預言者エルマの七転八倒人生 破滅フラグは足音を立ててやってくる!

野良ぱんだ

6

ダガンは徐々に住居地区へ向かう、その間に住民達を逃し、攻撃部隊が攻撃を仕掛けながらも下がる戦法で仕掛けていく。

やはり完全な形での復活を一度しているダガンは硬く、物理攻撃よりも術式での攻撃が有用であるためかなかなか攻撃してもダメージが与えられないらしく困難を極めていた。

そもそも術は隣国ウルム発展されており、エアヴァルド国内では術士の数が少ない、ましてロストックはウルムとは反対の地域であり隣接している土地は国を為さない諸部族が闊歩する土地であり、度々不作などがあった際に掠奪のためやってくる様な連中である。術士よりも騎士や兵士といった人々が重用されるのも仕方がない。

バリスタ(攻城兵器)を砦からダガンが向かうであろう居住地区に配置する。

その中にはギュンターもいた、リュシフェルの攻撃により怪我をしていたが、それでも参加を希望したのだ、ロストックを守る為に。

「ディビド殿!各位置にバリスタを配置完了したぞ」

ギュンターは足を負傷したディビドに声をかける。

「では鏃一つ一つに高位術式を付与しダガンに当たったら即解放されるようにします、間違っても味方に、特にエルマ様に当てたりなどしないでくださいね!」

ディビドは設置されたバリスタ用の鏃に雷属性の術式を付与すると鏃は紫色の雷を纏う。

「なんか面白いな...」

弓戦士の1人が鏃の近くでじろじろ見る。

「術耐性をある程度持ってない人は触ったらいけませんよ、感電しますから」

「おお、怖っ!」

ディビドの忠告にその弓戦士はのけぞる。

ディビドはメインで使用する5台分を終わらせてから術酒を飲む、攻撃後鏃を設置後に術式を付与するためだ。

「そろそろダガンが見えてきました、射程範囲内に入ったら攻撃を」

そう言って用意してもらった椅子に座る、いくら術酒を飲んだとはいえ術回数が枯渇するほど精神が摩耗してしまう、これがアークメイジや賢者クラスであれば回数も増えるし精神の摩耗も少なくて済むがディビドは術士の才能はあっても実際は隠密クラスで前衛タイプである、実際かなり無茶をしているのは自覚している、きっと後で副作用が出るだろう。昏睡くらいで済めばいいが...

「ディビド殿、顔色が悪いが大丈夫か?」

ギュンターは心配し声をかける。

「大丈夫ですよ...前線に出ているエルマ様に比べれば...」

そう言ってディビドは左太腿をさする、ズボンは剣で刺した為の穴が開いて自身の血で汚れたままだ、リュシフェルの攻撃で自分の剣で貫通したため骨部分も切断されており、見た目の傷は消えても内部はまだ完全に回復できていないため、せいぜい足を引きずって歩ける程度で前線に立つのは現在は出来ない...場合によってはこの先だってどうなるか...

姿を見ただけで頭に血が上り、考え無しにリュシフェルに攻撃を仕掛けた自身の失態に唇を噛む。

こんな大事な時に側に居られない...生きるにしても死ぬにしても...共に居たいと願っていたのに。

ーーー

ダガンが居住地区に入る寸前まで近づいてきた。

「これからバリスタ部隊の射程内に入るぞ、出来るだけそいつらの邪魔になる位置に入るな!」

テオドールは大声で指示を出す。

ディビドをバリスタ部隊に馬で移動させた後、再度前線に戻りダガンの足止めを行っている。

神罰の雷を落とす事も考えたが周辺への被害を考えるとコントロールの効く蝗の災厄で対抗するしかない、接近しすぎるとダガンの鎖に絡まれ口に入れられるためどうしても距離は取らなきゃならないので裁きの鉄槌が使えない、せめて動きが止まれば正面に回って裁きの鉄槌を喰らわせるのに...

基本攻撃部隊が戻ってきたらすぐにヒールで回復させ再度攻撃に向かってもらうやり方しか今の所出来なかった。

攻撃部隊内でも聖属性付与の大剣を装備(対アンデッド仕様)しているマックス氏と雷属性を纏わせたハルバードを装備しているテオドールはダガンにダメージを与える事ができたので現状彼ら2人が攻撃の要だ。

「一旦下がれ!」

そうテオドールが指示を出し、攻撃部隊は一度下がる、すると稲妻が走る音が響く。

バリスタ部隊の攻撃が始まった!

稲妻を纏った大きな矢がダガンの頭部に次々命中すると、高位術式ブリッツシュラークが刺さった内部で発動する、大きな雷鳴が響き渡る。

バリスタの攻撃力にブリッツシュラークを掛け合わた攻撃だ、威力はかなり大きいはずである。

『グォォォォォ!』

ダガンは苦しみ暴れ出す、かなりのダメージを負ったのかのたうち回る。

「5回バリスタの攻撃が終わった!次の攻撃までまた時間がかかる!今のうちに前線部隊は攻撃を開始しろ!」

動きが悪くなったダガンに一斉に攻撃を行うもやはりバリスタでの攻撃ほどダメージを受けてはいないようだ。

ならば、と思いダガンの目の前まで走り正面で立ち止まる。

「エルマ様!無理はしないでください!」

マックス氏が心配して追いかけてくる。

『裁きの時は来た!悪しき者の頭を砕く裁きの鉄槌を!』

やはり前回のように変化があり光り輝く聖サンソンの幻影がはっきりわかるように現れる!

『サンソン!サンソンがぁぁ!』

ダガンはその姿を見て慄く、サンソンの幻影は拳を作りダガンの顔目掛けて殴り倒す。

ダガンのその顔はぐしゃりとひしゃげ、黒い霧を撒き散らす。

「なんと...聖サンソンが...」

テオドールや他の騎士達が呆気に取られる。

怯んだダガンに向かって更にバリスタ部隊からの攻撃が始まり再度雷鳴が轟いた!

ダガンは徐々に身体を維持出来なくなり始め、腕や足にあった鎖がぼろぼろと崩れ鱗も剥がれだす。

『カラダガ...イジデキナイ....ニエヲ...ニエヲヨコセェェェ!』

ダガンは目の前にいる私に目掛け鎖を巻き付ける。

「エルマ様ぁぁ!!」

マックス氏の悲痛な声が響く。



遠くにいるディビドも椅子から立ち上がるが倒れ込むも四つん這いになってエルマの元へ向かおうとする。

「ディビド殿!だめだ!」

「離してくれ!エルマ様が!」

ギュンターがディビドを止める。ディビドは今にも泣きそうな顔だ。

「もう悪魔に大切な人を奪われるなんて耐えられないんだ!」

「この距離で走った所で間に合わない!」

「離せっ!エルマ様あぁぁぁ!」

ディビドが叫び力尽くでギュンターを振り解こうとするが、数人の弓兵士に抑えられる。

いつもの飄々としていながらも何処か狂気を感じるこの男がここまで乱れる程に感情をぶつけるなんてとギュンターは思った。


ーーー
※ゲーム豆知識
生贄
悪魔は復活しただけでは本来の力を発揮できないため生贄が必要になる。

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