神器コレクター 〜ダンジョンでドロップする『種』が、神器に育つことを俺だけが知っている。今更返せと言われてももう遅い。勝手に捨てたのはそっちじゃないですか〜

赤金武蔵

第6話:そして殲滅する

「ブルー・ワイバーンの討伐か」
「凶暴な魔物で有名だね!」




 Bランクの依頼の中でも特に難易度の高いブルー・ワイバーンの討伐か。
 確かにこいつは、リバイソン王国でも苦労させられたな。
 神器を持った今はどこまでやれるか……。


 フィレントを出た俺達は、ランナートカゲの背に揺られてブルー・ワイバーンの出没する地域へとやって来た。


 ランナートカゲは、スピードで言えばこの世界トップクラスの魔物だ。
 俺が手網を操り、フーナが俺の前に座り、その手の中には猫フランがいる。
 もう少し人数がいたらランナートカゲの引く馬車に乗れたが、今は少人数だからこれで我慢だ。




「まあブルー・ワイバーンを相手にするのはいいが、フーナの武器で空飛ぶ相手は難しくないか?」
「あ、問題ないよ。後で見せるから」




 ……問題ない? この大きさの斧で問題ないって……?
 不思議に思って首を傾げていると、ランナートカゲのスピードが落ちて来た。


 目の前に広がる広大な渓谷。
 ここが、モモナに教えてもらったブルー・ワイバーンの巣がある渓谷か。




「あ、丁度よくノーマルのワイバーンがいるね。じゃあ見ててよ、私の戦い方を」
「おう」




 フーナが大斧を両手に持ち、身を捩る。
 捩って、捩って、捩って。
 フーナの腕に血管が浮かび上がり、筋肉が隆起する。
 そして。




「大斧・螺旋!」




 投げ付けた・・・・・


 …………。




「いやいやいやいやいや! ダメだろ自分の得物投げちゃ!」
「まあまあ、見ててよ」




 いや見なくても、あんなもん外れてどっか行くのかオチだろっ。


 フーナの馬鹿力によって、回転しながら真っ直ぐに飛ぶ大斧。
 これだけでも驚異的だが、どうなるんだ?


 大斧の回転が徐々に加速する。
 だがワイバーンも飛んでくる大斧に気付き、旋回するようにして射程から外れた。




「ほらぁ! ほら言ったぁ!」
「ニャーニャー!」
「だ、大丈夫! 大丈夫だから! ほら!」




 ほら!? ……え?
 既に遠く離れた位置に移動しているワイバーン。
 だが、真っ直ぐ飛んで行った大斧は急激に速度を上げ──直角に曲がった・・・・・・・




「……は?」
「……ニャ?」




 俺ぽかーん。
 猫フランぽにゃーん。
 何あれ、どゆこと?


 ワイバーンも異常性に気付き慌てたように旋回。
 だがギリギリ間に合わず、そのまま頭から尻尾まで真っ二つに切り裂かれた。


 更に直角に曲がり……こっちに飛んできた大斧を、フーナが片手でキャッチする。




「どや」
「……魔法か?」
「魔法じゃないよ。ボクと斧を魔力で作った念糸って糸で結んで、念じるとその通りに動くようにしただけ」




 何でもないように言ってるけど、超高等テクニック!
 や、やべぇ……想像以上にヤバい子を仲間にしちまった……。




「さ、次はレアルさんのブルー・ワイバーンだよ。頑張って!」
「お、おう……」




 念の為渓谷を見渡す。
 視認出来る範囲にはいないな。
 なら、ここはあれだ。




「オーディンの目」




 指輪から現れたモノクルを付け、魔力を流しながら目標を補足。
 ブルー・ワイバーン……距離一キロの岩陰か。
 絶対に当てるフェイルノートでもいいが……どうせなら別のやつを使おう。
 そうだな……あっ。
 



「フラン、フーナ。ちょっと離れてろ」
「うん?」
「ニャ?」




 首を傾げるが、言われた通りに離れる2人。
 それを確認し、指輪に魔力を流す。




「来い、インドラの矢」




 直後、俺の手が黄金色に輝いた。
 轟音と共に、視界を焼き尽くすほどの雷が現れる。


 魔法で再現した雷魔法エセかみなりではない。
 正真正銘、紛うことなき破壊の化身神の雷だ。


 そいつを手に、オーディンの目でブルー・ワイバーンに目標を定める。
 一キロ離れていてもこのヤバさに気付いたのか、今では更に俺達から遠のいてるな。




「逃がすと思うか?」




 目標補足ロックオン










「イントラの矢、射出!」










 刹那──数キロ離れた位置で発生する、黄金の超爆発。
 その直後に響く大気を震わせる轟音と、撒き散らされた細かい雷が渓谷を包み込む。


 待つことしばし。
 超爆発の発生した箇所に円形上に現れたクレーター。
 その周囲は雷の影響か、無惨にも焼け焦げていた。




「ふぅ……お?」




 分解された魔素が俺の体に吸収され、今倒した魔物の数が感覚で分かる。
 今の一撃でブルー・ワイバーン十五体。ワイバーン二十三体。その他諸々二十七体。今ので六十五体の魔物を仕留めたらしい。
 仕留めた数がこうして分かるから助かるな。




「……あっ、やべ。ドロップアイテム回収しなきゃっ」




 この方法、数は倒せるけどドロップアイテムの回収がめんどくせーな。使い方考えなきゃ。




「おいフラン、フーナ。ドロップアイテムの回収に行くぞー。……ん?」
「「…………」」




 二人して白目剥いてらっしゃる。
 立ったまま器用なやっちゃ。


 はぁ……とりあえず二人は放置で、ドロップアイテムだけ回収してこよ。

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