異世界転生だけでお腹いっぱいなのにTSの上悪役令嬢ってなんなんですか!?
我が娘について4
「待てジェラルド、話を最後まで聞け」
ええい止めてくれるな、如何に古くからの友人である国王陛下のお言葉であったとしても、我が娘を害した者を放っておけるものか。
「安心せよ、その者ではアトリシアを害することはかなわなかった」
なに?
確かに文武に優れ、眉目も秀麗で、礼節を弁えた完全なる貴族といっても過言ではない我が娘ではあるが、相手は近衛である。
近衛といえば国内から選りすぐったエリート集団だ。
特に情報部はその性質上、対人戦に特化した戦闘力を持っている。
その彼女を相手取って無傷であったというのか。
「報告を続けさせていただきます。そして戦闘となったのですが、攻めきれずに状況が膠着した時に彼女が持つ剣にグーテンベルク家の家紋を見つけましたので戦闘を中断しました」
アトリが持つ家紋入りの剣となれば、我が家の宝剣の1つであろう。
彼女が剣術に興味を持っていたようだったので、学院入学にかこつけて……入学祝いとして与えたものだ。
古代文明の遺産として発見されたもので、斬撃と耐久性強化の魔法がかかっており、単純に魔力との親和性が高いため武器としての汎用性が非常に高い一品だ。
だが、それを用いたとしても情報部員を相手にするには厳しいと考えるのが順当である。
「そして、戦闘後に私の所属と魔物被害の調査で来たことを告げると、先ほどのアルス領主の独断だという仮説を提示してきました」
なるほど、流石はアトリだかしこい。
「さらに、彼女は金鹿騎士団に交ざり防衛線の哨戒任務に就いていたところ、オーガの変異種と遭遇し、これを撃破しています。しかも、指導兼引率を担当していた者が戦闘不能にされた後に単独でこれを行っております。また未確認ではありますが、中級以上の回復魔法を使用したとの情報もあります」
なるほど、さすがはアトリだすごい。
「そういうわけでお主を呼んだのだ。ジェラルドよ、あの娘は何者だ?」
「我が自慢の愛娘です」
「そういうことを聞いているのではないことはわかるであろう」
「わかった上で申し上げておるのです、陛下」
「……そうか」
そう、たとえ彼女が『客人』だったとしても、私は彼女を自らの娘として扱う。
もし仮にどこかの組織なりが彼女にアプローチするのであれば、そうした私の──グーテンベルク家の当主であり、同時に王国宰相の任を賜っているジェラルドの考えを理解した上で行うことだ。
「お話しというのはそれだけですかな」
「ああ」
「では私めは娘の出迎えがありますので、これにて失礼させていただきます」
「わかった。忙しいところすまぬな」
「いえ、不遜ながら陛下と私は竹馬の友であると思っております。何も遠慮することはございません」
「そうか、それを聞けてよかった。余も同じ考えだ」
「恐悦至極。では私はこれにて」
アトリが立派な戦果を上げて帰ってくるのだ、一家総出で盛大に祝わなければなるまい。
苦笑する妻と呆れる執事の顔が浮かんだがそれはともかく。
ええい止めてくれるな、如何に古くからの友人である国王陛下のお言葉であったとしても、我が娘を害した者を放っておけるものか。
「安心せよ、その者ではアトリシアを害することはかなわなかった」
なに?
確かに文武に優れ、眉目も秀麗で、礼節を弁えた完全なる貴族といっても過言ではない我が娘ではあるが、相手は近衛である。
近衛といえば国内から選りすぐったエリート集団だ。
特に情報部はその性質上、対人戦に特化した戦闘力を持っている。
その彼女を相手取って無傷であったというのか。
「報告を続けさせていただきます。そして戦闘となったのですが、攻めきれずに状況が膠着した時に彼女が持つ剣にグーテンベルク家の家紋を見つけましたので戦闘を中断しました」
アトリが持つ家紋入りの剣となれば、我が家の宝剣の1つであろう。
彼女が剣術に興味を持っていたようだったので、学院入学にかこつけて……入学祝いとして与えたものだ。
古代文明の遺産として発見されたもので、斬撃と耐久性強化の魔法がかかっており、単純に魔力との親和性が高いため武器としての汎用性が非常に高い一品だ。
だが、それを用いたとしても情報部員を相手にするには厳しいと考えるのが順当である。
「そして、戦闘後に私の所属と魔物被害の調査で来たことを告げると、先ほどのアルス領主の独断だという仮説を提示してきました」
なるほど、流石はアトリだかしこい。
「さらに、彼女は金鹿騎士団に交ざり防衛線の哨戒任務に就いていたところ、オーガの変異種と遭遇し、これを撃破しています。しかも、指導兼引率を担当していた者が戦闘不能にされた後に単独でこれを行っております。また未確認ではありますが、中級以上の回復魔法を使用したとの情報もあります」
なるほど、さすがはアトリだすごい。
「そういうわけでお主を呼んだのだ。ジェラルドよ、あの娘は何者だ?」
「我が自慢の愛娘です」
「そういうことを聞いているのではないことはわかるであろう」
「わかった上で申し上げておるのです、陛下」
「……そうか」
そう、たとえ彼女が『客人』だったとしても、私は彼女を自らの娘として扱う。
もし仮にどこかの組織なりが彼女にアプローチするのであれば、そうした私の──グーテンベルク家の当主であり、同時に王国宰相の任を賜っているジェラルドの考えを理解した上で行うことだ。
「お話しというのはそれだけですかな」
「ああ」
「では私めは娘の出迎えがありますので、これにて失礼させていただきます」
「わかった。忙しいところすまぬな」
「いえ、不遜ながら陛下と私は竹馬の友であると思っております。何も遠慮することはございません」
「そうか、それを聞けてよかった。余も同じ考えだ」
「恐悦至極。では私はこれにて」
アトリが立派な戦果を上げて帰ってくるのだ、一家総出で盛大に祝わなければなるまい。
苦笑する妻と呆れる執事の顔が浮かんだがそれはともかく。
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