神器コレクター 〜ダンジョンでドロップする『種』が、神器に育つことを俺だけが知っている。今更返せと言われてももう遅い。勝手に捨てたのはそっちじゃないですか〜
第22話:そして繋がる二人
「で、何か用か?」
「うん。ギルドから通信用の魔石が配られたから、持ってきたの」
フーナが、魔石が入ってるであろう麻袋を差し出して来た。
多分、魔石を壊さないようにフーナなりの気遣いなんだろうけど……普通魔石って、人の力じゃ破壊出来ないんだけどなぁ……まあいいや。
苦笑いを浮かべつつ麻袋を受け取り、中を確認する。
紫色の水晶。大きさは手の平サイズ。極一般的な、通信用魔石だ。
「サンキューな、フーナ」
「ううん、大丈夫! 念の為に、ボクと会話してみる?」
「だな。不良品じゃないとは思うが、一応確認しておこう」
フーナと僅かに離れる。
まずは俺が魔石へ魔力を流して口元に近づけた。
「フーナ、フーナ。聞こえるか?」
と、今度は離れた位置にいるフーナが魔石を口元に近づける。
すると、俺の手元の魔石からフーナの声が聞こえてきた。
『レアルさん、レアルさん。聞こえてるよ。そっちはどう?』
「ああ、俺もバッチリだ」
これが通信用魔石のいい所だ。
魔力を流し、話しかけたい相手の名前を二度唱える。
すると、その相手へ声が届くという仕組みだ。
原理は分からん。俺頭悪いし。
「距離はどのくらいだ?」
「五十キロだって。国王様が用意してくれた、最高級品だよ」
「アーノルド様が……」
今度お礼を言いに行くか。
魔石を麻袋に入れ、ベルトから提げる。
「じゃ、ボクは行くねっ。また明日ー」
「おう、明日……って、おい待てコラ。壊した扉直してけ」
「すたこらー」
あ! ……逃げやがった。
「にゃっと。全くもう、フーナちゃんはあわてんぼうさんですね」
「全くだ」
仕方ない。俺の方で直すか。
「ブラフマーの柄杓」
収納の指輪から取り出したのは、水の入った柄杓。
それを壊れた扉に振り掛けた。
「何ですかそれ?」
「まあ見てろよ。……ほら」
砕けた扉が光り、まるで時間が逆転するかのように修復され……何事もなかったかのように、元に戻った。
「え……こ、これは……?」
「創造の神ブラフマーの神器だ。柄杓には無限に水が湧き、それを掛けると壊れたものは元に戻る。製造されたものが10年以内っていう制限はあるが」
「……さらっととんでもないもの出しますね、レアルさんは」
あれ? 俺、呆れられてる?
と、フランが扉に向けて何やら魔法を使った。
「何したんだ?」
「強化魔法です。フーナちゃんの馬鹿力の前ではどれくらい役に立つかは分かりませんが……何度も壊されると、扉さんがかわいそうなので」
扉さんって言い方可愛いな。
妙にほんわかしてると、「それに」と続けた。
「防音の魔法もしっかりしておかないと」
「……は? 防音?」
フランが、頬を染めて唇を舐める。
不意をついた淫靡で妖艶な仕草に、俺の心臓のリズムは崩された。
「ふふっ。まさかあのくらいの妨害で、私が引くなんて思ってないですよね?」
「ま、待てフラン。今の流れは、お互いに気まづくなって不貞寝する流れなのでは……?」
「言ったじゃないですか。エルフは気に入った異性の前では、性欲が高まるって……♡」
フランの手が、つつーっと俺の胸を撫でる。
他者から触れられたことで、思わず体がビクッと跳ね上がった。
それを隙と見たのか、すぐさま俺に擦り寄ってきたフラン。
俺は現在上裸。フランも殆ど裸のような格好。
さっきより肌の密着度合いが高まってる……!
