異世界転生だけでお腹いっぱいなのにTSの上悪役令嬢ってなんなんですか!?
9 軍人と職人の朝は早い、というかこの世界は基本的に早起き
早朝か深夜か判断に迷う時間に起き、支度を始める。
顔を洗って服を着替えて、最後に荷物を再点検してバックパックに詰める。
すべて問題なく終え、屋敷の玄関に集まる。
「ああ……眠い……」
「おいおい、大丈夫かよ?」
「仕方ないでしょ、普段は美容のためにしっかり睡眠とってるから……」
眠そうに目をこすっているのはディアナ。
普段は快活でしっかりしているイメージなだけに少し珍しい。
一方、カールは慣れているのかいつもどおりの調子である。
バルトロは本を読んで余裕そうだが、やや覇気がない。
エリゼは相変わらずにこにことその様子を眺めている。
エミリーは……もしかしてこの子、立ったまま寝ているのか?
目がほとんど開いていないし、ふらふらしている。
眼前で手を振り、声をかける。
「エミリー、起きてるかい?」
「ひゃい……おきてます……」
だめそう。
まあ移動の馬車で眠れるだろうから、そこまで心配はないか。
馬車は前世の自動車に比べれば相当に揺れが激しいが、人間は眠ければどこでも寝られるものだ。
ボクも前世では、必死にバイトして貯めたお金でライブに行ったのに、ライブ会場で寝てしまってほとんど聴けなかった経験がある。
バイトしないとライブに行けなかったけど、バイトしてなければそこまで疲弊して寝ることもなかった。
閑話休題。
馬車に揺られることしばし。
国境沿いに広がる森林地帯、その一部を切り拓いて建てられた騎士団の廠舎に到着した。
廠舎とは騎士団が演習先で宿泊するための簡易的な屋舎である。
周囲の木を伐り、水源も近くに小川が流れている。
木造で古い建物ではあるがよく手入れされており、快適に過ごせそうだ。
廠舎ではどうやら下士官クラスまでは大部屋で雑魚寝のようで、ボクらの内、男性陣はそちらで他の騎士団員たちと一緒に生活する。
今はもう作戦行動に入っているようで、荷物のみがしっかりまとめて置かれている。
ボクたち女性陣に割り当てられたのは中級幹部用の個室で、そこをシェアして使うようにとのことであった。
ちなみに騎士団に他の女性隊員がいないかといえばそんなことはない。
前世での軍隊の男女比は知らないが、こちらの世界では魔法の存在もあってそこまで男女で肉体能力の差が大きくないから、おそらく比率はこちらの方が平たいだろう。
それでもこうして個室を与えられているのは、ボクの実家への配慮だろうか。
騎士団長が個人的にどう接しようと問題とはなりづらいだろうが、流石に上級貴族の未婚の子女を男女関係なく雑魚寝はさせられないのだろう。
そして各々の荷解きが終わった頃、騎士団長からお呼びがかかった。
現場の最上級指揮官が使用する部屋の前に立ち、ドアをノックする。
「アトリシア・グーテンベルク他5名、入ります」
「入れ」
許可を得て入室すると、そこにはカスパル殿とその副官と思しき男性。
それに襟の階級章から見るに下士官の男女が1名ずつ。
学院で学んだ騎士団式の挨拶をして、カスパル殿に正対する。
「ご苦労。作戦準備はできたか?」
「ご高配を賜り、無事完了しております」
わざわざ1日空けてもらったからね。
「よろしい。では早速だが諸君らの本作戦での任務を説明する」
そう言うと、彼の後ろに立っていた副官殿が前に出て資料を片手に話しだす。
「任務の説明に入る前に、カイ曹長、クラーラ軍曹」
「「はっ!」」
「彼らは今回諸君らが所属することになる特別分隊の指揮官となる」
「特別分隊ですか?」
「そうだ。団長のご意向で作戦行動に参加させることにはなったが、通常部隊への編入は難しいと判断したため、彼らの元で部隊行動を学んでもらう」
副官殿がそこまで言ったところでカイ曹長が一歩前に出る。
「俺は君たちが貴族様の坊っちゃん嬢ちゃんたちだろうが容赦はしない。うちの新兵だと思ってしごかせてもらうから、そのつもりでいろ」
なるほど。
てっきり魔物退治の戦力として参加するのかと思っていたが、半分は演習としてボクたちにお勉強させてくれるということか。
しかも明らかに前線で活躍しそうなベテランをつけてもらえるとは。
カイ曹長は刈り込んだ短髪の、いかにも叩き上げといった風情の男性。
歳は40手前くらいに見えるが、鍛えられた肉体は衰えを感じさせない。
クラーラ軍曹は階級の割に若い女性で、髪を纏めて後ろで団子にしている。
筋骨隆々というわけでもないので、おそらくは頭がキレる副官タイプとして出世してきているのだろう。
そんな2人とこちらの6人がそれぞれ自己紹介をし、改めて任務の説明を聞く。
どうやら、ボクたちの主たる任務は哨戒と迎撃らしい。
哨戒っていうのは、見張りとか警戒とかそういうやつね。
この廠舎からしばらくいったところに櫓があって、そこが最終防衛ラインになるらしい。
普段は他国からの攻撃に対する防衛のために機能するこのラインが、今回は魔物を抜けさせないラインになるらしい。
ここを最後部として、正規の部隊が前に出て魔物を狩っているようだ。
そして前線を抜けて国内に入ろうとする魔物を見つけ、迎撃するのがボクらの任務になる。
なるほど、よく考えられた訓練だ。
顔を洗って服を着替えて、最後に荷物を再点検してバックパックに詰める。
すべて問題なく終え、屋敷の玄関に集まる。
「ああ……眠い……」
「おいおい、大丈夫かよ?」
「仕方ないでしょ、普段は美容のためにしっかり睡眠とってるから……」
眠そうに目をこすっているのはディアナ。
普段は快活でしっかりしているイメージなだけに少し珍しい。
一方、カールは慣れているのかいつもどおりの調子である。
バルトロは本を読んで余裕そうだが、やや覇気がない。
エリゼは相変わらずにこにことその様子を眺めている。
エミリーは……もしかしてこの子、立ったまま寝ているのか?
