イントロバートガール·シヴァルリィ~無気力少女の異世界冒険記

コラム

第三十七話 反省よりも今は

コウモリのつばさひろげ、私をきかかえているソニックのかたにはググも乗っていた。


「キュウ!」


「ググも……来てくてたんだね」


突然あらわれたソニックを見て、ドリアードは顔をしかめる。


ソニックは空中で止まり、そんな樹木じゅもくからき出ているドリアードのことを見下ろしていた。


吸血鬼きゅうけつき族の少年よ。何故暗黒騎士あんこくきしを助けるのですか?」


触手しょくしゅのように動いていた無数のえだが止まり、ドリアードは表情を元の冷静れいせいなものにもどした。


ソニックは私をかかえたまま距離きょりを取り、ドリアードに向かってうすら笑いをかべる。


そんな彼を真似まねているのか、肩の乗っているググも笑っているようなき声を「キュキュ」っとあげた。


「さあね。お前にこたえてやる必要ひつようはないだろ?」


「そうですか。それはとても残念ざんねんです。このまま私の邪魔じゃあをするつもりなら、そこの暗黒騎士と幻獣げんじゅう共々ともどもあなたも私の体の一部にしてあげましょう」


ドリアードがそう言うと、再び触手のような無数の枝が動き始めた。


うねる無数の枝はすごく気持ち悪いけれども、そのスピードは速い。


私はまた捕まってしまうと思って、こわくて両目をつぶってしまっていた。


だけどソニックは、自分のスピードを上げる魔法ファストドライブをかけていたので、いくら枝がおそってきても簡単かんたんけていていく。


それに完全にしずんで今は夜だ。


いくら私を抱えていようが、夜のソニックは一味違ひとあじちがうう。


「ねえ、ソニック……」


「あん? なんだよこんなときに?」


「ソ、ソリテールが目の前で石に……」


言葉がまってうまく口から出ない。


私が昨日きのうの夜にちゃんとソニックの話を聞いていたら、ソリテールを助けることができたかもしれないと思うと……。


罪悪感ざいあくかんで心が押しつぶされそうになる。


「私が悪いんだ……」


「はあ?」


「私がソニックの話をちゃんと聞いていれば……」


泣きながら言う私に、ソニックはふんっとはなを鳴らした。


そして、私たちをつかまえようと向かってくる無数の枝から身をかわしていく。


「ビクニお前……本当に面倒めんどうくさい女だな」


私は別になぐさめの言葉がほしかったわけじゃないけど、この言い方には少し頭にきた。


それから泣き顔のまま私は、顔をあげてソニックをにらみつける。


すると彼も私を見つめ返し、私たちの目が合った。


「終わったことを気にするよりも、今お前は何をしたい!? 言えよビクニ!」


あらっぽくて乱暴らんぼうな言葉――。


だけど、私のことを考えてくれている言葉――。


ソニック……。


お城でも言ってくれたね。


お前を守ってやるって……。


お前を連れて行ってやるって……。


ソニックはいつも不機嫌ふきげんそうで怒っているみたいだけど……。


でも、そうやって私をはげましてくれるんだ。


「聞いているのかビクニ!? 早く言えぇぇぇっ!」


私がしたいこと……それは……。


「私……あの木の精霊せいれい――ドリアードをたおしたい!」


さっきの自分から、こんな声が出るとは思えないほど力強い声が出た。


「キュウ!」


そして、ググも私に合わせるように大きな鳴き声をあげた。


ソニックの言う通りだ。


今は泣いている場合じゃない。


こいつの体からソリテールを解放かいほうするんだ。


涙をぬぐって泣き止んだのを見たソニックが、ニコッと笑っていたのを私は見逃みのがさなかった。


「ソニック、力を貸して! 私に考えがある!」

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品