イントロバートガール·シヴァルリィ~無気力少女の異世界冒険記

コラム

第二百七話 さあ、今こそ立ちあがれ

おぞましい声と共に飛散ひさんしたひかりあつまっていく。


やがてそれはかたまりから巨大きょだいな人のかたちへと変わり、つきほしかすむくらいのかがやきをはなち始めた。


そして、その人の形をした巨大な光は咆哮ほうこう


その雄叫おたけびは、まるでこの世の終わりをげているかのようなものだった。


「あれは……女神なのですか……?」


すでに魔力がてたリムが大地に立ち尽くしながらつぶやいた。


彼女の言うとおり女神は生きていた。


リョウタの魔力を使ったレヴィの攻撃でも、彼女を完全かんぜんたおすことはできなかったのだ。


姿すがた変貌へんぼうさせた女神を見て立ち尽くしてしまっているのは、なにもリムだけではない。


まだ空中にいるソニックとリンリも――。


地面へと着地ちゃくちしたレヴィもリョウタも――。


そして、ググの上にっているビクニもソリテールも、彼女と同じように絶望ぜつぼう表情ひょうじょうかべてしまっている。


「こんなの……勝ってこないよ……」


そうビクニがつぶやいた瞬間しゅんかん――。


女神から放たれた光がググの体をつらぬいた。


それはググだけでなく、その場にいるすべての者へと放たれ、女神による無差別むさべつ虐殺ぎゃくさつが始まる合図あいずとなった。


ググと共に墜落ついらくしたビクニとソリテールは、うんよく軽傷けいしょうんだが、女神の放つ光は止まらずに放出ほうしゅつされ続ける。


「ソリテールッ!? しっかりしてッ!?」


ソリテールは墜落した衝撃しょうげきで気をうしなっていた。


だが、無慈悲むじひにも光が彼女たちを消そうとそそぐ。


ビクニがソリテールをかなおうとしたとき、倒れていたググが体を起こして彼女たちのたてとなった。


光に貫かれたググは、ドタンと巨大な音を立てて倒れると、ビクニのよく知っている手乗てのりサイズの大きさへともどる。


ビクニはその小さな体をき上げて声をかけると、ググはキューキューうめきながら満足まんぞくそうにき、そのまま動かなくなってしまった。


「ググ……ググ……? イヤだ! 死なないでッ!? 返事をしてよぉぉぉッ!」


ググの体を抱きながら叫ぶビクニへ――。


光はまだまだ降り注ぐ。


「バカ野郎ッ! じっとしてんじゃねえ!」


そこへ高速こうそくで飛びんできたソニックよってビクニは助けられたが、彼は全身ぜんしんを光に貫かれ、ググと同じようにその場に倒れる。


ビクニはググを抱いたままソニックにると、ただ泣き叫んだ。


それは彼女がまだ十代の子供だということがわかるものだった。


ソニックの体にすがりつきながら、何もすることなくちからなくなみだながすだけ。


「もう……終わりなのです……」


立ち尽くしていたリムが呟く。


そして、振り注ぐ光がリムへ向かっていたとき、そこへべつ閃光せんこうが飛んできて彼女をまもった。


その閃光は、リムのわざ――武道家ぶどうかの里の秘儀ひぎであるオーラを使用する波動はどうだった。


「父様ッ!?」


そこにはリムの父親であるエン·チャイグリッシュが立っていた。


彼の後ろには武道家の里の面々めんめんもいる。


「ここまでよくやってくれたな、自慢じまんむすめよ。あとはわららにまかせろ。武道家の里の者すべてに告ぐッ! ここから私についてくる者はいのちてる覚悟かくごを持てッ!」


告げられた武道家たち全員が、右のこぶしを左手でつかんでむねる。


「我らが命ッ! すでに里長さとおさエン·チャイグリッシュのものでございますッ!」


――と、一斉いっせいに声をそろえて叫んだ。


「これはうちらも負けてられないっすね」


「ああその通りだよ。イルソーレとラルーナは怪我人けがにんたちを誘導ゆうどうたのむ。 動ける者は動けない者を助けてやってほしい。それ以外は私に続いてくれッ!」


ラヴィとルバートも宝石ほうせきからもともどり、イルソーレとラルーナへ指示しじを出し、まだ戦える者をひきいて女神から攻撃から皆を守っていた。


そこへさらに――。


怪我をして意識を失っていたライト王が、数少ない兵をを率いて現れた。


「全軍ッ! 女神の攻撃から皆を守れッ!」


片腕かたうでで馬の手綱たづなを引き、さらに器用きように剣をかたげて声を張り上げている。


「ライトおじいちゃんッ!?」


「おおッリンリ! 元に戻ったのだな!」


空中にいたリンリがライト王へとると、彼は年甲斐としがいもなく涙を流しながら彼女を抱きしめた。


それを見ていたライト王国の兵や宮廷魔術師きゅうていまじゅつしたちも、リンリが戻ったのがうれしいようで、皆笑いながら泣いている。


「ねえ、お爺ちゃん。すっごく嬉しいんだけど、今はそんなことしている場合じゃないんだよ」


「そうだな。よし、皆の者ッ! 女神の手から我々の元に聖騎士せいきしリンリが戻ったぞ! したがってこの戦いの後はかならず全員生還せいかんし、国をあげての祝祭しゅくさいおこなうッ! 」


ライト王の声にすべての兵、宮廷魔術師が声を張り上げて返す。


王だけでなく彼らは全員がリンリのことを信じていたのだろう。


その張り上げた声は、彼女が元に戻ったことの歓喜かんきの声でもあった。


「みんな……ありがとね……」


リンリはその光景こうけいを見て、涙を流しながら笑みを浮かべるのであった。

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