目がほとんど開いていないし、ふらふらしている。
眼前で手を振り、声をかける。
「エミリー、起きてるかい?」
「ひゃい……おきてます……」
だめそう。
まあ移動の馬車で眠れるだろうから、そこまで心配はないか。
馬車は前世の自動車に比べれば相当に揺れが激しいが、人間は眠ければどこでも寝られるものだ。
ボクも前世では、必死にバイトして貯めたお金でライブに行ったのに、ライブ会場で寝てしまってほとんど聴けなかった経験がある。
バイトしないとライブに行けなかったけど、バイトしてなければそこまで疲弊して寝ることもなかった。
閑話休題。
馬車に揺られることしばし。
国境沿いに広がる森林地帯、その一部を切り拓いて建てられた騎士団の廠舎に到着した。
廠舎とは騎士団が演習先で宿泊するための簡易的な屋舎である。
周囲の木を伐り、水源も近くに小川が流れている。
木造で古い建物ではあるがよく手入れされており、快適に過ごせそうだ。
廠舎ではどうやら下士官クラスまでは大部屋で雑魚寝のようで、ボクらの内、男性陣はそちらで他の騎士団員たちと一緒に生活する。
今はもう作戦行動に入っているようで、荷物のみがしっかりまとめて置かれている。
ボクたち女性陣に割り当てられたのは中級幹部用の個室で、そこをシェアして使うようにとのことであった。
ちなみに騎士団に他の女性隊員がいないかといえばそんなことはない。
前世での軍隊の男女比は知らないが、こちらの世界では魔法の存在もあってそこまで男女で肉体能力の差が大きくないから、おそらく比率はこちらの方が平たいだろう。
それでもこうして個室を与えられているのは、ボクの実家への配慮だろうか。
騎士団長が個人的にどう接しようと問題とはなりづらいだろうが、流石に上級貴族の未婚の子女を男女関係なく雑魚寝はさせられないのだろう。
そして各々の荷解きが終わった頃、騎士団長からお呼びがかかった。
現場の最上級指揮官が使用する部屋の前に立ち、ドアをノックする。
「アトリシア・グーテンベルク他5名、入ります」
「入れ」
許可を得て入室すると、そこにはカスパル殿とその副官と思しき男性。
それに襟の階級章から見るに下士官の男女が1名ずつ。
学院で学んだ騎士団式の挨拶をして、カスパル殿に正対する。
「ご苦労。作戦準備はできたか?」
「ご高配を賜り、無事完了しております」
わざわざ1日空けてもらったからね。
「よろしい。では早速だが諸君らの本作戦での任務を説明する」
そう言うと、彼の後ろに立っていた副官殿が前に出て資料を片手に話しだす。
「任務の説明に入る前に、カイ曹長、クラーラ軍曹」
「「はっ!」」
「彼らは今回諸君らが所属することになる特別分隊の指揮官となる」
「特別分隊ですか?」
「そうだ。団長のご意向で作戦行動に参加させることにはなったが、通常部隊への編入は難しいと判断したため、彼らの元で部隊行動を学んでもらう」
副官殿がそこまで言ったところでカイ曹長が一歩前に出る。
「俺は君たちが貴族様の坊っちゃん嬢ちゃんたちだろうが容赦はしない。うちの新兵だと思ってしごかせてもらうから、そのつもりでいろ」
なるほど。
てっきり魔物退治の戦力として参加するのかと思っていたが、半分は演習としてボクたちにお勉強させてくれるということか。
しかも明らかに前線で活躍しそうなベテランをつけてもらえるとは。
カイ曹長は刈り込んだ短髪の、いかにも叩き上げといった風情の男性。
歳は40手前くらいに見えるが、鍛えられた肉体は衰えを感じさせない。
クラーラ軍曹は階級の割に若い女性で、髪を纏めて後ろで団子にしている。
筋骨隆々というわけでもないので、おそらくは頭がキレる副官タイプとして出世してきているのだろう。
そんな2人とこちらの6人がそれぞれ自己紹介をし、改めて任務の説明を聞く。
どうやら、ボクたちの主たる任務は哨戒と迎撃らしい。
哨戒っていうのは、見張りとか警戒とかそういうやつね。
この廠舎からしばらくいったところに櫓があって、そこが最終防衛ラインになるらしい。
普段は他国からの攻撃に対する防衛のために機能するこのラインが、今回は魔物を抜けさせないラインになるらしい。
ここを最後部として、正規の部隊が前に出て魔物を狩っているようだ。
そして前線を抜けて国内に入ろうとする魔物を見つけ、迎撃するのがボクらの任務になる。
なるほど、よく考えられた訓練だ。
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