預言者エルマの七転八倒人生 破滅フラグは足音を立ててやってくる!
4章 第10話 子供に好かれるのは誰よりも子供だから...
※最後にR15で胸糞表現有ります、苦手な方は読み飛ばし推奨。
ディビドが単独でクレメンス周辺を調べると言うので此方は孤児院へ訪問という形で実際見に行く事にした。
フラウエン教会の近くにある孤児院は教会管轄で孤児を引き取り育てている場所である。
「ここにいる身寄りのない子供は捨て子も多いですが隣国との小競り合いで親を失った兵士の子供も多いのです...領主であるハインリヒ様も心を痛め孤児院に多大な寄付も行っておりここはその一つなのです」
ギュンターは孤児院の内情も話す。
「この件ってロストック辺境伯は知っているの?」
「いいえ、もしかしたら噂くらいは聞いているかもですが確たる証拠があっての訴えではないので詰所より上にはまだ...ああ、ここです」
孤児院前に着く、ロストック領の建物らしく石作りの大きな施設だ。
耳をすませば子供達の賑やかな声が聞こえる。
ギュンターは木で出来た扉にノックする。
「南領騎士団のギュンターです、バーレのアルトマイヤー寺院のエルマ様をお連れしました」
そうして扉が開くと1人の司祭服の青年が立っていた。
南領にはあまりいない黒髪は男性には珍しく肩まで伸ばしており、灰色の瞳と泣きぼくろの持ち主で細身の青年、20歳くらいだろうか...女性のように綺麗な人だ。
「預言者エルマ様、フラウエン孤児院へようこそおいで下さいました、私は此方を院長してます司祭ヨアヒムと申します」
ヨアヒムは丁寧に一礼をする。
「はじめまして、貴方と同じ神の僕エルマです、司祭ヨアヒム」
当初聞いていた話と違ってヨアヒムに対して不思議と印象は悪くなかった。
ーーー
ギュンターは感心してエルマを見つめていた。
「きゃーエルマ様みーつけた!」
「わぁ見つかっちゃった!」
「今度はエルマ様がおおかみ役だー」
「きゃーみんな隠れろー」
さっきからエルマが子供たちとずっとかくれんぼしたりして全力で遊んでいるのだ。
「さぁみんなどこにいるのかなぁ~」
エルマがあちこち探して一人一人探して回る。
「ケヴィンみーつけた!」
「わぁみつかっちゃった!」
きゃーきゃー言って子供達は楽しそうだ。
「もうかくれんぼ辞めてまたお話聞きたい~さっきは聖ジョシュアの話だったから別のお話ききたーい」
「僕は聖サンソンのお話がいい!」
「わたしも聞きたい~」
エルマは子供達に大人気だ。
ギュンターは最初どんな威厳に満ちた人物が来るのかと思っていたがまさかあんな小柄で可愛らしい少女で性格も気さくだとは思いもよらなかった。
ロストックの聖職者はやたらと堅いか裏の汚い噂のイメージしかなかったが、エルマを見て全員がそうではないのだなと思った。
トラウゴッド教で最も尊ばれる存在なのに、いやあそこまで人に好かれるからこそ尊ばれるのかもしれない。
マックスとディビド...護衛の2人はなかなかのやり手だがその2人が望んで従うほど魅力があるのだろう。
孤児院の子供達がほぼ全員が集まってエルマを囲んでじっとエルマの語る聖サンソンの物語をじっと聞いている。
まるで見てきたような迫力でサンソンとダガンの戦いを表現しながら話す姿にみんな真剣だ。
最後にダガンと相打ちになってしまう所でちらほらサンソンがかわいそうと泣きだす子供達も現れる。
「ねぇねぇなんでサンソンはとっても頑張ったのに死んじゃうの?」
「サンソンはね、願ったの!悪魔封じ込めた後のこのロストック地でサンソンの事を忘れないでいてくれれば、サンソンが大好きなロストックの地を守ってくれればそれで幸せだって!」
「じゃあサンソンの事をずーっと忘れないでいればサンソンは幸せなの?」
「そうだよ!だからみんなサンソンの事を忘れないで...そしてみんなでサンソンが大好きなロストックを守っていこうね」
エルマは子供達を慈しみをもって見つめる...まるで母親のような優しさで。
そんな姿にギュンターはドキっとする。
ギュンターはどちらかというと年上好みでマルガレーテのような女性に惹かれる所があったが、数日間にマルガレーテの失態でどこかその憧れが冷めてしまった所があった。
しかし今そこにいる少女がまるで誰よりも大人で包容力があり子供達に愛情を注ぐ姿に強く惹かれてしまう。
彼女は『神の花嫁』でそんな気持ちは持ってはいけないぞ、とテオドールに釘を刺されていたが、生じてしまった感情は消える事は無い。
