イントロバートガール·シヴァルリィ~無気力少女の異世界冒険記

コラム

第二十六話 愚者の大地

私はラビィ姉をかし、大慌おおあわてて大賢者メルヘンのいる部屋へと向かった。


そこにはライト王や兵士、そして宮廷魔術師きゅうていまじゅつしたちもいて、ベットの上ではくるしそうに横になっているメルヘンがいた。


「メルヘン! どうしたの!? 何があったのっ!? リンリは一緒じゃないのっ!?」


大声で取りみだしながらさけぶ私を、ライト王が落ち着くようと声をかけてきた。


体内にある魔力まりょくをほとんどうしなった状態じょうたいで帰ってきたメルヘンは、気を失う前にライト王へ伝言でんごんをしたら急にたおれちゃったみたい。


「メルヘンは私にこう言ったよ。リンリとははなばなれになってしまったと」


ライト王が聞いた話によると、リンリとメルヘンはモンスターがあば原因げんいんとなった精霊王せいれいおう浄化じょうかには成功せいこうしたのだけれども、その浄化後に突然光につつまれて、気がつけばメルヘンは一人飛ばされてしまったみたい。


それからリンリの元にもどろうとしたメルヘンだったのだけれども、浄化されたはずのモンスターがまた暴れ始め、いのちからがらなんとかライト王国まで帰ってきたのだと。


「えっ!? じゃあリンリは!? リンリはどうなっちゃったのっ!?」


「それはわしにも、そしておそらくメルヘンにもわからぬだろうな……」


わめく私へ、言いづらそうに――とてももうわけなさそうに返事をしたライト王。


そんな私たちを見た兵士も宮廷魔術師たちも、そしてラビィ姉も、みんな何も言えずにだまってしまっていた。


「ビ、ビクニ……」


気を失っていたメルヘンが、弱々よわよわしい声を出してベットから体をこした。


声をかけられた私は、彼に近寄ちかより、その手を取る。


「すまない……。リンリをまもってやれなくて……」


その言葉に私は首を横にった。


もちろんリンリのことは心配だけど、こうやってメルヘンが生きて帰って来てくれただけでもうれしかったからだ。


「大丈夫だよ。リンリはどんなピンチにおちいったって、きっとワンパンで……ワンパンで解決かいけつしちゃうから……」


私は、ボロボロなったメルヘンに負担ふたんをかけたくないから、無理してポジティブなことを言った。


本当は死んじゃっているかもしれないとか、今頃一人でひどい目にっているかもしれないと思っていたけど。


「ねえ、メルヘン。リンリは今どこにいるの?」


「私が飛ばされる前に彼女といたところは『愚者ぐしゃ大地だいち』と呼ばれる大陸たいりくなんだが、おそらくまだそこにいるはずだ。だが、あそこに一人ではいくらリンリといえども……」


「わかった……私……そこへ行く。リンリを助けに行く」


それを聞いたライト王、兵士、宮廷魔術師みんなが驚愕きょうがくの声をあげた。


そして、全員で必死ひっしになって私のことを止め始める。


『愚者の大地』とは、狂暴きょうぼうなモンスターが生息せいそくし、世界地図上でも空白――無人あつかいされている場所。


そこは、国を追われたおたずね者や、迫害はくがいを受けた異種いしゅ族や、善良ぜんりょうな世界に相容あいいれぬ魔族たちがらしているという。


各種族、魔族などの縄張なわばりがあるので完全な無法地帯むほうちたいではないみたいだけれども、とっても危険きけんなところみたい。


「ビクニよ。そんな危ないところへお前へ行かすわけにはいかぬ」


ライト王がふるえながら私に声をかけた。


心配してくれているのはうれしい……けど、今の私ならなんとかできるかも――とか思っている自分がいる。


だって、こないだあんな大きな幻獣げんじゅうバグを止めれたんだよ。


私だってリンリと同じ、女神様にえらばれた人間なんだ。


それに、いつも助けてもらってばかりだったから、こういうときこそ私がリンリを助けるんだ。


いくら止められても行くと言う私へ、ライト王は声まで震えさせて続ける。


「第一にリンリのいる場所への道を知るメルヘンがこの状態じょうたいでは……『愚者の大地』というのは、その正確せいかくな場所さえわかっておらんのだぞ」


「道なら俺が知ってる」


ライト王へ答えた人がいた。


出入り口のとびらから、ゆっくりと部屋の中へと入って来る人物――ソニックだ。


ソニックはかたにバグを乗せながら、相変わらず不機嫌ふきげんそうな顔をしていた。


だけどバグは、彼とは正反対にご機嫌な様子で「キュウキュウ」いている。


「ソニック、ホントなの!?」


「俺は元々その『愚者の大地』から来たんだ。そんなに行きたいんなら連れて行ってやるよ」


みんなが狼狽うろたえている中で私は、ソニックの言葉に大きくうなづいた。

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