預言者エルマの七転八倒人生 破滅フラグは足音を立ててやってくる!

野良ぱんだ

閑話休題 宣教師ディビド 1

ディビドはずっと昔から心が壊れていた...悪魔によって壊され悪魔に対し激しい憎悪を持つことで生きていたのだ...

ディビドはウルムの学術都市で賢者の称号を持つ父親と母親と共に暮らしていた。

賢者ジェセは高齢になってから結婚したためか1人息子のディビドと若い妻ルーシィをとても愛しており、2人が喜んでくれるからとカスタードクリームたっぷりのアップルパイを休日に作ってるれるような愛妻家で子煩悩な父親だった。

そんな中に事件が起こる。父の友人であるアークメイジが『明けの明星』を名乗る燕尾服の男に唆され息子であるディビドを拐い脅迫され禁呪の力の解放の生贄になった...

しかし賢者の血肉は悪魔にとって魅力的であったのか、封じられていた悪魔はディビドの父親ジェセを選び、アークメイジを殺し、あろうことかジェセの肉体を受肉の媒介と選び、紫色のフクロウの頭と翼を持った不和と破壊の悪魔アンドラスとなって復活してしまう。

そしてディビドが住んでいた街へ降り立ち、生贄と称して街の人々の心に憎しみを植え付け殺し合いさせたのだ。

ディビドは父の最後の力により認識阻害術をかけられ助かったが、街の一部は壊滅してしまう。

アンドラスはウルムの悪魔対策に編成された軍により数日間の戦いの後、制圧され封じる事には成功したが被害の甚大さは目を背けるものだった。

その中には母の遺体もあり、憎しみを持った顔で亡くなっていた...その手には血塗れの包丁もありきっと母親もアンドラスの力により人を殺したのだろう...あんなにも優しかった母すら...悪魔が憎い...悪魔に魅入られ力を求める存在が憎い...

父親は悪魔の受肉の媒介となり、母はその力のため人を憎み殺し合いの中死んでいった...その時点でディビドの心は壊れ、悪魔と悪魔の力を得ようとする人間に対して憎悪しそれらを倒す事が彼にとっての生きる目的となった。

表面上は穏やかそうなフリをしながら心は真っ暗で憎しみで一杯な哀れで壊れた男だ、悪魔に関わろうとした人間を表情も変えずに抹殺する事など全く躊躇なく行えるのだ。

ウルムで孤児となったディビドは頭の良さから高等教育を受けることが出来たため、その立場を活用し悪魔の事を調べ上げ、悪魔がどう封じられどのように倒す事が出来るのか...どう言った人間がそれに手を染めるのかを徹底的に調べて尽くした。

悪魔対策専門の部署へ入るための道探るも、自身が思うような行動が取れない事を知り、諜報活動に適したクラスへ変更し様々な情報を仕入れ、悪魔の受肉を受ける前に殺したり陥れたりなどを人知れずに行ってきた。

その為にはなんでもやってきた...殺しなど汚い仕事も沢山行ったのだ。

その時ウルムの裏社会でついた名前が『悪魔狂い』、何より悪魔が絡んだ仕事を積極的に行い惨殺してきたからだ。

そんな中で悪魔はトラウゴット教の堕天の話を耳にする。

トラウゴット教はウルムではそこまでの権力は無いが隣国では国教とし、王の継承時などにも関わるくらいの存在だが、この世界で唯一回復や浄化などの神聖言語と呼ばれる術を使えるのはトラウゴット教のプリーストや上位のビショップのみである。

神聖言語は信仰心と善行をどれ程行ったかによって発動する奇跡なので、ウルムでは研究対象としては興味深くあっても簡単には取り扱えない領域でありなかなか研究としては進まない状態であった。

ディビドが興味をひいたのは、聖典の一節に悪魔を封じる描写が幾つもあり、その際用いたのが神罰と呼ばれる奇跡、唯一神に選ばれた預言者や裁き人といった存在が扱えるという部分である。

しかもまだ幼いまでも久々に『預言者』が誕生したという話を聞く。

しかしこういうものは権威のためにただ据えられたものかもしれないし、話によれば貴族の娘だと聞くので話半分にしていた。

ただトラウゴット教内部に入れば悪魔の事を知る事もできるだろうと思い、仮の立場を手に入れる一つとして『ダヴィデ』と名乗りウルムの寺院で改宗し熱心に活動し、早々に宣教師の立場を得る事ができた。

ただ元々悪行を働いていた為、神聖言語を扱う事ができなかったが過去の出来事は仕方ない、悔い改めることこそ重要だと教会の修道士達は励ましてくれた。

そうやって数年が過ぎた頃に預言者の神託があった為にウルムで活動していた宣教師や修道士に情報を聞いて欲しいという話が出た。

『エアヴァルドの王妃が愚かにも嫉妬に狂い第二王子とその母君を陥れる為に行動しようとしているから噂でもいいので傭兵などの募集などがあったら気にかけて欲しい』

面白い内容だな...とディビドは思った、しかもそれを言い出したのがかの預言者で、当時若干12歳の少女だというのだから。

ディビドはいろいろな情報網を持っており、その中でエアヴァルドの王妃はウルムの王族の娘でよくウルムに戻っては数日滞在する際に高級娼館でこちらの国の貴族と密会...まぁ不倫を行なっている事は知っていたので密会場所に忍び込み蓄音石で密会内容を録音し、傭兵崩れを集めている話も全て手に入れその情報全てバーレの寺院へ送った。

