預言者エルマの七転八倒人生 破滅フラグは足音を立ててやってくる!
2
「修道士達が1人いなくなったんです...」
ギュンターは保護した修道士達からその話を耳にする。
「昨日の騒ぎの件で遠くに逃げてと聞いてたので逃げた後に戻ってきた中で修道士ロータルだけ戻ってこなかったんです...彼は敬虔な信者なので不正などありえない筈なのに...」
1人の修道士が不安そうに語る。
「そうか...わかった、彼の捜索も一緒にするよ」
ギュンターは修道士に約束する。
「...このタイミングで修道士が失踪なんて...」
ギュンターはそう呟き修道士を保護している部屋を後にするとばったりエルマと出会う、ギュンターは嬉しくなったが両側にいる護衛のマックスとディビドが何だか疲れ切っているようだ...気になる。
「あ!エルマ様おはようございます!」
「ギュンターさんおはようございます!」
「どうされたんですか?」
「今から司祭ヨアヒムにお話を聞こうと思いまして、前に言っていた1、2年前の孤児院から出た子達のリスト紛失の件ですね」
「ああ、なるほど...俺も一緒に聞かせてもらってもいいですか?」
ヨアヒムからの話もちゃんと聞いておきたいと思ったのでお願いする。
「あ!良いですよ!」
そう言って4人でヨアヒムが養生している部屋へと向かう。
ヨアヒムは数度の虐待と薬物使用のため治療を行う必要があるから別の部屋にいてもらっている。
「司祭ヨアヒム、入って良いですか?」
ノックすると扉が開く、出てきたのは赤毛の修道士リタである。きっと彼女がヨアヒムの面倒をみているのだろう。
「どなたですか...あ...預言者様!」
「おはようございます、修道士リタ、司祭ヨアヒムにお話を聞きたいのですが良いですか」
エルマのその声にヨアヒムが気がついたのかどうぞとリタの後ろから聞こえる。
「どうぞ...」
リタが部屋へ促す、奥のベッドでヨアヒムは横になっていた。
「司祭ヨアヒムおはようございます、お加減はどうですか?」
「おはようございます、エルマ様だいぶ気分は良いです」
ヨアヒムは泣きながら告発を語った後、心労もあってか倒れてしまったので今までの虐待を受けた傷などを含め治すべきと医師に助言され今治療をしている。
「エルマ様のおかげで身体の中の淀みが大幅に減らせたので、薬物依存にならないようです、ありがとうございます」
「そう...あ!なら回復させてもらえますか!」
「え、良いのですか?」
そう言ってエルマはヨアヒムの頭に手を当てて昨日行ったヒールとクリアランスを同時にかけてあげる。
エルマの回復術は加護が通常より高いので依存性のある麻薬系の毒の淀みも大幅に消してくれるらしい。
「ああ...身体の淀みが更に薄れて行く感じがします...」
ヨアヒムの顔色が前よりすっきりした感じがする。
「良かった...私がここに滞在している間、毎日回復術をかけにきますね」
「ああ...ありがとうございます」
ヨアヒムは顔を赤らめながら崇敬の念というよりは憧れの女性に向けるような目でエルマを見つめる。
まぁこんな美少女に助けられればそうはなるよな...とギュンターは思う。
しかしディビドはあまり良い顔をしていない...思うにマックスもそうなのだろう、この2人一体どれだけエルマに執着をしているのか...いや自分自身もヨアヒムに対してあまり良い気分にはなれない、そんな風に優しくしてもらえる事が羨ましいと感じる時点で結構まずいかもな、とギュンターは思った。
「ところで司祭ヨアヒム、以前言っていたリストの件を聞きたいのだが良いだろうか?」
目的である孤児院出身の子供達のリスト...何故か紛失しているのも気になるが今は分かる範囲でも情報が欲しかった。
「ああ...そうですね、丁度修道士リタも居ますし、リタ、此方へ」
ヨアヒムはリタを呼ぶとリタは此方へやってきた。
「修道士リタ、以前言っていた孤児院のリストの件なんだけど、君が分かる範囲でエルマ様達に教えてあげて欲しいんだ?いいかな?」
「あ...はい、でもほとんどが王都へ行った子達ばかりですしあまりお役に立てないかもです」
そう言って覚えている子達の名前と引越しした先などを口にする。
「そういえば仲良くしていたデリアって子がいたんです...王都に行っても手紙を送るって言ってたのに何も音沙汰無くて...」
「え!その子はいつ孤児院から出たのかい?」
リタが気になる事を言うのでギュンターは聞き返す。
「そうですね、半年は経っているとは思いますよ?でも王都で働いているから忙しいだけかもですし」
「...そうか...ありがとう」
「いいえ」
リタは暗い顔をしている、もしかしたらその子の事が心配なのかも...と思った瞬間だった。
ヨアヒムがエルマをじっと愛おしそうに、まるで恋する乙女のような表情で見つめている姿を見てリタがエルマに強い憎しみを抱く様な瞳でじっと見ていた事にギュンターは気がついてしまった。
このリタという少女は養生のための世話を買って出るほどヨアヒムの事が好きなのだろうに当のヨアヒムはエルマに夢中のようだ、面白くは無いのだろう。
「修道士リタ、貴重な情報をありがとう」
ギュンターは礼を言ってその場を去る事にした、どうにも女性の嫉妬やら憎しみなどが苦手である。
「では私達もこれで、ヨアヒムゆっくり休んで下さいね」
エルマ達も一緒に部屋を後にするとディビドの表情が険しくなる。
「そうか...孤児院出身で王都へ向かうなら領を跨ぐ際に許可が必要だが...信徒の範囲が結構広い可能性が有れば...ロストック外の...ギュンター殿、聖サンソンへの巡礼とか結構あると思いますが領への出入りのリストなどあったりしますか!」
「そうだな、関所にあるかもだが...あ!そう言うことか!」
ディビドの意図にギュンターは気がつく。
「失踪者がもし他の領からなどの場合...それこそ巡礼者なら行き帰りで二度そこを通るだろうし孤児院の子なら必ずそこを一度は通るはず...去って行く子供達だけでなく他領からの巡礼者が居なくなったとしても誰も気が付かないでしょうからね、すぐに確認した方がいいですね」
「ああ、じゃあ俺はそちらに!」
ギュンターはそう言って関所へ向かう、大体半日で着くはずだ、そこでリストを確認しに行く。
ーそしてギュンターはリタからの話の孤児とそのリストでめぼしい人数を確認する...その数は8人...もし消えた修道士が生贄に捧げられているなら9人...もう1人生贄になるならダガンが復活する...
ーーー
...何故あの方はあの女預言者に恋慕しているの?
...何故私で無いの?
...私はずっとあの方を救いたいから生贄を捧げ続けたのに...
...あの女預言者が何もかも掻っ攫っていった...あの方の心の拠り所は私になる筈だったのに!
...許せない!許せない!あの方は私のものなのに!
...ああ...ならばあの女預言者を生贄に捧げてしまえばいいのか...
『え?それは全くつまらないですねェ...』
振り向くと燕尾服の男がつまらなさそうな顔をして椅子に足を組んだ状態で座っていた...
ーーーーー
※ゲーム豆知識
この世界では違法薬物治療でクリアランスが効く、しかし聖職者が自分で使ってクリアランスをかけるはできない。
何故なら神に使える者は違法薬物を使ってはならないためでクリアランスは神の奇跡ゆえ神に反する行動を取ると使えなくなる。
因みにクレメンスはとうに奇跡はもう使えない。
コメント