神器コレクター 〜ダンジョンでドロップする『種』が、神器に育つことを俺だけが知っている。今更返せと言われてももう遅い。勝手に捨てたのはそっちじゃないですか〜

赤金武蔵

第5話:そして依頼を受ける

 クロムス国最大の都市、フィレント。
 あっちを見てもこっちを見ても、見渡す限り冒険者だらけ。ここは冒険者のバーゲンセールか。
 取り敢えずまずは拠点となる宿……いや、永住するなら家が欲しいところだが。


 何をするにしても、まずは冒険者ギルドに行かないと。




「えっとギルドは……」
「ニャア」
「ん? 何だフラン。トイレか?」
「フシャー!」




 怒られた。違うらしい。
 謝るからテシテシ叩くのやめろ。




「フンッ」
「え、あっちか?」




 見ると、フランがある一点を前足で指していた。
 その先にあったのは……おおっ、あれはまさしく冒険者ギルドのマーク!




「でかしたフラン。褒美に鰹節をやろう」
「フシャー!」
「え、高級魚?」
「ニャア」




 鰹節も魚なんだが……ま、いいや。


 フランの見つけた冒険者ギルドに入る。
 思った通り中は盛況みたいだ。
 冒険者優遇制度なんてやってるんだ、これだけ多いのも頷ける。
 とりあえず受付で登録を済ませよう。




「すまん。この国での冒険者登録をしたいんだが」
「あ、はーいっ」




 呼ぶと、忙しそうに動き回っていたうさ耳獣人の女の子やってきた。
 髪はボサボサで目の下にクマ。ろくに寝てないんだろう。
 ピンク色のロングヘアーにピンク色の瞳。
 それに『爆』と形容していい乳。ありがたや。




「フシャー!」
「分かった、分かったからテシテシやめろ」
「フンスッ」




 くそ、俺には女性を眺める権利すら無いのか。
 あとで嫌になるほどモフってやる。




「お待たせしました。クロムス国冒険者ギルドの受付をしています、モモナ・モモーナです」
「俺はレアル。早速だが登録をしたい」
「冒険者登録ね。過去に経験はある?」
「ああ。リバイソン王国で冒険者をやっていた」
「リバイソン王国……じゃあこの水晶に触れてちょうだい」




 指示された通りに水晶へ触れる。
 すると水晶から淡い光が発せられ、それも直ぐに収まった。




「……うん、魂の情報にも冒険者とあるわね。ではこれから、クロムス国の冒険者として登録を行っていくわ。そのまま水晶に触れていてね」




 モモナが水晶の手前にある機械を操作すると、再び水晶が光る。


 胸のところがポカポカ暖かくなってきた。
 俺の魂にクロムス国冒険者の情報が加えられてるんだな。




「……あ、リバイソン王国の冒険者登録が残ってるわね。どうする? 削除する?」
「出来るのか?」
「ええ。冒険者ギルドは支部繋がりだから、他国でも抹消しようとすれば出来るわ。もう一度戻るなら消さない方がいいけど」
「なら削除してくれ」
「分かったわ」




 ……あ、今度は胸にぽっかりと穴が空いたような感じがする。
 魂の情報を消すと、こうなるのか。面白いな。




「……はい、これで登録完了よ。レアルさんはリバイソン王国でBランク冒険者だったから、この国でもBランクスタートね」
「あ、登録料は?」
「いらないわ。冒険者の移住民は、登録料も免除されるから」




 なんと、至れり尽くせりだな。




「助かる。早速依頼をくれ」
「そうね……ダンジョン依頼ならBランクが三つ。魔物の討伐なら五つあるわ」




 依頼書を見ると……ダンジョン三つは、単純な踏破依頼だ。多分最近出来たんだろう。
 魔物の討伐は、三つはCランク魔物の群れの討伐。残りの二つはBランク魔物の討伐か。




「そうだな……まずは魔物の討伐依頼を全部くれ」
「はい、全部ね。………………全部!?」
「ああ、全部」




 ザワッ──。
 俺の周囲がザワつく。
 まあ、新参者がいきなりそんなこと言ったら、ザワつきもするか。




「大丈夫だ。これでも結構死線を潜ってきたんだよ、俺」
「は、はぁ……そう? で、でも心配ね……あっ、そうだわっ。最初の一つだけ、別の冒険者を同伴させて。そこで貴方の実力を判断するから」
「え、いやそれは……」




 お守り付きで魔物の討伐……。
 Bランクになってまでそれはちょっと……。
 渋ること数瞬。すると、もにゅん。俺の手を自分の胸元に寄せて来た。
 いや柔らかっ! えっ、何これ服の下にスライムがいる!?




