預言者エルマの七転八倒人生 破滅フラグは足音を立ててやってくる!

野良ぱんだ

3章 第2話 破滅フラグが(性的に)襲って来るとか聞いてねぇ!

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日が陰った辺り、ジル殿下が引き連れた北領騎士団の討伐部隊がライゼンハイマー邸に訪れた...ただフォロカルを倒してしまったため無駄に終わった訳だが...

パッパはジル殿下を屋敷に迎え入れ礼を述べ、討伐部隊の人々にも労いの言葉をかける。

ジル殿下も直接指揮をし戦いをするつもりであったのか北領騎士団特有のグリフィンの刻印の入った鎧を身に纏い青に金の刺繍の入ったマントを身につけている。

エントランスの2階から覗き、どのタイミングで降りるべきかを考えていた...それにしてもいつ見てもキラキラしいな...目が痛い。

どうやら此方に気がついたのか見上げながら笑顔を見せる。

なんとか引き攣りながら笑顔を作り階段を降りジル殿下に礼を述べる。

「ジルヴェスター殿下わざわざ遠路はるばるお越し頂きありがとうございます、ライゼンハイマー侯爵家にいる間はエルマ フォン ライゼンハイマーとして対応致します。ただ申し訳ありませんが私が悪魔フォロカルを倒してしまいその連絡も丁度すれ違いになったためご足労頂いてしまう結果になり申し訳ありません」

まぁウルム国境付近から片道3日はかかるからねぇ...謝っておくさ。

「顔を上げてください、エルマ様...」

そう言われ顔を上げる、ジル殿下は艶やかな表情で此方を見ている。

「何時もの清楚な司祭服の良いですがやはり貴女にはドレスがよく似合いますね...とても美しい令嬢だ」

そう言って屈んで勝手に手を取り甲に口付けをする...うわぁやめて欲しいんだけど...くっそマックス氏がいないせいで好き放題だな!

周りの侍女達ががきゃーきゃー騒がしい。

「お辞め下さいジルヴェスター殿下...」

手を無理矢理下げ、ジル殿下を睨む。

「今日はライゼンハイマー侯の娘としお迎え致しますが私はどんな姿であろうと神の花嫁なのです、その様なお戯れはお辞め下さい!」

本来ならマックス氏が全てガードしてくれる場面だが今は全部自身で対象しなくてはならない。

「失礼...しかしその美しい貴女の姿に見惚れてしまったのです、お許しを」

そう言って非礼を詫びるも目は全く反省していない。

「...では悪魔討伐の件で私から報告があるので此方へ...先に北領騎士団に在籍されているギディオン様もお待ちですのでどうぞ」

そう言ってジル殿下を客室へ案内する。

客室にはギディオン姿のディビドが待っていて殿下が入室すると深く一礼し午前中に書き上げた報告書とフォロカルの成れの果てである砕けた翡翠石を提出する。

ジル殿下はソファへ座り、砕けた翡翠石眺める。

「...確かにこれは禁呪の書き板...しかしこの様に砕けるなんて」

ジル殿下は翡翠石を組み立て書き板の形に戻す。

前日ディビドに組み立てたものを念写画で残しているのでこのまま渡しても大丈夫だろう。

「詳細は此方の報告書に記載しましたが、悪魔は預言者であるエルマ様の攻撃が有効であり、封じるだけでなく滅ぼす事が可能かと思われます」

「確かに...しかし前例ない事だ...」

そう言ってジル殿下はエルマさんの方をじっと見る。

「この様なか弱い女性にその様な事はさせられないと私は思う...ギディオンと言ったか、エルマ様の手を何故煩わせた?傭兵とは言えお前はなかなか有能だと聞いていたが」

ジル殿下はディビド睨む。

「殿下!ギディオン様は私を助けて下さったのです!ギディオン様が居たからこそ今私はここに立って居るのです...ギディオン様を責めないで下さい」

ちょっとディビドの事悪く言うのは許せないんだけど!ディビドの高位術式のお陰で倒せたんだもん!抗議だ抗議!!

「いえ...私の力不足は否めません」

ディビドは下を俯いたまま答える。

「...まぁ今回はエルマ様の顔に免じて許す...ご苦労であったな、下がれ」

そうジル殿下が言うとディビドは部屋から退室する。

「エルマ様、我々北領騎士団が力になれず申し訳ありません...」

「いえ、あの場で対処出来たのは私だけでしたから、そんな中ギディオン様と私の護衛のマックスがいてくれたお陰で倒す事ができたのです」

「...エルマ様はギディオンの事が気に入られたのですか?」

「は?」

「どうにも私にはあの男に肩入れしてる様に見えますね...」

そりゃあディビドは味方だからね...しかし怪しまれたかもしれない。

「...私は貴方が他の男と仲良くしているのはとても嫉妬を覚えるのです...いつもべったりと一緒にいるあの護衛騎士も以前一緒にいたあの宣教師の男も...」

急にエルマさんが座っているソファの横に座る、え!嫌だ怖い!

