神器コレクター 〜ダンジョンでドロップする『種』が、神器に育つことを俺だけが知っている。今更返せと言われてももう遅い。勝手に捨てたのはそっちじゃないですか〜

赤金武蔵

第9話:そして認められる

「グルオオオオオオオォォォォォッッッ!!!!」




 ぐっ! なんて咆哮だ……!
 ドラゴノイドは、竜の体に人の血が混じっている。
 その分体はドラゴンより小さく、力も劣るが……その小ささを生かしたスピードは、単体でドラゴンすら屠るほどだ。
 つまり、今目の前にいるこいつはドラゴンと言っていい……!


 シルバー・ドラゴノイドの口が大きく開く。
 この熱気……さっきの炎、ブレスか。
 ドラゴノイドのブレスは鉄をも溶かし、体はドラゴンのように硬い鱗で覆われている。
 だが、それも人間の作った武器という範囲内での話だ。




「デュランダル!」




 俺の傍で待機していたデュランダルを手に取り、一閃。
 見事ブレスは真っ二つに斬れた。
 ドラゴノイドのブレスは魔力を使っている。つまり魔法のようなものだ。
 それが斬れるのはデュランダルの魔法無効特性のおかげだな!




「ほう! 至近距離でドラゴノイドのブレスを斬り裂くか!」
「やるなぁ、あいつ」




 陛下とノーツレンさんが感嘆の声を上げ、モモナとフランは心配そうに俺を見る。
 そんな心配しなくても大丈夫だよ、二人とも。


 デュランダルを正面に構え、腰を深く落とす。
 これでも【龍號】で、SランクやAランクに混じって強敵と戦ってきたんだ。
 被ダメージの覚悟と、デュランダルの特性があれば……。




「俺は負けない!」
「グルッ!?」




 まさか、自分より格下の相手が一歩踏み出してくるとは思わなかったのだろう。
 シルバー・ドラゴノイドは一瞬たじろいだが、直ぐに臨戦態勢になった。
 馬鹿にされたと思っているのか、目には怒りの色が見える。
 シルバー・ドラゴノイド。別にお前を馬鹿にしてるつもりはないよ。
 お前の強さは嫌ってほど理解している。
 でもな、ここで一歩でも引いたら。






「俺はこの国にさえ、居場所が無くなるんだ──!」






 シルバー・ドラゴノイドから放たれるブレスの連弾。
 それを斬る、斬る、斬る、斬りまくる……!


「ぅっ……!?」


 クソッ、反応が追いつかない……!
 斬ったブレスの半分が俺の腕や脚を掠めて、文字通り焼けるような痛みが体を駆け抜けた。


 奴もブレスは決定打にならないと判断したのか、爪を立てて迫って来る。
 分厚い鋼鉄すら斬り裂くと言われるシルバー・ドラゴノイドの爪。


 が、それは悪手だ。




「ゴルルルルルルルアアアッッッ!!!!」




 シルバー・ドラゴノイドが腕を振り上げる。
 速さもパワーも、通常の俺では何も出来ずここで木っ端微塵だ。
 でも……今の俺には、デュランダルこいつがいる!


 振り下ろされる巨大な爪。
 狙いは俺の頭だろう。
 俺はその軌道上に、そっとデュランダルを置く。
 そう、置くだけだ。


 それだけで、シルバー・ドラゴノイドの硬質な爪は意図も簡単に切断された。




「ガルッ!?!?」




 これが絶対切断。
 “絶対”と付く通り、物質を絶対に斬ることの出来る特性。
 こいつの刃が触れるだけで、どんなに硬質な物質でも、鋼鉄を斬り裂く爪でも意味をなさない。
 さあ、これで。




「終わりだ!」




 ズパンッ──!!!!


