はモンスターはいないから、深夜の森を一人で歩いても問題はない。
まあ、モンスターはいなくても夜行性の動物はいるから、そこは気を付けていかないといけないけど。
「何してんの?」
「うわっちょう!?」
び、び、び、びびったぁ……! み、ミケ?
「おま、驚かせんなよ……!」
「ごめんごめん。私、ちょっとした物音で起きるよう訓練されてるから、起きちゃって」
そこは、流石騎士様って感じか……。
「どこ行くの?」
「釣り」
「だろうと思ったわ」
だったら聞くんじゃないよ、全く。
「あんた、ちゃんと寝てるの?」
「おう。一日三時間は寝てるぞ」
「それ以外は釣り?」
「無論だ」
「釣りバカ」
「お前は俺をそんなに褒めたいのか?」
「褒めてないわよ」
なんだ、褒めてんじゃないのか。
釣り竿を持って森の中を湖に向かって歩く。その直ぐ後ろを、槍を持ったミケが付いてきている。
「ミケ、まだ寝てていいんだぞ」
「一回起きちゃったし、タナトと一緒に夜釣りもいいかなーって思って」
「見てるだけだろ」
「ついでに食べるだけね」
まだ食うかこいつ。
のんびり森を歩き、ようやく湖にやって来た。いつもの釣りポイントに座って、釣り糸を垂らす。
「餌が付いてないみたいだけど……?」
「レベルが五〇〇を超えた辺りから、餌を使わなくても釣れるようになったんだ。よっと、ほらな?」
「あんたと一緒にいると、飢え死ぬことはなさそうね、じゅるり」
マジで食うつもりか、こいつ。
「食べたきゃ、自分で火を起こせよ」
「枝集めてくるわ!」
まだ深夜だってのに、元気な奴だ。
ミケが枝を集めに行ってるのを横目に見つつ、また釣り糸を垂らす。
風で木々の擦れる音。遠くから聞こえるフクロウの鳴き声。揺れる水面。水面に映る星々や月。それ以外の情報はゼロ。このゆっくり流れる時間が、俺は好きだ。
次々に魚を釣り上げると、ミケが俺の側で火を焚き、釣り上げられた魚を木の枝に突き刺した。
「おーい、村のみんなの分もあるんだから、程々にしてくれよ」
「分かってるわよ。三〇匹くらいで我慢するわ」
いや三〇匹も食うのかよ。
魚が焼けるのを待ちながら、ミケが俺の横で寝そべって湖を見つめる。
「ねぇ、タナト。毎日釣りばっかりで飽きないの?」
「飽きねぇなぁ。毎日何かしらの発見があるし」
「釣りに発見?」
「ああ。例えば今日みたいに満月の日は、珍しい魚が釣れるんだ」
多分もうそろそろ釣れると思うんだが……ま、のんびり待ってましょ。
「ねえねえ、どんな魚なの? 美味しいの?」
「ああ。あれの刺身を食べた瞬間、死んだ父さんと母さんを見た気がしたくらいだ」
「あんたそれ半分死んでるじゃない!? ちょ、それ毒魚とかじゃないわよね!?」
「大丈夫だ。【釣り】スキルのレベルが三〇〇になった時に、触れた物の毒を無効化する効果を得たからな。毒魚の毒も、無効化出来る」
「……あんたのその【釣り】スキルって、どう考えても釣りの範疇を超えてると思うんだけど……」
「何を言う。釣った魚を美味く食うための立派なスキルじゃないか」
「…………」
おい、何でドン引きしてるんだ。
全く、失礼な奴だな。
ぴくっ、ぴくっ。
「お? この感覚、来たなっ」
「えっ!?」
あの魚をまた食えるって考えただけでテンションが上がる。それくらい、あれとの出会いは衝撃的だった。
だが俺は釣り歴十六年のベテラン。こんなことでミスをするようなヤワな鍛え方はしてないのだっ。
「まだ? まだ??」
「落ち着け、奴は鋭い。焦ったり動揺したりすると、簡単に逃げられる。俺に任せて焼き魚でも食っとけ」
「わふぁっふぁわ!」
いや切り替え早いなっ。
胡座を組み、心を落ち着かせて、釣り竿、釣り糸、釣り針……その先へと神経を集中させる。
まるで俺自身が釣り竿に、釣り糸に、釣り針になったかのような感覚。
【釣り】スキル、レベル九五〇で取得。
人竿一体。
────ぴくっ────。
「ふっ……!」
竿を一瞬で引き切る。
釣る、ではなく、引っ掛ける。
目にも止まらぬ速さで、そいつは空中に舞った。
「よし、釣れたぞ」
「……何、それ……?」
「これか? こいつは満月の夜にしか現れない……」
「そっちじゃなくて、スキルの方よ! まさか、人剣一体のスキル!?」
そーどますたー?
「違う違う。釣り竿、釣り糸、釣り針と一体になる、人竿一体だ」
「……意味が分からないわ……だって、今タナトから出てた光は、間違いなく人剣一体の光と同じ……聖騎士王様の……」
? 何をそんなに驚いてるのか分からないけど、そんなことより。
「ほれ、これが満月の夜にしか現れない幻の魚、マンゲツウオだ。水中を時速二〇〇キロで泳ぐが、優雅すぎるから水の抵抗をほぼゼロにし、水飛沫一つあげないことで有名だ」
「……これが、幻の魚……?」
「おう。……もしかして、王都だとメジャーな魚?」
ありゃ、それは参ったな。期待させただけに、怒られそうだ……。
「……ほ……」
……え? ほ?