「可愛いですね、レアルさん。まさか、こっちの方は初めて?」
「……そ、そんなことないぞ」
「嘘がへたですね。そんな所も、たまらなく……愛おしいです♡」
ふー、と俺の耳に息が吹きかけられると。
──ブツンッ。
今度こそ理性の糸が切れた。
◆◆◆
「…………」
「すゃ……」
ちゅんちゅん。朝チュン。
やっっっちまったッッッ……!
顔を手で覆って天井を仰ぎ見る。
これは盛大にやらかした。やらかしすぎた。
いくら男女で旅をしていて、相手から向けられた好意だからって……やってはいけないことをやってしまった……。
冒険者パーティーで、男女の関係はご法度という暗黙のルールがある。
元々付き合っていたり、結婚していれば話は別だ。
だが、何も無い男女が衝動的に一夜を共にすると、それが切っ掛けで気まずくなりパーティーが崩壊する。
そんな例を、俺は何度も見てきた。
まあ、俺とフランは冒険者パーティーと言うより、相棒って立ち位置になるんだが……。
だからといって、そういう関係になっていいという訳では無い。
賢者タイムもあるだろうが、俺は今盛大に後悔中だ。
「むにゃ……? あれ、れあるさん……?」
「んひょぅっ!? お、あ。お、おは、よっ」
い、いきなり話しかけるな、心臓が口から飛び出るだろ!
話しかけるときは、話しかけるよって話しかけてから話しかけてこい!
「おはよーございます……ふあぁ〜。んー」
「ちょっ、おっ……!?」
こいつ、俺の気も知らないでもたれかかって来やがった……!?
「んへへ……私、しあわせですぅ」
「ぅ……そうかよ」
これが、本当に幸せそうな顔をしているからタチが悪い。
くそ、マジでこいつのこと好きになりそうだ……。
「も、もういいだろ。朝飯食って、今日もギルド行くぞ」
「あぃ〜」
まだ寝惚けてるのか、呂律が回らずベッドに横になるフラン。
……ま、こいつにはあとで鰹節でもやればいいか。
「高級魚でお願いします」
「ナチュラルに人の心読むの止めろ」
「うん。ギルドから通信用の魔石が配られたから、持ってきたの」
フーナが、魔石が入ってるであろう麻袋を差し出して来た。
多分、魔石を壊さないようにフーナなりの気遣いなんだろうけど……普通魔石って、人の力じゃ破壊出来ないんだけどなぁ……まあいいや。
苦笑いを浮かべつつ麻袋を受け取り、中を確認する。
紫色の水晶。大きさは手の平サイズ。極一般的な、通信用魔石だ。
「サンキューな、フーナ」
「ううん、大丈夫! 念の為に、ボクと会話してみる?」
「だな。不良品じゃないとは思うが、一応確認しておこう」
フーナと僅かに離れる。
まずは俺が魔石へ魔力を流して口元に近づけた。
「フーナ、フーナ。聞こえるか?」
と、今度は離れた位置にいるフーナが魔石を口元に近づける。
すると、俺の手元の魔石からフーナの声が聞こえてきた。
『レアルさん、レアルさん。聞こえてるよ。そっちはどう?』
「ああ、俺もバッチリだ」
これが通信用魔石のいい所だ。
魔力を流し、話しかけたい相手の名前を二度唱える。
すると、その相手へ声が届くという仕組みだ。
原理は分からん。俺頭悪いし。
「距離はどのくらいだ?」
「五十キロだって。国王様が用意してくれた、最高級品だよ」
「アーノルド様が……」
今度お礼を言いに行くか。
魔石を麻袋に入れ、ベルトから提げる。
「じゃ、ボクは行くねっ。また明日ー」
「おう、明日……って、おい待てコラ。壊した扉直してけ」
「すたこらー」
あ! ……逃げやがった。
「にゃっと。全くもう、フーナちゃんはあわてんぼうさんですね」
「全くだ」
仕方ない。俺の方で直すか。
「ブラフマーの柄杓」
収納の指輪から取り出したのは、水の入った柄杓。
それを壊れた扉に振り掛けた。
「何ですかそれ?」
「まあ見てろよ。……ほら」
砕けた扉が光り、まるで時間が逆転するかのように修復され……何事もなかったかのように、元に戻った。
「え……こ、これは……?」
「創造の神ブラフマーの神器だ。柄杓には無限に水が湧き、それを掛けると壊れたものは元に戻る。製造されたものが10年以内っていう制限はあるが」
「……さらっととんでもないもの出しますね、レアルさんは」
あれ? 俺、呆れられてる?
