神器コレクター 〜ダンジョンでドロップする『種』が、神器に育つことを俺だけが知っている。今更返せと言われてももう遅い。勝手に捨てたのはそっちじゃないですか〜

赤金武蔵

第14話:そして仲間を手に入れる

 フーナが目を覚まし、軽く腹ごしらえを終えた俺達は、直ぐにダンジョンの奥へと進んで行った。
 現在十五層。流石にここまで来ると、ミノタウロも一筋縄では行かなくなってきたな。
 モルペウスの指輪による神器複製。フーナの怪力。フランの魔法があって、ようやく先に進める始末。


「はぁっ、はぁっ……! さ、流石にキツいね……!」
「踏ん張れフーナ、一瞬でも気を抜いたら持ってかれるぞ……!」
「ニャア!」
「どんちきしょーーーー!」


 ふと見ると、フーナが複数体のミノタウロスを吹き飛ばしているのが見えた。


「どうだ見たかーーー!」


 …………。
 あぁ、嫌だ。こういう時、嫌というほど思い知らされる。




 俺は、神器という最上の武器を持っていながらその力をフルに活かせていない。そこまでの才能がない。




 こうしてフーナと比べると分かる。
 彼女の小さな体に秘められている力は本物だ。
 恐らく、望んだ神器を手に入れたらその力は爆発的に向上するだろう。
 ただ俺は、神器を複数所持しているだけの一般人だ。
 もし俺の持っている神器や知識が他の人に渡ったら……俺のアイデンティティは、一瞬崩壊する。
 俺の才能はその程度のものだ。


 そう考えると、ソブロとフォルンの才能も本物だった。
 ソブロには剣の才能がある。
 フォルンにも弓の才能がある。
 だからこそ、自力でSランクとして認められていた。


 もし俺に、剣の才能があったら。
 もし俺に、槍の才能があったら。
 もし俺に、弓の才能があったら。
 もし俺に、斧の才能があったら。
 もし俺に、鎚の才能があったら。


 俺は、追放されずに済んだのかもしれない。


 ……いや、止めよう。
 たらればの話をしても意味が無い。
 全て今更だ。
 現状、意味が無いことなら考えるな。
 今は、目の前の敵を屠るのみ!


「おおおおおおっ!」


 デュランダルでミノタウロスを斬り裂き、グングニルで巨体を穿つ。


「やるねレアルさん! ならボクも負けてらんないよ! ウルルルルルルァァァァ!!!!」
「ニャーーーーーッッッ!」


 背後ではフーナが大斧を振り回し、フランが風魔法で吹き飛ばしていた。
 そのまま十六、十七、十八、十九と進み……そして二十層目。


「ブモオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォッッッ!!!!」


 一際でかいキング・ミノタウロスと、その取り巻きであるミノタウロスが複数体。
 間違いなくここが最奥だ。


 が。


「邪魔だバカタレがァァ!」
「おらおらァ! ボク達のお通りだこらぁ!」
「フシャーーーーーッッッ!」
「ブモブベバッ!?」


 テンションが無駄に上がった俺達。
 当初の作戦である見敵必殺サーチ&デストロイにより、キング・ミノタウロスも取り巻きミノタウロスも一瞬で粉砕した。


 その瞬間、ダンジョン全体が白く光り、部屋の中央にはダンジョンの外に繋がる転移陣が現れた。


「……はぁ〜〜〜っ……! つっかれたぁ……!」
「さ、流石に強行すぎたね……」
「フニャァ〜……」


 べたぁ〜。汚くなるなんて考えず地面に座り込む。
 でも、テンションに身を任せて突き進んでよかった。下手に立ち止まると、疲労が一気に来て勝てる自信がなかったし。
 だけど、これでようやく目的を果たせたぞ。
 地面に転がるドロップアイテムを見る。
 小さい麻袋から、黄金の光が漏れ出ている。
 間違いない。例の黄金の種だ。


「これがレアルさんの言ってた黄金の種?」
「ああ。こいつに魔力を流し込むと神器になる。やってみろ」
「う、うん……」


 フーナが黄金の種に手を添えて、魔力を流し込む。


「そうそう。最初はゆっくりと、慎重に……」
「む……ぐっ……」


 フーナは繊細な魔力コントロールが苦手なのか、眉間に皺を寄せながら魔力を流している。
 そのまま待つこと数分。


 ぴょこっ。


「あ! 芽が出た!」
「あとは思い切り魔力を流す!」
「う、うん!」


 大量の魔力が黄金の芽に注がれる。
 芽が成長し、葉を付け、花が咲く。
 そして遂に、猫フランと同じくらいの大きさの黄金の実がなった。


「よし、もういいぞ。あとはこいつに触れるだけだ」
「き、緊張して来た……」
「大丈夫だ。安心しろ」
「……うん。じゃあ……行くよ」


 念の為、俺はフランを連れて少し離れる。
 それを確認したフーナは、深呼吸してから実に触れた。


 ゴオオオオオォォォォッッッ──!!!!


 っ! すげぇ……すげぇ力を感じる……!
 黄金の光が部屋を覆い、渦を巻いてフーナの手に集束する。
 そして……現れたのは、一本の大斧。
 白銀の持ち手に無数の雷のような紋様が刻まれている。
 大きさも、今フーナが持っている大斧とそっくりだ。


「……これが……神器……」
「ああ。神器チャクの斧。これに魔力を流すと水と雷を作ることが出来る、正真正銘本物の神器だ」
「……重い……けど、重さに比例した力を感じる……」
「早速、外に行って試してみるか?」
「う、うん!」


 俺達は直ぐに転移陣に入ると、ミノタウロスの社の門前へと転移してきた。


「さ、やってみろ」
「よし……」


 フーナは目を閉じ、チャクの斧に魔力を流し込む。
 すると……チャクの斧に雷が纏われ、周囲を急激に明るく照らした。
 そしてフーナの周囲に現れる、水属性の魔法陣。それが水の剣、斧、槍、棘と、様々な形に変化する。


「……凄い……ほんの少ししか魔力を流してないのに……」
「だろ? これが神器の力だ」
「……レアルさんって、とんでもない武器を沢山持ってるんだね。そりゃ強いはずだよ……」
「ま、持ってるだけで使いこなせてるかって言われたら微妙だけどな。どうだ、これさえあれば、お前も直ぐにSランクになれるぞ」
「……ボクが、Sランク……! Sランク……Sランク! やったーーーー!」


 全身で喜びを表現するフーナ。
 こういう所は、年相応な女の子って感じだな。


「そこでフーナ、提案がある」
「ん? なになに?」
「これから俺は、新しいパーティーを立ち上げようと考えてる。ソロで動くより、パーティーの方が何かと便利だからな」
「……そのパーティーにボクも入れってこと?」
「その通り」
「……まあ、レアルさんがいなかったらこんないいものを手に入れることなんて出来なかったし……うん、いいよ! おっけー!」


 っし! 予定通り、フーナを仲間に迎え入れることが出来たぞ!


「じゃ、これからよろしくな、フーナ」
「うん、よろしく!」


 俺の差し出した手をフーナが握る。


 メキョッ。


「ひょっ──!?」
「あっ、あああああああっ! ごごごご、ごめんなさいレアルさんっ! 手、握り潰しちゃったぁ!」
「ニャア……(何やってるんですか……)」

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品