今ならあの護衛達の気持ちがわかる...ギュンターはそう思ってしまう、もしあの護衛の1人になれるものならなりたいなとすら思う程に。
「すごいですよね...エルマ様は」
後ろから声がかかる、振り向くとヨアヒムが立っていた。
「子供達に大人気ですものね」
「それもですが聖典の教えをあんな風に教えてみんな夢中になって...なかなか難しいんですよ?子供達に教えこむって」
「はは、そうでしょうね」
「そうそうエルマ様にお茶と思いまして...さぁさぁみんな!エルマ様を解放してあげてください!」
パンパンと手を叩いて子供達にエルマを解放する様に促す。
子供達はえーっ!と残念そうだがヨアヒムの言うことを聞くのかじゃあね、とかまた会えるよね!とか声をかけられながらみんなそれぞれの部屋などに戻っていく。
「エルマ様お茶の用意ができましたのでぜひ此方へ」
ヨアヒムはにっこり笑を浮かべて来客用の部屋へ促した。
ーーー
「...失踪者...ですか、特にそんな子達は居ないとはおもうのですが」
ヨアヒムはお茶を淹れながらそう答える。
「ではこの1、2年この孤児院から出た子供たちの足取りを教えて頂けますか?」
「ああ、そうですね...大体皆さん王都へ働きに出てしまう子の方が多いので」
お茶を出され、そのまま棚から名簿を出してくる、そこには孤児院から去っていった子供達の移動した先も書かれている。
「この数年だとそうですね...あれ?」
ヨアヒムの眉間に皺が寄る。
「どうされましたか?」
「おかしいですね...その部分だけ無いなんて、思い出せる範囲でお教えしますね、ああそうそうここから出た修道士リタならある程度わかるかもですね、彼女は子供達を献身的に見てあげてましたし、彼女に私から聞いてみましょうか」
修道士リタ、ああそういえばサンソンの墓の鍵を渡してくれた赤毛の女の子か...
「彼女はここにいた時点から見習い修道士でしたしきっとわかると思いますよ、分かりましたらお伝えしますね」
「司祭ヨアヒム、ありがとうございます」
「いえいえ...」
ふとヨアヒムを見ると何か言いたそうだ。
「どうされましたか?」
「...あ、はい実はエルマ様...時間がある時で良いので一つ助言を頂けたく思いまして...その出来れば2人だけでお願いしたいのです...」
少し翳った表情をしている、何か言い難い話なのか?
「ええ、良いですよ。私は暫くロストック城に滞在してますので」
「ありがとうございます...では近いうちにお願いに伺いますね」
にこりと笑顔を浮かべるもののどこか悲しそうな表情に何か引っかかりを感じた。
ーーー
夜遅い時間
フラウエン教会のクレメンスの寝室にはなんとも趣味の悪いギラギラした骨董品や像などが溢れており、まるで王族が使うような天蓋付きのベッドが部屋に設置されていた。
見苦しい豚のような腹、ギトギトと脂ぎったクレメンスは裸でベッドの上におり聖職者であるにも関わらず金でできた趣味の悪い盃に入った精力剤入りのワインを煽る。
そのクレメンスの傍には裸でうつ伏せになって気絶している黒い髪の若い青年が横たわっていた。
「あのいけ好かないヘルムートの秘蔵っ子...まさかこのロストックにエルマ様を寄越すとは...ぐふふ」
クレメンスの卑下た気持ちの悪い笑い方をしながら杯を煽る。
「まぁ実際の所は親族の貴族の娘をただ担いでいるだけだろうに、あの術や幻覚だってもきっとウルムの術式が使えるだけであろうしなぁ...まぁ良い、あんな美しい娘そのままにしておくのも勿体無い」
ダガンの幻影や神罰をどうも事実と思ってはいない様である。
そう言って怪しい小さい瓶を取り出す。
「コレがあればどんな身の堅い男でも女でも簡単に身体を開くしな」
そう言って気絶している青年を叩き起こし瓶の中身を無理矢理口にねじ込むと青年ははぁはぁと息を荒げる。
「たまには若い女を味わうのも一興だ...しかもかなりの上玉と来たものだ...きっといい声で鳴くのだろうなぁ...ヘルムート奴どんな顔をするかのぅ...ぐふふ」
そう言って青年に覆い被さる。
その姿をじっと見つめる怒りを孕んだ深い紫色の双眸の存在を知らないままクレメンスは快楽に耽りはじめた。
ーーーーー
※ゲーム豆知識
ロストックの法について
エアヴァルド王国の領とはいえ元は別の国だったため、ロストックでは独自の法律が存在している。
ちなみにロストックからの追放とはエアヴァルドの別の領へなんて生優しいものではなく、バーバリアンと呼ばれる蛮族が闊歩する荒野に放り込む事を指す。