と、フランが扉に向けて何やら魔法を使った。
「何したんだ?」
「強化魔法です。フーナちゃんの馬鹿力の前ではどれくらい役に立つかは分かりませんが……何度も壊されると、扉さんがかわいそうなので」
扉さんって言い方可愛いな。
妙にほんわかしてると、「それに」と続けた。
「防音の魔法もしっかりしておかないと」
「……は? 防音?」
フランが、頬を染めて唇を舐める。
不意をついた淫靡で妖艶な仕草に、俺の心臓のリズムは崩された。
「ふふっ。まさかあのくらいの妨害で、私が引くなんて思ってないですよね?」
「ま、待てフラン。今の流れは、お互いに気まづくなって不貞寝する流れなのでは……?」
「言ったじゃないですか。エルフは気に入った異性の前では、性欲が高まるって……♡」
フランの手が、つつーっと俺の胸を撫でる。
他者から触れられたことで、思わず体がビクッと跳ね上がった。
それを隙と見たのか、すぐさま俺に擦り寄ってきたフラン。
俺は現在上裸。フランも殆ど裸のような格好。
さっきより肌の密着度合いが高まってる……!
「可愛いですね、レアルさん。まさか、こっちの方は初めて?」
「……そ、そんなことないぞ」
「嘘がへたですね。そんな所も、たまらなく……愛おしいです♡」
ふー、と俺の耳に息が吹きかけられると。
──ブツンッ。
今度こそ理性の糸が切れた。
◆◆◆
「…………」
「すゃ……」
ちゅんちゅん。朝チュン。
やっっっちまったッッッ……!
顔を手で覆って天井を仰ぎ見る。
これは盛大にやらかした。やらかしすぎた。
いくら男女で旅をしていて、相手から向けられた好意だからって……やってはいけないことをやってしまった……。
冒険者パーティーで、男女の関係はご法度という暗黙のルールがある。
元々付き合っていたり、結婚していれば話は別だ。
だが、何も無い男女が衝動的に一夜を共にすると、それが切っ掛けで気まずくなりパーティーが崩壊する。
そんな例を、俺は何度も見てきた。
まあ、俺とフランは冒険者パーティーと言うより、相棒って立ち位置になるんだが……。
だからといって、そういう関係になっていいという訳では無い。
賢者タイムもあるだろうが、俺は今盛大に後悔中だ。
「むにゃ……? あれ、れあるさん……?」
「んひょぅっ!? お、あ。お、おは、よっ」
い、いきなり話しかけるな、心臓が口から飛び出るだろ!
話しかけるときは、話しかけるよって話しかけてから話しかけてこい!
「おはよーございます……ふあぁ〜。んー」
「ちょっ、おっ……!?」
こいつ、俺の気も知らないでもたれかかって来やがった……!?
「んへへ……私、しあわせですぅ」
「ぅ……そうかよ」
これが、本当に幸せそうな顔をしているからタチが悪い。
くそ、マジでこいつのこと好きになりそうだ……。
「も、もういいだろ。朝飯食って、今日もギルド行くぞ」
「あぃ〜」
まだ寝惚けてるのか、呂律が回らずベッドに横になるフラン。
……ま、こいつにはあとで鰹節でもやればいいか。
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