イントロバートガール·シヴァルリィ~無気力少女の異世界冒険記

コラム

第百八十二話 人間の限界

リムはライト王国での魔法修行しゅぎょう甲斐かいもあり、ビクニたちと出会ったころよりは魔力が上がっていた。


だが、それでも王国の宮廷魔術師きゅうていまじゅつしにもおよばないひど微弱びじゃくなものだ。


武術ぶじゅつ才能さいのうならばあまるほどある彼女だが、魔術の才能はないにひとしかった。


だが、おさない頃から大魔導士だいまどうしあこがれる彼女は、それでもあきらめなかった。


父や里の者の目をぬすんでは一人努力どりょくを続けていた。


その結果けっか――。


リムは賢者けんじゃしかなしえない、魔法を同時どうじとなええるという高等技術こうとうぎじゅつを身に付ける。


さらに攻撃魔法も回復かいふく補助系ほじょけいの魔法も使いこなす。


憧れだけではなく、両親りょうしん教育きょういくもあったのだろう。


リムは誰よりも努力家どりょくかだった。


だが、それでも――。


ライト王国で一から魔法をまなび直しても――。


一日に五回しか魔法を使えない魔力量まりょくりょうであることに変わりはない。


そして、その効果こうか威力いりょくも常人が唱える魔法よりもひくい。


「その程度ていどの魔力で大魔導士を名乗なのるのか? まったく笑わせる。笑わせてくれるな、リム·チャイグリッシュ!」


ワルキューレはふたたほのおいかづちの同時攻撃を開始かいしした。


けようとけ回るリムだったが、先ほどと同じく逃げきれず。


再び炎にらえられてしまう。


「ブリザードブレス!」


リムはさっきと同じようにこおり魔法で相殺そうさい


だが、それは当然ワルキューレに読まれていた行動こうどうだった。


ワルキューレは一瞬いっしゅん間合まあいをめ、聖剣せいけん――“女神の慈悲じひ”でリムへとりかかる。


その動きに対応たいおうできなかったリムは、剣身けんしんにびっしりと文字もじが書き込まれているによってその体を切りかれる。


リムは苦悶くもん表情ひょうじょうかべながらも、素早すばや後方回転こうほうかいてんをして距離きょりを取った。


しかし、ワルキューレの猛攻もうこうは止まらない。


下がれば炎と稲妻いなづまおそかり、近距離きんきょりではそれらを避けた瞬間しゅんかんを狙われる。


何度なんどもリムの体を斬ったワルキューレは、致命傷ちめいしょうい続けているはずの彼女へいかける。


「一つ聞かせろ。貴様きさま……本当に人間か?」


ワルキューレは、いくらダメージをあたえても動き続けるリムのことを不可解ふかかいを思っていた。


人間は全種族しゅぞくの中でも、その耐久力たいきゅうりょく最弱さいじゃく


ましてやこんな体の小さな少女が、どうして深手ふかでを受け続けて動けるのか?


面白おもしくないといった顔をするワルキューレ。


だがそのなぞは、右手できずを押さえている彼女の姿すがたを見てけた。


「なるほどな。その不死身ふじみぶりは、攻撃を受けながらも回復魔法ヒールを自分にかけ続けていたからか」


謎が解けたワルキューレはクスクスと笑うと、再びリムにたずねる。


「だが、それでもどこまで持つかな? そろそろ貴様の魔力量もそこをつくのだろう?」


気付かれている。


実際にリムが魔法を唱えることのできる回数は、あと一度だけだった。


しかしたった一度では炎を相殺できてもそこで魔力がつき、もう回復魔法で傷をいやすことはできなくなる。


「やはり図星ずぼしか? 所詮しょせんは人間。いくら強くともそこが限界げんかいなのだ。女神様の使いである私に勝てるはずがない」


リムの表情からさっしたワルキューレは、うれしそうに微笑ほほえんでいる。


もう戦いの終わりが見えているのだ。


だが、それでもリムは考える。


どうする?


どうすればこの状況じょうきょうを変えられる?


――と、彼女はあきらめずに頭を回転させ続けていた。

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