ディビドが単独でクレメンス周辺を調べると言うので此方は孤児院へ訪問という形で実際見に行く事にした。
フラウエン教会の近くにある孤児院は教会管轄で孤児を引き取り育てている場所である。
「ここにいる身寄りのない子供は捨て子も多いですが隣国との小競り合いで親を失った兵士の子供も多いのです...領主であるハインリヒ様も心を痛め孤児院に多大な寄付も行っておりここはその一つなのです」
ギュンターは孤児院の内情も話す。
「この件ってロストック辺境伯は知っているの?」
「いいえ、もしかしたら噂くらいは聞いているかもですが確たる証拠があっての訴えではないので詰所より上にはまだ...ああ、ここです」
孤児院前に着く、ロストック領の建物らしく石作りの大きな施設だ。
耳をすませば子供達の賑やかな声が聞こえる。
ギュンターは木で出来た扉にノックする。
「南領騎士団のギュンターです、バーレのアルトマイヤー寺院のエルマ様をお連れしました」
そうして扉が開くと1人の司祭服の青年が立っていた。
南領にはあまりいない黒髪は男性には珍しく肩まで伸ばしており、灰色の瞳と泣きぼくろの持ち主で細身の青年、20歳くらいだろうか...女性のように綺麗な人だ。
「預言者エルマ様、フラウエン孤児院へようこそおいで下さいました、私は此方を院長してます司祭ヨアヒムと申します」
ヨアヒムは丁寧に一礼をする。
「はじめまして、貴方と同じ神の僕エルマです、司祭ヨアヒム」
当初聞いていた話と違ってヨアヒムに対して不思議と印象は悪くなかった。
ーーー
ギュンターは感心してエルマを見つめていた。
「きゃーエルマ様みーつけた!」
「わぁ見つかっちゃった!」
「今度はエルマ様がおおかみ役だー」
「きゃーみんな隠れろー」
さっきからエルマが子供たちとずっとかくれんぼしたりして全力で遊んでいるのだ。
「さぁみんなどこにいるのかなぁ~」
エルマがあちこち探して一人一人探して回る。
「ケヴィンみーつけた!」
「わぁみつかっちゃった!」
きゃーきゃー言って子供達は楽しそうだ。
「もうかくれんぼ辞めてまたお話聞きたい~さっきは聖ジョシュアの話だったから別のお話ききたーい」
「僕は聖サンソンのお話がいい!」
「わたしも聞きたい~」
エルマは子供達に大人気だ。
ギュンターは最初どんな威厳に満ちた人物が来るのかと思っていたがまさかあんな小柄で可愛らしい少女で性格も気さくだとは思いもよらなかった。
ロストックの聖職者はやたらと堅いか裏の汚い噂のイメージしかなかったが、エルマを見て全員がそうではないのだなと思った。
トラウゴッド教で最も尊ばれる存在なのに、いやあそこまで人に好かれるからこそ尊ばれるのかもしれない。
マックスとディビド...護衛の2人はなかなかのやり手だがその2人が望んで従うほど魅力があるのだろう。
孤児院の子供達がほぼ全員が集まってエルマを囲んでじっとエルマの語る聖サンソンの物語をじっと聞いている。
まるで見てきたような迫力でサンソンとダガンの戦いを表現しながら話す姿にみんな真剣だ。
最後にダガンと相打ちになってしまう所でちらほらサンソンがかわいそうと泣きだす子供達も現れる。
「ねぇねぇなんでサンソンはとっても頑張ったのに死んじゃうの?」
「サンソンはね、願ったの!悪魔封じ込めた後のこのロストック地でサンソンの事を忘れないでいてくれれば、サンソンが大好きなロストックの地を守ってくれればそれで幸せだって!」
「じゃあサンソンの事をずーっと忘れないでいればサンソンは幸せなの?」
「そうだよ!だからみんなサンソンの事を忘れないで...そしてみんなでサンソンが大好きなロストックを守っていこうね」
エルマは子供達を慈しみをもって見つめる...まるで母親のような優しさで。
そんな姿にギュンターはドキっとする。
ギュンターはどちらかというと年上好みでマルガレーテのような女性に惹かれる所があったが、数日間にマルガレーテの失態でどこかその憧れが冷めてしまった所があった。
しかし今そこにいる少女がまるで誰よりも大人で包容力があり子供達に愛情を注ぐ姿に強く惹かれてしまう。
彼女は『神の花嫁』でそんな気持ちは持ってはいけないぞ、とテオドールに釘を刺されていたが、生じてしまった感情は消える事は無い。
今ならあの護衛達の気持ちがわかる...ギュンターはそう思ってしまう、もしあの護衛の1人になれるものならなりたいなとすら思う程に。
「すごいですよね...エルマ様は」
後ろから声がかかる、振り向くとヨアヒムが立っていた。