その結果まさか預言者様直々にその事件を壊滅させた上、王の罪を指摘し王妃を神罰をもって裁き、祝福をもって王太子をそのまま王に据えさせた話を聞いて驚く。

そんな中ディビドにエアヴァルドに来てみないか?と預言者様直々の誘いが来る。

宣教師としてこれ程光栄な事はないと皆に言われ、自身も面白いと思ったディビドは一度会ってみることにした。

エルマと名乗った預言者様に初めてあった時、目に入ったのは流石貴族の血筋だと思う美少女だ、肩にかからないくらいの薄緑色のサラッとした髪にピンクダイヤモンドの瞳の印象的な、気取った所のないよくけらけらと笑う子だ。

その時は特別なローブを身につけており、よく飾られている聖ジョシュアの絵の中でジョシュアが身につけている白と青のローブを身につけていた。

しかし何か不思議な感じがする、まるで大人が無理に子供のふりしているのではないかと...ふいに考え込む姿など見ていると実際はそれなりに年齢を重ねた大人なのではないか、と感じるのだ。

その少女に片時も離れない全身甲冑姿の神殿騎士の護衛が佇む...やや背が低い感じがすると思ったら実際まだ11歳の少年だと聞き驚く、幼い少年だろうに間違いなく強いと肌で感じたからだ、しかも忠誠心は誰よりも高い、自身がこの少女に無体を働くなら首が飛ぶのではと思う程だ...とんだ狂犬を飼っているものだと思った。

それと招かれた場所がバーレのアルトマイヤー寺院の預言者様の自室...まさかあそこまで質素な場所だとは、とディビドは思った。

寺院の礼拝堂などは神に対する崇敬のために荘厳にすべきだし、儀式や人前に出る際の司祭服はそれなりな物を用いるが、基本的には清貧であり、もし自身に華美な物にお金をかけるくらいならバーレの領民の生活を守る為に使った方がいい、とサラリと言ってのける。

「宣教師ダヴィデ...まさかディビドだったとは...」

エルマはディビド自身に途中気が付き本来の名前を口にしディビドを驚かせる。
ウルム発音でのダヴィデではないのは賢者の父がエアヴァルド出身でエアヴァルド発音の名前に馴染みがあったからだと聞いていた。

本来だれも知り得ないディビドの事を知っている...きっと宣教師だって仮の姿で汚い仕事をやってきたことも全部見抜いている、そう判断した。

ディビドはきっとこの目の前にいる少女は本物の『預言者』だと判断し、正直に話す事にした。

「私はディビド...もう大預言者様にはお見通しかと存じますがある目的の為に仮の姿として宣教師ダヴィデを名乗る者です」

そう言うとエルマは肯く。

「兼ねてより大預言者様の噂は聞いておりましたが、その力本物なのですね...」

これは断罪されるのだろうか...ディビドは一瞬そう思うも意外な返事を貰う事になる。

「できればこの先の預言に関して王妃の件の様に裏付けが欲しいのです、力を貸して頂けませんか?」

エルマは真剣な顔でディビドに力を求めた。

完全に勧誘だ、この少女は偵察や間者として動ける人間を欲している...預言は実際に起こる事自体は分かってもその過程などまではわからないらしい。

しかも預言の内容によっては被害を抑えるために行動するのだ。

「エルマ様、こちらこそ寧ろお仕えさせて頂けるなんて光栄です...どうか貴女の手足のようにお使い下さい」

面白い...しかも今後の活動に預言者様のお墨付きも得られるならと引き受けることにした。

そうして正式に『宣教師ダヴィデ』という存在でエアヴァルド内や隣国ウルムでの活動を始めた。

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※ゲーム豆知識
賢者(クラス)
術士のエキスパート、アークメイジとエンチャンター又はアルケミストのどちらかを経由してなる事ができる。
賢者にのみ無属性最高位術式(無属性とは言っているが星関連が多いため星属性とも呼ばれている)
スキルに消費術回数半減がある。
因みにファンの間では仲間に入ったばかりのアサシンクラスのディビドを速攻メイジからアークメイジ、そして賢者にまで育てるがデフォになっている(ちなみに術式付与を持ってるお陰でエンチャンターは経由しなくてもなれるが究極の賢者にさせる為大概アルケミストを経由させるやり込み派も多い)何故INTの高いステータス割り振りを製作者がしたのかは謎。
公式ガイドブックがおすすめの育て方に『INTが全ユニット内でずば抜けて高いのでさっさと中途半端なアサシンを辞めさせて賢者にすべし』と書いてある...酷い...

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