「ね、レアルさんっ。お願いします……私、これ以上冒険者が死んじゃう報告は受けたくないの……」
「ぐっ……うぅ……はぁ。……分かったよ」
「本当!? す、直ぐに他の冒険者を用意するから、待っててね!」




 モモナは別の冒険者を用意するべく、いそいそと受付を離れた。
 ……断りきれなかった……いい乳でした……ごちそうさまです。




「フシャー!」
「テシテシやめろ」




   ◆◆◆




「レアルさん、お待たせ! 今手の空いてる冒険者を連れて来たわよ!」
「ふぇっ!? あの、拉致られたんだけど……」
「まあまあ、どっちにしろ暇なんだからいいじゃない」




 モモナが連れて来たのは、人型フランより小柄な女の子だった。
 栗色のミドルボブに、緑色の瞳。
 タンクトップに短パンと元気少女と言った感じだが、違和感があるのは担いでいる獲物。


 ……大斧だ。


 ヘッドの大きさだけで俺よりデカく、変な装飾もないシンプルな斧。
 その巨大な斧を、小柄な少女が片手で軽々持ち上げている。




「……まさかドワーフか?」
「おおっ、よく分かったわね」
「そりゃあ、こんな人外のパワーを見せられたら……」




 小柄で力が強い種族と言ったら、ドワーフ以外いないだろう。




「レアルさん、彼女はフーナ。お察しの通りドワーフの女の子で、Bランクの冒険者よ」
「ど、どうもっ。フーナ、です……!」
「よろしく、フーナ。俺はレアルだ。今日からクロムス国の冒険者として、一緒に働かせてもらう」




 とりあえず握手でも。
 が、手を差し出すとフーナはおっかなびっくりと言った感じで指先だけで触れてきた。




「……一応清潔にはしてるつもりだが……」




 そんなあからさまだと凹む。




「ち、ちがっ……! ぼ、ボク、力強いから……」
「あ、握り潰すかもって?」




 コクリと頷くフーナ。
 確かにこんな大斧を持つ力で握られたら、俺の冒険者生命はここで終わりだ。それだけはご勘弁。




「特にフーナさんは、ドワーフの中でも変異体でして……鍛えている大人のドワーフにも真っ向勝負で勝つくらいなのよ」
「へぇっ、そいつは凄いな……!」
「あぅ……」




 フーナは恥ずかしいのか、大斧の影に隠れる。
 この冒険者という野蛮な職をやるなら、力はあった方がいい。特にこんな小柄な子だったら尚更だ。




「頼りにしてるよ、先輩」
「うぅ……! せ、先輩だなんて呼ばれても、嬉しくない……えへ」




 いやめっちゃ嬉しそうですが。
 さて、自己紹介も済んだところで。




「モモナ。早速依頼をくれ」
「ええ。フーナさんもいるし、ちょっと強力なものでも大丈夫だと思うから、直ぐに用意するわ」




 モモナが依頼を準備しに向かう。
 その間手持ち無沙汰だが……あ、そうだ。




「なあフーナ。銀の鍵ってアイテム知らないか?」
「銀の鍵? んー、聞いたことないかも……」
「そうか……いや、気にしないでくれ」




 流石に、そんな簡単に手掛かりがある訳もないか。




「ニャア……」
「悪いな、フラン」
「グルルルル……」




 フランの喉を撫でると、気持ちよさそうに喉を鳴らした。
 え、お前ちゃんとエルフだよね? 超猫っぽいけど。




「猫さん……!」
「お? フーナ、触るか?」
「ぅ……猫さんは好きだけど……私の力じゃ潰しちゃうの……」
「ニャッ!?」




 自分が潰されるのを想像したのか、フランは頭の上でガタガタと震えている。




「じゃ、撫でるだけでもいいぞ。ほら」
「う……じゃ、じゃあ……」




 モフ、モフ。さわさわ。




「ニャフ……」
「可愛い……!」
「グルルルル……」




 フランとフーナの戯れをほんわかした気持ちで見ていると、受付にいるモモナが俺達を呼んだ。




「じゃ、行くか」
「うん!」




 さて、どんな魔物が相手になるのか……楽しみだな。

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