「……捕獲ランク特SSS、不可能級の素材をそんな簡単に捕まえてんじゃないわよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?」
そんな中、村に動く影が一つ。
そう、俺である。
広場で倒れるように寝てるみんなを起こさないように動き、ひっそりと村を抜けて森を歩く。この辺はモンスターはいないから、深夜の森を一人で歩いても問題はない。
まあ、モンスターはいなくても夜行性の動物はいるから、そこは気を付けていかないといけないけど。
「何してんの?」
「うわっちょう!?」
び、び、び、びびったぁ……! み、ミケ?
「おま、驚かせんなよ……!」
「ごめんごめん。私、ちょっとした物音で起きるよう訓練されてるから、起きちゃって」
そこは、流石騎士様って感じか……。
「どこ行くの?」
「釣り」
「だろうと思ったわ」
だったら聞くんじゃないよ、全く。
「あんた、ちゃんと寝てるの?」
「おう。一日三時間は寝てるぞ」
「それ以外は釣り?」
「無論だ」
「釣りバカ」
「お前は俺をそんなに褒めたいのか?」
「褒めてないわよ」
なんだ、褒めてんじゃないのか。
釣り竿を持って森の中を湖に向かって歩く。その直ぐ後ろを、槍を持ったミケが付いてきている。
「ミケ、まだ寝てていいんだぞ」
「一回起きちゃったし、タナトと一緒に夜釣りもいいかなーって思って」
「見てるだけだろ」
「ついでに食べるだけね」
まだ食うかこいつ。
のんびり森を歩き、ようやく湖にやって来た。いつもの釣りポイントに座って、釣り糸を垂らす。
「餌が付いてないみたいだけど……?」
「レベルが五〇〇を超えた辺りから、餌を使わなくても釣れるようになったんだ。よっと、ほらな?」
「あんたと一緒にいると、飢え死ぬことはなさそうね、じゅるり」
マジで食うつもりか、こいつ。
「食べたきゃ、自分で火を起こせよ」
「枝集めてくるわ!」
まだ深夜だってのに、元気な奴だ。
ミケが枝を集めに行ってるのを横目に見つつ、また釣り糸を垂らす。
風で木々の擦れる音。遠くから聞こえるフクロウの鳴き声。揺れる水面。水面に映る星々や月。それ以外の情報はゼロ。このゆっくり流れる時間が、俺は好きだ。
次々に魚を釣り上げると、ミケが俺の側で火を焚き、釣り上げられた魚を木の枝に突き刺した。
「おーい、村のみんなの分もあるんだから、程々にしてくれよ」
「分かってるわよ。三〇匹くらいで我慢するわ」
いや三〇匹も食うのかよ。
魚が焼けるのを待ちながら、ミケが俺の横で寝そべって湖を見つめる。
「ねぇ、タナト。毎日釣りばっかりで飽きないの?」
「飽きねぇなぁ。毎日何かしらの発見があるし」
「釣りに発見?」
「ああ。例えば今日みたいに満月の日は、珍しい魚が釣れるんだ」
多分もうそろそろ釣れると思うんだが……ま、のんびり待ってましょ。
「ねえねえ、どんな魚なの? 美味しいの?」
「ああ。あれの刺身を食べた瞬間、死んだ父さんと母さんを見た気がしたくらいだ」
「あんたそれ半分死んでるじゃない!? ちょ、それ毒魚とかじゃないわよね!?」
「大丈夫だ。【釣り】スキルのレベルが三〇〇になった時に、触れた物の毒を無効化する効果を得たからな。毒魚の毒も、無効化出来る」
「……あんたのその【釣り】スキルって、どう考えても釣りの範疇を超えてると思うんだけど……」
「何を言う。釣った魚を美味く食うための立派なスキルじゃないか」
「…………」
おい、何でドン引きしてるんだ。
全く、失礼な奴だな。
ぴくっ、ぴくっ。
「お? この感覚、来たなっ」
「えっ!?」
あの魚をまた食えるって考えただけでテンションが上がる。それくらい、あれとの出会いは衝撃的だった。
だが俺は釣り歴十六年のベテラン。こんなことでミスをするようなヤワな鍛え方はしてないのだっ。
「まだ? まだ??」
「落ち着け、奴は鋭い。焦ったり動揺したりすると、簡単に逃げられる。俺に任せて焼き魚でも食っとけ」
「わふぁっふぁわ!」
いや切り替え早いなっ。
胡座を組み、心を落ち着かせて、釣り竿、釣り糸、釣り針……その先へと神経を集中させる。
まるで俺自身が釣り竿に、釣り糸に、釣り針になったかのような感覚。
【釣り】スキル、レベル九五〇で取得。
人竿一体。
────ぴくっ────。
「ふっ……!」
竿を一瞬で引き切る。
釣る、ではなく、引っ掛ける。
目にも止まらぬ速さで、そいつは空中に舞った。
「よし、釣れたぞ」
「……何、それ……?」
「これか? こいつは満月の夜にしか現れない……」
「そっちじゃなくて、スキルの方よ! まさか、人剣一体のスキル!?」
そーどますたー?
「違う違う。釣り竿、釣り糸、釣り針と一体になる、人竿一体だ」
「……意味が分からないわ……だって、今タナトから出てた光は、間違いなく人剣一体の光と同じ……聖騎士王様の……」
? 何をそんなに驚いてるのか分からないけど、そんなことより。
「ほれ、これが満月の夜にしか現れない幻の魚、マンゲツウオだ。水中を時速二〇〇キロで泳ぐが、優雅すぎるから水の抵抗をほぼゼロにし、水飛沫一つあげないことで有名だ」
「……これが、幻の魚……?」
「おう。……もしかして、王都だとメジャーな魚?」
ありゃ、それは参ったな。期待させただけに、怒られそうだ……。
「……ほ……」
……え? ほ?
「……捕獲ランク特SSS、不可能級の素材をそんな簡単に捕まえてんじゃないわよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?」
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