イントロバートガール·シヴァルリィ~無気力少女の異世界冒険記

コラム

第百十五話 揺さぶり

ルバートをれて道をあるく。


前に中心街ちゅしんがいへ来たときはもう少しひるちかかったせいか、今さらだが少し肌寒はだざむく感じるあさの空気を感じた。


いや、そういえば昨日きのうよるにも来たんだったな。


ともかく空気がんでいた。


喧騒けんそうも人ゴミもない中心街の道はやけにひろく感じられる。


水路すいろはしがあるためせまいのはたしかなのだが、自分たち以外いがいは誰もいないというだけでここまでちがうものか。


何にしてもやはりしずかなほうがいい。


俺にとってこの国はにぎやかぎる。


ふとまわりを見ると、目の前にならんでいる石造いしづくりの商店しょうてんはどこも閉まっていた。 


そして、ひがしそらがやたらあかるい。


そこまで見て、ようやく今が早朝そうちょうなのだということに気がつく。


どうやら俺もググもあまり長くはねむっていなかったようだ。


一体いったいどこまで行くつもりなんだ? 誰かに聞かれたくない話をしたいのだろうがもうまわりに人はいないぞ」


うしろからついてきていたルバートが俺に向かってそう言った。


その口調くちょうからして、さすがに人のやつでも少しあきれているような言い方だった。


ルバートがそう思うのもしょうがないことだ。


いきなり話があると言われ、目的地もくてきちも聞かされずに歩かされているのだからな。


俺はルバートにを向けながらもう少しだとつたえると、少し歩く速度そくどをあげた。


そのとき――。


「はッ!?」


俺は立ち止まって、自分の背後はいごにいるルバートを見た。 


それは一瞬いっしゅんだけだが、背中せなかさるよう視線しせんを感じたからだ。


だが、俺がり向いてもルバートは、ただ不思議ふしぎそうな顔をしているだけだった。


そのときの奴の目は、俺の知っているルバートのおだややかな眼差まなざしだ。


俺の勘違かんちがいか?


さっきのはだおかされるような感覚かんかく


まるで生き物を玩具がんぐにでも見るのような、浮世離うきよばなれしている無遠慮むえんりょ過ぎる視線。


たとえ今のが勘違いだったとしても、このままルバートと二人で話をするのは危険きけんかもしれない。


「このへんにするか」


俺は人気ひとけのない路地裏ろじうらで立ち止まると、そこにあったたるの上にこしをかけた。


ルバートは立ったまま、両腕りょううでを組んで、俺が話し始めるのを待っている様子ようすだ。


さて、ここでルバートが昨夜さくや放火犯ほうかはんだった場合ばあい


俺がめれば、口封くちふうじにころされる可能性かのうせいは高い。


かといって、大勢おおぜいの前でルバートが犯人だとうたがったところで、本人ほんにん反応はんのうを見る前に邪魔じゃまされてしまいだ。


リスクは高いが、奴と二人っきりで話す方法ほうほうしかない。


残念ざんねんなことに今は朝。


この体で唯一ゆいいつとなえられる速度そくどを上げる魔法まほう――ファストドライブも使える状態じょうたいではないため、殺されそうになっても逃げるの不可能ふかのう


ならほかの方法――俺がコウモリのつばさ上空じょうくうへ飛んだら?


それも無理むり


ルバートの身体能力しんたいのうりょくはクラーケンとやりあったときに見た。


おそらく俺が動いた瞬間しゅんかんに翼をへしられるだろう。


本当にこまったもんだが、手がないわけじゃない。


そのために昨夜動いていたしな。


「おいおいソニック。いつになったら話を始めるんだい?」


いつまでもだまっている俺にしびれを切らしたルバートが、少し不機嫌ふきげんそうに言った。


こうやって見るとわかるが、この吟遊騎士ぎんゆうきしは思っていたよりもこらしょうがないようだ。


国のためにずっと我慢がまんしてきたような奴だが、性根しょうねでは待つのが苦手にがてなんだろうなと思った。


「お前はいそがしそうだから単刀直入たんとうちょくにゅうに訊くぜ」


「ああ。早くむと助かる」


やはりルバートの辛抱強しんぼうづよさは我慢がまんのようだな。


顔には出ていないが腕を組んだり、その口調からわかる。


「ルバート……昨日の放火はお前がやったんだろ?」


そう俺に言われたルバートは、表情ひょうじょう一つ変えなかった。


むしろ呆れて、何を言っているんだ? とでも顔に書いてあるようだった。


だが、奴のはなみょう瘴気しょうきさはしていた。

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