イントロバートガール·シヴァルリィ~無気力少女の異世界冒険記

コラム

第百九十話 ルバートの騎士道

女神の話はこうだった。


先ほどラヴィ、イルソーレ、ラルーナの三人に切りかれ――。


もしや神である自分とまともにやりあえる相手がいるのかもしれない。


それならば余興よきょうの一つとして、自分と戦うチャンスをやろうと言うのだ。


「それよりも何故みな宝石ほうせきと変わったのだ!?」


ルバートが頭上ずじょうにいる女神へ怒鳴どなたずねた。


すでに彼のそばいるラヴィ、イルソーレ、ラルーナ以外いがい――。


戦場せんじょうにいたすべての者が宝石へと変わってしまっていた。


訊ねられた女神は、実に不可解ふかかいそうな顔をしていた。


ルバートに向かって、そんなこともわからないのかと言いたそうだ。


「だって、あきらかにちからのない者と戦っても時間の無駄むだでしょう?」


女神は大きくためいきをつくと、うんざりした顔をして説明せつめいを始めた。


となえた魔法は、その者の武力と魔力をはかるためのものである。


地面じめんからルバートたちをおおっている魔法陣は、女神と戦う資格しかくがないと判断はんだんされた者を宝石へと変えるための結界けっかい


そしてこの結界内にいる者がもう女神と戦えないと判断されると、魔法陣によってその者も宝石へと姿が変わる仕組しくみなのだと言う。


だが、即死そくし一瞬いっしゅん消滅しょうめつされた者は、宝石へと変わることなく死ぬとも。


「あとついでに言うとね。その宝石はどんな鉱物こうぶつよりもかたいから、武器で攻撃しようが魔法を使おうがダメージを受けることはないわ。よろこんで、私からのせめてもの慈悲じひよ」


「そうか……。なら、宝石にされた者が死ぬことはないんだな」


「ええ、少なくと私が世界をほろぼすまではね」


ルバートは女神の言葉を聞くと、突然ラヴィのくびに向かって手刀しゅとうり落とす。


ラヴィは一体何が起きたのかわからないまま意識いしきうしない、ルバートの腕の中でその身を宝石へと変えた。


「なにやってんだよ兄貴あにき!?」


「そうだよ! ラヴィ姉さんに手を出すなんて……ッ!? もしかして兄貴は……ッ!」


大声をあげるイルソーレに続いてラルーナもさけんだが、彼女はルバート何故ラヴィを気絶きぜつされたのかを理解りかいした。


ルバートが、もうこれ以上彼女に傷ついてもらいたくなかったのだいうことを。


ラヴィは先ほどまでたった一人で灰色はいいろの軍を相手にしていたのだ。


彼女がいくら強いとはいっても体はもう限界げんかいに近いはず。


それによわっているならふとした瞬間に体勢たいせいくずれ、そのすきかれて即死する可能性かのうせい確実かくじつに上がる。


ならばたとえきらわれようとも、彼女の安全を第一に考える。


それがルバートの考えだった。


ラルーナはルバートそうなのだろうと訊ねた。


イルソーレは納得なっとくいっていなさそうだったが、その内心ないしんで実にルバートらしいと思っていた。


訊ねられたルバートは何も言わずに、こしびた剣をく。


先ほど、女神を前にして恐怖を感じていた人物とは同じとは思えないほどの剣気けんきはなちだす。


「彼女……ラヴィをまもる……。それが私の騎士道きしどうだ」


そして剣を前へとき出し、女神へと向ける。


「なら、その道に俺らもお供させてもらいます!」


「あたしらのことは気絶させないでくださいよ!」


女神へと向かい合ったルバートの横に――。


イルソーレとラルーナもならび立った。

「イントロバートガール·シヴァルリィ~無気力少女の異世界冒険記」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く