一緒にいる護衛騎士達も居るのに何も分かっていない?ええ?何で?

「認識阻害術という物がありましてね」

そう言ってジル殿下は肩を掴みそのままソファへ押し倒す。

「な!」

覆い被されたので両手で力一杯押しのけようとするけど全く動かない!そう言えば筆頭騎士くらい強いって噂だったからか。

「声を上げても無駄ですよ、機密など取り扱う事もあるので多少の術式を扱える様にはしているんです、今ここにいる護衛達は私とエルマ様が対面しながら普通に話をしている風にしか見えませんでしょうね」

認識阻害術なんて高度な術だ、最低でも風と水の高位術式を組める能力が無ければ出来ない...ヒエッ!ラスボス怖い!

認識阻害術を破るには時間が解けるのを待つか同じ術を使える術士に頼むしかない。

神殿騎士は基本術を扱える者が居ないのは昔から術が自然崇拝といった異教の産物でもあるからだ。

現在だとウルムの研究機関により自然崇拝ではなく、自然学的な根拠で成り立つものという認識になりつつある。

「こんな事をしていいと思ってらっしゃるのですか!殿下!」

「もちろん分かってますよ...いっそこのまま深い仲になるのも良いとさえ思います」

器用にボレロのボタンを片手で外し隠していた胸の谷間をガン見している...

「いつもの清楚な司祭服こんな艶かしい姿を隠していたなんて...とても背徳的ですね、まるで娼婦のようだ」

「やめっ!痛!」

左胸を鷲掴みされ、胸と鎖骨の中辺りに唇を押し付け強く吸いつかれた!何もしかして貞操の危機なんじゃ!

ずっと警告音が頭の中に鳴りっぱなしだが、その音は更に大きくなる。

「本来のなら貴女は私の花嫁になるはずだった...それを取り戻すだけです」

ジル殿下はニヤリと笑を浮かべる。

じっとサファイアブルーの瞳で見つめられる、その瞳奥底は深い闇が見える。

自分でも恐怖でガタガタと身体が震える出す!

「誰か!助けて!」

そう叫んだ瞬間ジル殿下の背後から首元に剣の刃が向けられる。

「...神殿騎士にも術式に詳しいものでもいたのか」

ジル殿下が振り向くと1人の背の高い神殿騎士がやや短めの剣を向けていた...その声はディビドだ!さっき神殿騎士になりますって言ってくれてたから直ぐに来てくれたようだ。

「神が我らに与えて下さった預言者エルマ様にその様な無体を働くとは王族であっても見過ごす訳にはいきません」

「...デ...イザーク!」

ジル殿下が離れると同時に神殿騎士イザークになりかわったディビドはエルマさんを片手で抱きかかえ、ジル殿下に剣を向けたまま距離を取る...ディビド以外と力持ちで驚く。

「エルマ様遅くなって申し訳ありません...」

「ありがとう...イザーク...ジルヴェスター殿下、今日の所はお引き取り下さい...後日コンラート陛下にも抗議させて頂きます!」

「...まぁ今日直ぐにでも貴女を奪おうと思ってはいませんでしたから...だた私は諦める事は致しませんので...例えどんな手を使ってでもこの手に取り戻すつもりです」

ジル殿下はにやりと笑みを浮かべ、認識阻害術を解除し、急に何が有ったのかわからずあたふたし始める共に来ていた騎士を叱責し共に部屋を退室していく。

「ではまた...」

もう来ないで欲しい!嫌だ!怖い!

「部屋に戻りましょう、着替えて少し落ち着居た方が良いですね...あとライゼンハイマー侯にも殿下が屋敷に近寄らない様に伝えるべきですね」

「...そうだね...」

足が震えて立てなかったため、ディビドが気を遣って俗に言うお姫様抱っこされながら部屋へと連れて行って貰ったが、後から冷静になると頬にキスすらされてしまった件もあり恥ずかしすぎて死にそうになった...

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ゲーム豆知識
認識阻害術
斥候系クラスのスキル 隠れ身スキル
水と風の高位術式を用いた高位の術式。
相手には見えないようになるだけでなく、別な行動をしているように見せかける事も可能。

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