神器コレクター 〜ダンジョンでドロップする『種』が、神器に育つことを俺だけが知っている。今更返せと言われてももう遅い。勝手に捨てたのはそっちじゃないですか〜

赤金武蔵

第15話:そして彼は暗躍する

   ◆ソブロ◆


「ま、待ってくれよリーダー。ホント、いきなりどうしたんですかい?」
「うるせぇ! 黙って着いてこい!」


 くそっ、くそっ、くそっ!
 何で……せっかく追放したあいつが強くなってやがる……!
 しかも俺と同じSランクだと? 神器を複数持ってるだと?
 ふざけやがって……ふざけやがって……!


「ソブロさん、レアルさんを連れ戻すって、本当ですか?」


 っ……フォルン……!
 そんな……そんな期待するような顔をするんじゃねぇ!
 くそ……くそくそくそっ! 何でこいつはレアルなんかを選びやがる……!
 あいつの素の力は俺達の足元にも及ばねーだろーが……!


 だあああくそがっ! むしゃくしゃする!


「……詳しいことは話せない。ただ、どういう訳かあいつはクロムス国でSランク冒険者となっているらしい。まずはその真相を確かめに行く」
「……レアルさん……あぁ、レアルさんっ。また会えるんですね……!」


 フォルンは頬を赤く染めると、国境となっている川の向こうに熱い視線を送った。
 他のパーティーメンバーも、待ちきれないと言った風貌で川の向こうを見つめる。


 何で……何でこいつらはそんなにあいつを慕う? 自分達より弱いあいつを、何で……!
 まっっっったく! イライラするぜ!
 だが……くくくく。それもこれまでだ。
 奴は殺す。クロムス国で、完膚なきまでに殺す。
 その準備はもう出来ている。
 如何に奴が神器を使おうと、こっちにはSランクとAランクの仲間が数十人もいる。
 それに……こいつだ。
 俺の右手に光る、紫の宝石を嵌め込んだ催眠の指輪。
 闇市場で高値で取引されている、表には出ない代物だ。
 前の催眠の指輪は壊れたが……今回は大金を叩いて、五つも買い込んだ。
 これを使って、こいつらを奴を殺す殺戮マシンにする。
 くかかかかっ! 流石のこいつらの前では、神器を使おうが奴は無力だろう!


「あっ、見えてきました! クロムス国です!」


 フォルンの嬉々とする声が船に響く。
 さて……そろそろか。


「全員集合!」


 俺の号令で、【龍號】が集まる。


「これより、先日【龍號】を抜けたレアル・リシュドに会いに行く本当の理由を話す」


 全員の顔が、一気に緊張感漂うものとなった。
 よし、全員の集中が俺へと向いているな。


「その前に、こいつを見てくれ」


 右手に嵌めている催眠の指輪へ魔力を流し、全員に見えるように手の甲を向ける。
 瞬間──全員の目から生気が抜け、心ここに在らずといった感じになった。


 準備は整った。


「くくくく……くははははは! これより、レアル・リシュド討伐クエストを言い渡す! クエスト達成条件はレアルを殺し、神器を全て奪うこと! 簡単な仕事だ! 行くぞァ!」
「「「「「オウ!!!!」」」」」


 待ってろよクソ野郎……ぶち殺してやるぜェ……!


   ◆レアル◆


「スカジの宝玉」


 目の前に浮かぶアクアマリン色の宝石に魔力を込める。
 宝石が淡く光り、空を覆い隠すほどの氷の槍が姿を現す。


「フーナ」
「任せて!」


 フーナがチャクの斧に魔力を流す。
 すると、遥か上空に暗雲が立ち込め──氷の槍に向かい、雷が降り注いだ。
 氷の槍が電気を帯び、破壊力が向上する。


「よし」


 俺は右手を高々と挙げ。


「掃射!」


 振り下ろす。
 それを合図に、雷を帯びた無数の氷の槍が、眼下に広がる人食いカエルの群れに撃ち下ろされた。


「「「「「────ッッッ!?!?!?」」」」」


 氷の槍によって貫かれ、雷によって内側から破壊される人食いカエル。
 数分もすると、人食いカエルで埋め尽くされていた草原は綺麗になっていた。


「いえーい! 流石レアルさん!」
「フーナもナイスだ」


 ハイタッチを求めてきたフーナに、軽く手を合わせる。
 フーナから手を振り下ろす真似はしない。
 何故なら俺の腕が吹き飛ぶから。


 にしし、と笑うフーナの胸元には、Sランクの証であるプラチナプレートが光っていた。


 そう、あの後無事に、フーナもSランクへと昇格した。
 その際にノーツレンさんから神器の手に入れ方を教えてくれと懇願されたが、丁重に断った。
 この方法は、無闇やたらに広めるもんじゃない。世界のパワーバランスが崩れる可能性があるからな。
 偶然、たまたまやり方を見つける分にはいいが、俺から教えるつもりは無い。
 そのことを説明すると、ノーツレンさんも納得したように引き下がった。


 因みにフーナは別だ。
 クロムス国でやっていくのに、裏切らない仲間が必要だったから教えただけ。他意はない。


 嬉しそうにチャクの斧とプレートを見るフーナ。
 ほんと、年相応な女の子だ。こんな子にあんな怪力が秘められてるなんて……世の中分からないもんだな。


「……ん? フラン、さっきからキョロキョロしてどうした?」


 挙動が怪しいことこの上ない。
 と──。


「……ニャッ!」
「え……?」
「ッ!」


 フランの魔法か、不意に俺達の体が宙に浮く。
 その瞬間、俺達がいた場所から、人食いカエルが大口を開けて飛び出てきた。


「人食いカエル!?」
「撃ち漏らしか……!」


 くそっ、間に合わない……!


「フシャーーーーーッッッ!」


 フランが威嚇の鳴き声を上げる。
 すると、突如フランから黒いオーラが吹き出し、それが黒い刃となって人食いカエルを真っ二つに斬り裂いた。


「ダーク・カッター……!」
「なるほど、闇属性魔法か」


 ダークエルフは風魔法と闇魔法が得意な種族だ。
 咄嗟とは言え、よく反応してくれたな。


「ありがとう、フラン。助かった」
「フンスッ」
「ありがとね、フランちゃん。……もういないかな……?」
「ニャッ」


 どうやらいないらしい。風魔法は索敵も出来るからな。フランほどの実力者が言うんだから、間違いないだろう。喋ってないけど。


「さて、早速ギルドに戻って、クエスト完了の報告するか」
「だね〜。ボクお腹空いた!」
「ニャア」


 確かに、もう昼も過ぎてるからなぁ。


「じゃ、昼飯にするか。昼食いながら、パーティー名とか諸々決めていこうぜ」
「さんせー!」
「ニャフッ!」


 二人の賛同を得られたということで、太陽の戦車を召喚してフィレントの街へと戻っていった。

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品