神器コレクター 〜ダンジョンでドロップする『種』が、神器に育つことを俺だけが知っている。今更返せと言われてももう遅い。勝手に捨てたのはそっちじゃないですか〜

赤金武蔵

第2話:そして目標を見つける

「……取り敢えずその首輪外すか。鍵とか無いか?」
「あ、えっと……その人の腰に……」




 と、大狼の前足で潰された人を指さす。
 うげ、肉も骨も見えてる……。
 ……覚悟を決めろ、俺。こんな残虐死体なんて見慣れてるだろ。


 肉塊の前に跪いて、腰だったであろう場所な手を突っ込む。うへぇ、生暖かい……!




「えっと……あった!」
「や、やった!」




 ベルトに付いている金属製の輪っか。多分これが鍵束だろうな。
 ベルトをデュランダルで斬り、鍵束を回収する。


 が。




「あれ? これ……」
「ど、どうしたんですか……?」
「……悪いお知らせです」




 鍵束を手にダークエルフちゃんの方に振り返る。










「鍵、全部折れてます」
「……オゥ……」




   ◆◆◆




 地面に三角座りで蹲るダークエルフちゃん。
 こういう時、どう声を掛ければいいのやら……。




「うーん……取り敢えずその首輪斬ってみるか」
「だ、ダメですっ。奴隷の首輪は正しい方法以外で外すと、首輪を付けてる私と首輪を外したあなたが即死する仕組みがされているんです」
「何それクソ迷惑」




 誰だこんな悪趣味なもんを作ったのは、訴えるぞ。
 だが、そうなると首輪を外す方法は……。




「……ん? 今、首輪を外すには正しい方法じゃないといけないって言ったか?」
「は、はい」
「てことは、鍵以外にも開ける方法はある?」




 鍵で開けるのが正しい開け方なら、鍵で開けるしかないと言えばいい。
 でもそう言わなかったってことは、鍵以外にも開ける方法はあるということだ。


 そう考えてダークエルフちゃんに聞くと、目を見開いて驚いていた。




「……凄い。これだけの情報でそう考えられるなんて……」
「冒険者なんて、状況把握能力と思考力がないと生き残れないからな。……その言い方だと、当たりか?」
「は、はい。私が聞いたことがあるのは、この首輪の製造元に行って外させる方法。しかし製造元は、百年前の奴隷商一斉検挙で全て解体されています」




 うげ、これ百年も前に作られたものなのか……それにしては錆もないし、光沢のある見た目だな。




「そしてもう一つは、銀の鍵と呼ばれる鍵を使う方法です」
「銀の鍵?」




 聞いたことないな……よし。




「アカシックレコード。銀の鍵を調べてくれ」




 俺の目の前に浮かび上がったアカシックレコードが、一つのページを開く。




「銀の鍵……所在不明。形状不明。取得条件不明。世界中のどんな鍵でも開けることが出来、呪文を唱えると時空を超えてあらゆる場所へ行くことが出来る。神器とは違うため、黄金の種で手に入れることも出来ない」




 ……アカシックレコードでも分からないことだらけだ。こんなこと初めてだな。
 でも……何だろう。物凄くワクワクする。
 初めて買った専用装備を見た時と同じくらい、ワクワクする。
 こんな非現実的な力を持つ鍵が、この世のどこかに存在する……。






 見てみたい。確かめたい。出来ることなら手に入れたいっ。






「ダークエルフちゃん、これがあればそれも開けられるんだな?」
「は、はい。多分……」
「なら、俺が一緒に探してやるよ」
「いいんですか!?」
「おう、乗り掛かった船だ。ここで君を放置するのも目覚めが悪いしな」
「あ、ありがとうございますっ。ありがとうございますっ!」




 ダークエルフちゃんがぺこぺこ頭を下げる。
 ……俺が言うのもなんだけど、ちょっと人を信用しすぎじゃない? 君、それで捕まったんじゃないだろうね?
 ……何だか心配になってきたよ、マジで。




「えっと……取り敢えず自己紹介しようか。俺はレアル・リシュド。冒険者だ」
「私はフラン・ローレンです。見ての通りのダークエルフです。よろしくお願いします、レアルさん」
「よろしく、フラン」




 フランと握手をする。柔らかく、細く、綺麗な手だ。




 ……それにしても見れば見るほど可愛い。
 エルフには美人が多いと聞くが、この子は美人というより美少女と言った感じだ。
 美少女フェイスに男を悩ませるエロ可愛い体……なるほど、確かに捕まるのも納得が行く。




「レアルさん、この後はどうしますか?」
「そうだな……取り敢えず王国を出て他国に行く。服はそこで調達しよう。いつまでもそんな服じゃ可哀想だしな」
「あ、お気になさらず。これはエルフの正装ですので」
「……そっすか」




 エルフの正装、エロ過ぎん? エロフなの?




「じゃ、直ぐにでも出発するか」
「はい。ですがもう暗いですよ? 朝を待ってからの方が……」
「安心しろ。いいものがある」




 えっとあれは確か……。




「来い、太陽の戦車」




 指輪から放たれる黄金色の光。
 その光が集まり、圧縮し、編まれていくと……黄金のオーラを放つ馬車に、それを引く白馬が四頭現れた。


「……え……こ、これは……?」
「太陽の戦車だ。こいつに乗れば自由に空を飛ぶことが出来る。ソロモン王の絨毯は一人用だからな。そら、行くぞ」
「えっ。は、はいっ」




 まず俺が乗り込み、その後フランの手を取って馬車に越せる。
 手網を握ると、俺の頭の上に太陽の紋様が浮かび上がった。
 準備は万端、レッツラゴー!




「ハイヨー、シルバー!」
「キャッ……!」




 四頭の馬が足を一歩踏み出す。
 地面ではなく空中を踏み締めるようにして進み……徐々に、空へと浮かび上がっていった。




「あわっ、あわわわわっ……!?」
「怖かったらしがみついてていいぞ」
「は、はいぃ……!」




 ギュッ、もにゅん。
 特盛!!!!
 おおおお落ち着け俺。クール、クールだぞ。


 手綱を鞭ように振るうと、四頭の白馬は少しずつスピードを上げていく。
 頬に当たる風が心地いいぜ! ひゃっほう!




「わ、わあぁ……! 凄い凄い! 馬車が空を飛んでます!」
「だろ? さあ、キビキビ行くぞ!」
「おー!」

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