「ガ……ラ……」


 一刀両断。
 綺麗に真っ二つにされたシルバー・ドラゴノイドは、次の瞬間には魔素へ分解された。




「……ッ、ぶはっ! ぜぇっ、はぁっ……!」




 きっっっつ!
 いくらデュランダルを持ってても、Sランクの魔物相手はマジで死ぬかと思った……!
 もしあのままブレスだけ撃たれ続けてたら、他の神器を出す暇もなく間違いなく死んでただろう。
 痺れを切らした奴が爪での攻撃をしてくれて助かった。
 今回は本当に運がよかったな。


 地面に座り込み息を整えていると、離れていた陛下達が拍手をしながら近付いてきた。




「ブラボー! ブラボー! いやー実に見事だった! まさかBランク冒険者が、Sランクを倒すとは!」
「……どもっす」




 こうも手放しで褒められるのには慣れてない。恥ずい。
 頬をぽりぽりと掻いていると、ノーツレンさんが「しかしなぁ」と口を挟む。




「シルバー・ドラゴノイドを倒す技量と、昨日の殲滅した数が比例しないのだが」
「あー……あれはここじゃ撃てないンスよ」
「なら、それを見せてくれ。見せるだけでいい」




 ……まあ、見せるだけなら。
 目を閉じ、収納の指輪に魔力を流す。
 直後、雷鳴と共に現れる黄金の光。
 そいつが空気を切り裂き、一瞬だけ俺の周囲を焼き焦がした。




「これがインドラの矢っす。ここで使うと、ギルドどころか都市が半壊するので使わないっすけど」
「……凄まじいな……これは……」
「ほっほっほ! なるほどなるほど! 確かにこれは納得するしかあるまいな!」




 ほ……よかった。満足してくれたみたいだ。




「……改めて、レアルさんを手放したリバイソン王国はアホとしか言いようがないわね」
「ニャア……」




 そっちは過ぎたことだから、余りほじくらないでくれるとありがたい。




「陛下、如何しましょう」
「うむ! これなら問題なかろう!」
「ですな」




 ん? 問題ないって、何が?
 首を傾げていると、ノーツレンさんが腰に着けた麻袋から一枚のプレートを出てきた。
 星が五つ刻まれた、白銀のプレート。チェーンが付いていて、首から下げられるようになっている。


 そしてこれは、俺には馴染みがあるようでなかった……天上の世界への切符だった。




「こ、これ、は……!?」
「ああ、プラチナプレート。Sランクの冒険者にのみ与えられる、国家級戦力の証。──レアル・リシュド。冒険者ギルドフィレント支部ギルドマスターの名において、お前を正式にSランク冒険者として認める」




 プラチナプレート。通称Sランクプレート。
 Sランクの冒険者にしか持たされることを許されないものだ。


 Zランクには別のプレートがあるらしいが、Aランク以下はこのようなプレートは発行されない。
 SランクとAランクでは、山より高く、谷より深い隔たりがある。
 つまりこれは、正真正銘強者の証。




「俺が……Sランク冒険者……!?」
「ああ。だがこれは、神器ありきのお前の力だ。お前自身の実力はB。鍛えてもA。神器を失うことだけは許されない。そう思え」
「……うっす! 俺、頑張るっす!」




 認められた……認められた、認められた!
 俺の頑張りが認められたんだ!




「レアルさん、おめでとう!」
「ニャーニャー!」
「ああ、二人ともありがとう。ありがとうっ……!」




 ああ、涙が止まらないっ。
  死ぬほど嫌いと言われ、吐き気がするほど嫌いと言われ、それが【龍號】の総意だと言われる……。
 そんな中、この国では皆が手を差し伸べてくれた。
 こんなに嬉しいことはないだろう。
 頑張ろう……俺はこの新天地で、絶対に成功してみせる!










「ほっほっほ。これはリバイソン王国の国王に感謝せねばなぁ」
「感謝って……また煽るようなことを言うんですかい?」
「煽る? 儂はいつも煽るようなことはせんぞ。純粋に感謝を述べるだけだ」
(それが煽ってるって言ってんだけどなぁ……面倒なことになりそうだ)

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