イントロバートガール·シヴァルリィ~無気力少女の異世界冒険記

コラム

第百三十六話 喧嘩中の二人

ソニックだ!


ソニックが助けに来てくれた!
 

ぼくがうれしさのあまりはしゃいできつくと、ソニックは苦笑にがわらいしていた。


そして彼は、そのままぼくのことを自分のあたまの上に乗せる。


ふぅ、やっぱりここが一番おちつくなぁ。


よく見ると、ソニックのお父さんの部下ぶかだったおじいちゃん――ヴァイブレもついてきていた。


「ソニック王子。外のほうは片付かたづけました」


どうやらソニックとヴァイブレは、ぼくらをここまで連れてきた衛兵えいへいたちをすべてたおしちゃったみたいだ。


「悪いがググ。さっきも言ったが、かなりの魔力まりょくしぼり取らせてもらう」


ワルキューレの姿すがたを見たソニックは、彼女の持つちから理解りかいしたのか、いきなり全開ぜんかいでいくつもりだ。


ぼくが鳴いて返事をすると、体内にあった魔力がソニックの体へとうつっていく。


吸血鬼族きゅうけつきぞく得意技とくいわざ、吸血の魔法バージョンともいうべき魔力吸収きゅうしゅう


これをやられると後でヘトヘトになっちゃうんだけど。


ぼくはビクニをまもるためならなんだってやるよ。


「ふん。どうやら貴様きさまちぎり合った相手が来たようだぞ」


「えッ!? ソニックがッ!?」


ワルキューレとビクニもおたがいの剣をぶつけ合いながら、こちらの様子ようすに気が付いたみたいだ。


ワルキューレはビクニを強引ごういん後退こうたいさせると、ソニックとぼく、そしてヴァイブレおじいちゃんのほうを見た。


薄汚うすぎたない吸血鬼族がまだ二人ものこっていたのか。丁度ちょうどいい。ここで暗黒騎士あんこくきしとも始末しまつしてやる」


こちらはぼくも入れて三人と一匹。


たいするワルキューレは一人だけど、彼女は当たり前のように勝つ気だ。


だけど、そうはいかないぞ。


ビクニとソニック――それにぼくもいればどんな相手にだって負けないんだ。


「おい、下がってろビクニ。あとは俺がやる」


ソニックがぼくから吸収した魔力の制御せいぎょ完了かんりょうすると、ビクニに声をかけた。


でも、ビクニは何も答えない。


だまったまままたワルキューレに向かって行こうとする。


まだのソニックこと……おこっているんだ。


もうビクニったら、今は怒っている場合ばあいじゃないのに……。


みんなで力を合わせないと、目の前にいるワルキューレには勝てないよ。


「聞こえないのかビクニ!? 下がってろって言ってるだろう!」


「うるさいッ! ずっと人のことをだましていたくせに。今さら何しに来たのよ!」


「今はそんなこと言っている場合じゃないだろうが!」


「“そんなこと”って……もういい……。もういいから私の邪魔じゃまをしないで!」


ソニックはなんとかビクニに言い聞かせようとしたけど。


ビクニはソニックの言葉を聞いて、さらに苛立いらだっちゃってる。


ああっ!


一体どうすれば二人を仲直なかなおりさせることができるんだ!?


「ソニック王子! ワルキューレが来ますぞ!」


コウモリの羽根はねを広げ、ぼくを頭に乗せ、ビクニをかかえたまま高い天井てんじょうへと飛んで行くソニック。


ヴァイブレがさけんでくれたおかげで、ワルキューレの攻撃こうげきをなんとかけることができた。


だけど、二人は――。


「何するのよ! 早くはなしなさい!」


「バカッ!? あばれるんじゃねえ!」


空中でもまだ言いあらそっていた。


ぼくは必死ひっしに鳴いて止めようとしたけど。


二人とも全然聞いてくれない。


この状況じょうきょう駄々だだをこねるみたいに怒っているビクニは、たしかに悪いんだけど。


今まで信じてきたソニックに裏切うらぎられたと思っているから、それもしょうがないのかもしれない。


だけど……このままじゃワルキューレにやられちゃうよ。


「なんだ、仲間割なかまわれか? ふふ、無様ぶざまだな暗黒騎士あんこくきし。貴様には亜人あじんをたらし込むさいがあると思ったが、どうやらそんなこともないらしい」


ワルキューレは空中で揉め続けているビクニとソニックを見て、せせら笑っている。


それから彼女は持っていた武器――。


剣身けんしんにびっしりと文字が書き込まれている剣――女神の慈悲じひかかげた。


すると、剣から神々こうごうしくひか稲妻いなづはなたれ、空中にいたぼくらを打ち落とす。


せいなる雷光らいこうは暗黒騎士にも吸血鬼族にも有効ゆうこうだ」


このかみなり……。


ワルキューレの言うとおり、闇属性やみぞくせいのぼくらにはくるしい技だよ。


ビクニなんか空中から落ちたショックと今のダメージで気を失っちゃってるし、ソニックも立てるのがやっとって感じだ。


かく言うぼくも、もう一歩いっぽも動けない。


「さて、止めを刺すとしようか」


かといってワルキューレが、ぼくらが動けるようになるまで待ってくれるはずもなく、ゆっくりとこちらへと近づいて来るのだった。

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