イントロバートガール·シヴァルリィ~無気力少女の異世界冒険記

コラム

第百五十話 属性相性

ビクニの血を飲んだソニック。


すると、目の前にっている大聖堂だいせいどうふるえ、おまけに大地だいちまでれ始めた。


それは、彼がすさまじい魔力まりょくを持っている証拠しょうこだ。


前からよく「本来ほんらいの魔力が……」とかよく言っていたもんね。


「どういうつもりで俺の血を飲ませたのかわからねえが。後悔こうかいするなよ」


そして、少年の姿すがたをしていたソニックの手足てあしび始めて、の高い青年せいねんの姿へと変わった。


ついでにその顔まで大人おうじびた感じになってる。


前のまだかわいい感じのソニックよりも、今のほうが王子さまっぽい。


ビクニはどっちのソニックが好きになるかな?


――と、こんなときにふざけたことを考えているぼくの前で、ワルキューレの表情ひょうじょう真剣しんけんなものへと変わっていく。


「ふむ。想像そうぞう以上の魔力まりょくだ。そうこなくては」


ワルキューレがそう言うと、彼女がかぶっていたかぶと装飾そうしょく羽根はねが光りかがやいた。


すると、羽根が幾重いくじゅうにもかさなった文字のようなものとなって、ワルキューレがにぎっていた剣の一体化いったいかしていく。


そして、シンプルなロングソードだった剣が、その剣身けんしんにびっしりと文字が書き込まれている状態じょうたいへと変わった。


ビクニのうでに付いている魔道具まどうぐ――。


暗黒あんこく剣へと変化へんかするものと同じ、女神からさずけられた剣――“女神の慈悲じひ”とかいうやつだ。


「さあ吸血鬼きゅうけつき。さっさとかかってこい。女神さまの慈悲をお前に……今度はやすらかにねむらせてやるぞ」


ワルキューレからもソニックと同じくらいの魔力が溢れ出て、周囲しゅういの空気がさらに震えた。


でも、ソニックは一体いったいどうするつもりなんだろう?


元々もともとはワルキューレとの一騎打いっきうちを受けると見せかけて、ぼくとビクニをかかえて逃げるつもりだったんだけど。


そのことはすでに気付かれていて、もしぼくらが逃げたらワルキューレの後ろにいる大勢おおぜい衛兵えいへいたちがおそいかかって来てしまう。


「慈悲なんていらねぇッ! 俺はてめえをぶっ殺してビクニあいつたたこすだけだッ!」


すさまじい魔力をまとったソニックが飛び込んでいく。


ワルキューレはそれに対し、剣を振りあげて下ろした。


たがいの一撃いちげきがぶつかり合う。


周囲にソニックの闇属性やみぞくせいの魔力と、ワルキューレのせい属性の魔力がほとばしった。


ぼくが感じるに、ソニック、ワルキューレの魔力は同じくらい。


だけど、それでも決定的けっていてき問題もんだいが――。


「ぐわぁぁぁッ!」


ほとばしる二つの相反あいはんする魔力の中から、ソニックが吹き飛ばされてきた。


そうなんだよ……。


ビクニのときと同じだ。


吸血鬼族のソニックや暗黒騎士あんこくきしであるビクニにとって、戦乙女いくさおとめワルキューレの聖なるちから天敵てんてきなんだよ。


いくら同じくらいの強さでも、戦いはその人の属性で決まることが多い典型的てんけいてきれいが、ぼくの目の前でふたたり返されていた。


「どうしたのだ吸血鬼? いくら血を飲んでいようと、やはり朝では力が出ぬか?」


ワルキューレは聖なる魔力を込めた剣を振り落としながら、ソニックをめていく。


それにしてもお互いの属性相性あいしょう問題もんだいだってわかっているくせに……。


わざわざ朝がどうとか言うなんて……どれだけ性格せいかくの悪い人なんだよ!


だけど、ソニックは頭がいいんだ。


きっとこうなることはわかっていたはずだよ


「ああ。てめえの言うとおりだよ。吸血鬼が朝に頑張がんばるもんじゃねえな」


皮肉ひにくを言うワルキューレに向かって、ソニックは軽口かるくちを叩いてみせた。


ほら、やっぱりソニックにはまだ余裕よゆうがあるよ。


これから彼の奇跡きせき大逆転劇だいぎゃくてんげきが始まるんだ。


ソニックはワルキューレに返事をした後、ぼくとビクニのいるところまで後退こうたいした。


「ググ……わりぃな……」


そして、背を向けたままそうつぶやいた。

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