イントロバートガール·シヴァルリィ~無気力少女の異世界冒険記

コラム

第百八十六話 降臨

――外にいるラヴィたちが灰色はいいろの大軍を相手にし、リムが戦乙女いくさおとめワルキューレと戦っているあいだ――。


ソニックはリンリへのうらみをて、彼女を正気にもどすために、状態異常じょうたいいじょう回復かいふくさせる魔法をかけていた。


羽交はがめにしたままリンリの身体へ、そのあふれる魔力をそそぐ。


リカバリーライトのひかりの中――。


彼女のうつろだった表情ひょうじょ次第しだい変化へんかしていく。


だが、魔法をとなえるのに集中しゅうちゅうぎていたソニックは、そのままリンリと共に神殿しんでんはしらへとんでしまった。


「くッ!? ドジったな」


すぐに起き上がったソニックはそばたおれているリンリの姿すがたを見た。


どうやら彼女は、はしらにぶつかった衝撃しょうげきで気をうしなっているようだった。


倒れているリンリからはもう女神のちからは感じない。


魔法は成功せいこうしたのだ。


後は女神の復活ふっかつを止めてビクニとググを連れて帰るだけ。


ソニックがそう安堵あんどしていると――。


神殿や大地が大きくれ始めていた。


ソニックはあわてて祭壇さいだん――噴水ふんすいのほうへと目を向ける。


そこには、先ほど噴水のまわりを回転かいてんしていた聖剣せいけん暗黒剣あんこくけんかさなり合って、神々こうごうしい光をはなっていた。


いや予感よかんがしたソニックは、コウモリのつばさひろげ、その重なり合った剣を破壊はかいしようと飛びんでいく。


《……もうおそいわ》


どこからともなく女性の声が聞こえる。


だがソニックは、そんな声など無視むしして突っ込んでいった。


その瞬間しゅんかん――。


神々しくかがやいていた二本剣が、人型ひとがたへと姿すがたを変えていき、ソニックの体をき飛ばした。


「ああ……私の身体……。この時をどれだけ待ちのぞんだことか……」


人型から放たれていた光が止むと、そこには女性の姿があらわれた。


その容姿ようし全裸ぜんらに近い外見がいけんをしており、体にまとっているのは、衣服いふくというよりは光や水のような実体じったい不確ふたしかなものに見える。


さらに、どの種族しゅぞくでさえひれさずにはいられぬだろう美貌びぼう


その顔立かおだちは、無垢むくな少女のようであり、妖艶ようえん洗練せんれんされた大人の女性のようでもある。


「ああ……これが空気……水……大地なのね……」


聖剣と暗黒剣から現れた女性は、その両腕りょううでで自分をきしめながら、うっとりして世界を感じているようだった。


もだえるような仕草しぐさから見えるその長くしなやかなあし


両腕につぶされ、窮屈きゅうくつそうにしているゆたかなむね


女性でさえ見入ってしまうほどの上半身じょうはんしんから半身にかけての曲線美きょくせんび


そのすべてが、この世のものとは思えぬほどのうつくしさだった。


「くッ!? に合わなかったのか……」


ソニックが苦悶くもん表情ひょうじょううめく。


そう――。


雨野あめの·比丘尼びくに晴巻はれまき·倫理りんりをこの世界へと召喚しょうかんするようにめいじ――。


ビクニを暗黒騎士、リンリを聖騎士として力をあたえ――。


精霊せいれい幻獣げんじゅう――さらには大賢者だいけんじゃメルヘンや戦乙女いくさおとめワルキューレを使役しえきしていた張本人ちょうほんにん――。


女神がついに復活をたしてしまったのだ。


「早くほかのところも見たいわ」


女神はそういうと、狼狽うろたえるソニックなど気にせずに、天井てんじょう見上みあげていた。


そして、彼女が左手をかざすと光が放たれ、今いる地下ちかの天井から外まで続く大きな穴ができあがる。


「おい!? 待ちやがれッ!」


ソニックはふるえる体を意思いしの力で押さえ付けて叫んだ。


だが、女神には彼の言葉など耳に入ってはおらず、開けた穴から地上へと浮かび上がっていく。


飛びかかろうとしたソニックだったが、女神の圧倒的あっとうてきな力の前に、その場を動くことすらできずにいた。

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