「子供達に大人気ですものね」
「それもですが聖典の教えをあんな風に教えてみんな夢中になって...なかなか難しいんですよ?子供達に教えこむって」
「はは、そうでしょうね」
「そうそうエルマ様にお茶と思いまして...さぁさぁみんな!エルマ様を解放してあげてください!」
パンパンと手を叩いて子供達にエルマを解放する様に促す。
子供達はえーっ!と残念そうだがヨアヒムの言うことを聞くのかじゃあね、とかまた会えるよね!とか声をかけられながらみんなそれぞれの部屋などに戻っていく。
「エルマ様お茶の用意ができましたのでぜひ此方へ」
ヨアヒムはにっこり笑を浮かべて来客用の部屋へ促した。
ーーー
「...失踪者...ですか、特にそんな子達は居ないとはおもうのですが」
ヨアヒムはお茶を淹れながらそう答える。
「ではこの1、2年この孤児院から出た子供たちの足取りを教えて頂けますか?」
「ああ、そうですね...大体皆さん王都へ働きに出てしまう子の方が多いので」
お茶を出され、そのまま棚から名簿を出してくる、そこには孤児院から去っていった子供達の移動した先も書かれている。
「この数年だとそうですね...あれ?」
ヨアヒムの眉間に皺が寄る。
「どうされましたか?」
「おかしいですね...その部分だけ無いなんて、思い出せる範囲でお教えしますね、ああそうそうここから出た修道士リタならある程度わかるかもですね、彼女は子供達を献身的に見てあげてましたし、彼女に私から聞いてみましょうか」
修道士リタ、ああそういえばサンソンの墓の鍵を渡してくれた赤毛の女の子か...
「彼女はここにいた時点から見習い修道士でしたしきっとわかると思いますよ、分かりましたらお伝えしますね」
「司祭ヨアヒム、ありがとうございます」
「いえいえ...」
ふとヨアヒムを見ると何か言いたそうだ。
「どうされましたか?」
「...あ、はい実はエルマ様...時間がある時で良いので一つ助言を頂けたく思いまして...その出来れば2人だけでお願いしたいのです...」
少し翳った表情をしている、何か言い難い話なのか?
「ええ、良いですよ。私は暫くロストック城に滞在してますので」
「ありがとうございます...では近いうちにお願いに伺いますね」
にこりと笑顔を浮かべるもののどこか悲しそうな表情に何か引っかかりを感じた。
ーーー
夜遅い時間
フラウエン教会のクレメンスの寝室にはなんとも趣味の悪いギラギラした骨董品や像などが溢れており、まるで王族が使うような天蓋付きのベッドが部屋に設置されていた。
見苦しい豚のような腹、ギトギトと脂ぎったクレメンスは裸でベッドの上におり聖職者であるにも関わらず金でできた趣味の悪い盃に入った精力剤入りのワインを煽る。
そのクレメンスの傍には裸でうつ伏せになって気絶している黒い髪の若い青年が横たわっていた。
「あのいけ好かないヘルムートの秘蔵っ子...まさかこのロストックにエルマ様を寄越すとは...ぐふふ」
クレメンスの卑下た気持ちの悪い笑い方をしながら杯を煽る。
「まぁ実際の所は親族の貴族の娘をただ担いでいるだけだろうに、あの術や幻覚だってもきっとウルムの術式が使えるだけであろうしなぁ...まぁ良い、あんな美しい娘そのままにしておくのも勿体無い」
ダガンの幻影や神罰をどうも事実と思ってはいない様である。
そう言って怪しい小さい瓶を取り出す。
「コレがあればどんな身の堅い男でも女でも簡単に身体を開くしな」
そう言って気絶している青年を叩き起こし瓶の中身を無理矢理口にねじ込むと青年ははぁはぁと息を荒げる。
「たまには若い女を味わうのも一興だ...しかもかなりの上玉と来たものだ...きっといい声で鳴くのだろうなぁ...ヘルムート奴どんな顔をするかのぅ...ぐふふ」
そう言って青年に覆い被さる。
その姿をじっと見つめる怒りを孕んだ深い紫色の双眸の存在を知らないままクレメンスは快楽に耽りはじめた。
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※ゲーム豆知識
ロストックの法について
エアヴァルド王国の領とはいえ元は別の国だったため、ロストックでは独自の法律が存在している。
ちなみにロストックからの追放とはエアヴァルドの別の領へなんて生優しいものではなく、バーバリアンと呼ばれる蛮族が闊歩する荒野に放り込む事を指す。
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