イントロバートガール·シヴァルリィ~無気力少女の異世界冒険記

コラム

第二百三話 少女の声

ソニックが女神へ魔力をはなつと、そこへリンリも彼に続いて手からひかり発射はっしゃ


吸血鬼族きゅうけつきぞくやみちから聖騎士せいきしの光の力が女神へとおそかる。


だが、女神のまわりからあらわれた魔法陣まほうじん――障壁しょうへきとなって二人の攻撃こうげきはじく。


「ほらほら、わざわざあなたたちの属性ぞくせい解除かいじょしてあげているのよ。この程度ていど防御ぼうぎょ魔法くらい破壊はかいしてみせなさい」


女神はその名のとおかみである。


世界を創造そうぞうした彼女にとって、火、水、風、土――さらに光も闇もすべて属性といえる。


しかし、受肉じゅにくしたことで、手に入れた肉体にくたいを楽しむためか。


今の女神にはどんな攻撃でもつうじるようになっていた。


ソニックはそれを馬鹿ばかにしていると思いながらも、この機会きかいのがしてたまるかとリョウタの考えた作戦のため、攻撃を続けていた。


リンリのほうは属性のことなど理解してはいないし、リョウタの作戦のこともわかっていなかったが、とりあえずみなで女神を動けなくすればいいと思い、行動こうげきしている。


「ならばこれならどうです! はあぁぁぁッ!」


リムがいつのにか女神のふところへと飛びんでいた。


女神のまわりをまも無数むすうの聖剣をはじきながら、彼女の体へこぶしたたむ。


体内に流れるオーラとワルキューレ――竜人族りゅうじんぞくの魔力が合わさった攻撃。


その拳は女神の魔法陣の障壁をつらぬいたが――。


合格ごうかくね。でも、それだけじゃ神にはとどかない」


女神のりをらい、地上ちじょうへとたたき落とされてしまう。


「リムリムッ!?」


リンリが心配しんぱいそうにさけぶ。


その一瞬いっしゅんのよそ見のあいだに、女神はリンリの懐へと入った。


女神のほそき通ったうでがリンリの身体にめり込む。


「さすが私のえらんだ聖騎士。丈夫じょうぶにできてるわね」


リンリの身体を拳で貫けなかったことをうれしそうに言った女神は、うめくリンリを地面へと蹴り飛ばす。


そしてリンリは、先ほどのリムと同じように地上へと叩きつけられてしまった。


見様見真似みようみまねでやってみたけど。私って体術たいじゅつもできちゃうのね」


笑みをかべながら体をらす女神。


ソニックはそんな彼女に向かって突進とっしんしていく。


「ファストドライブッ!」


速度そくどをあげる魔法をとなえ、そのまま先ほどのリム、リンリと同じ目にわそうと拳をり上げた。


高速こうそくで動く夜の吸血鬼のスピードは誰にもえられない。


たとえそれが神であってもだ。


ソニックはき父ラヴブラッド王の言葉を思い出していた。


そして、このままスピードで翻弄ほんろうしてやると考えたが――。


すごいのはたしかだけど。速いだけじゃ私にとどかないのよ」


ソニックの動きを先読みした女神によって、地上へと蹴り飛ばされる。


女神の圧倒的あっとうてきな力を見て、リョウタとレヴィは青白い顔をしていた。


「リョウタッ! このままじゃみんながやられてしまうぞッ!?」


レヴィが辛抱しんぼうできずに声をあらげる。


だが、リョウタは動くなと返事する。


このままレヴィが飛び込んでも意味はない。


リム、リンリ、ソニックと同じように――いや、三人より簡単にやられるだけだと言う。


「俺たちが今できることは女神のすきをつくことだけだ。ここでお前が出て行ってやられたら作戦の意味がなくなる」


「リョウタ……。わかったよ……」


待つしかない。


三人がチャンスを作ってくれるのを信じるしかない。


リョウタはくるしそうにレヴィへそう言うのだった。


――そのころ


意識いしきうしなったままのビクニはググと共に、まだ地下の神殿しんでんにいた。


ググは彼女の顔を見ながら、ただかなしそうにいている。


そして、天井てんじょうに開いた大穴から空を見上げてまた鳴く。


女神と戦いに行ったソニックたちが心配なのだろう。


その鳴き声からはググの気持ちがあらわれていた。


そのとき――。


ビクニの身体が光りかがやき始めた。


ググは彼女の身体の周りであわてだす。


すると、その光の中からおさない声――。


聞きおぼえのある少女の声が聞こえてきた。


「お姉さん……ビクニお姉さん……」

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