イントロバートガール·シヴァルリィ~無気力少女の異世界冒険記

コラム

第二十五話 察することができる女

ソニックを見つけることができた私は、ラビィ姉と一緒に城へともどった。


正確せいかくには、私から逃げるソニックをラビィ姉がつかまえてくれたわけなのだけれども……まあ、結果けっかオーライということで。


それから、目をましたソニックをライト王の前へと連れて行った。


ライト王はソニックを犯人はんにんあつかいしたのことをあやまり、城の兵士やもちろんラビィ姉も彼に頭を下げた。


びのしるしにとライト王は、ソニックにいつまでもこの国――ライト王国にてくれと伝え、豪華ごうかな食事を用意してくれた。


それでも彼は不機嫌ふきげんなままだったけど。


食事は大広間でみんなで食べようとなったのだけれども、ソニックがそれを拒否きょひしたので、彼にあたえられた王宮おうきゅう内にある部屋にはこばれることとなった。


運ばれてきた食事は、私がいつも食べている野菜スープとパン、チーズだけではなく、なんと肉料理も出された。


このライト王国では、肉や魚は特別な日じゃないと食べないと前に聞いていたけど、出された料理を見れば、おじいちゃんもといライト王のソニックに対しての気持ちがよくわかる。


何の肉か運んでくれた女の人に訊いてみたら、ひつじぶたにわとりの三種り合わせみたい。


「うわぁ~それにしても美味おいしそうだね」


「ふん」


ソニックは「なんでお前がここにいるんだ?」と言いたそうな顔をしながら、出された食事を食べ始めた。


それをちゃんと確認かくにんした私も、早速さっそく目の前に出された料理に手をつける。


「いただきます! うん! これマジでうまいよ! いや~やっぱり肉だね。少し薄味うすあじだけど、とってもうま~い!」


お腹がっていた私は、まず肉料理をいきおいいよくがっついていたけど、ソニックはナイフとフォークで肉やパン、チーズを切り分け、丁寧ていねいに口へ運んでいた。


その姿は、なんかイイとこのおぼっちゃんって感じだ。


ひょっとしたらソニックって貴族出身きぞくしゅっしんとかなのかな。


たしかに吸血鬼きゅうけつきって、高貴こうきというか、他のモンスターとくらべるとお金持ちのイメージがあるもんね。


……もしかして、お家が没落ぼつらくしてしまい、それで食べていくためにぬすみを!?


「おい、なに人のことをじっと見てんだよ」


私に目を向け、不可解ふかかいな顔をしているソニック。


私は気がついてしまった。


さっしてしまった。


「……あなたって本当は苦労人くろうにんだったのね。私と同い年くらいなのに大変だったんだ」


「はあ? なに言ってんだお前?」


「もう大丈夫だから。ライト王のおかげでもう食べることにこまることはないから」


……うんうん。


言いたくないこと、知られたくないことは誰にだってあるよね。


ましてや、元上流階級じょうりゅうかいきゅうならプライドも高くて当然。


私だって、元の世界でリンリしか友達がいないとか、家が貧乏びんぼうだとか、体育の成績せいせきだけ極端きょくたんに悪いとか知られたくないもの。


それならば、ここで私がとるべき態度たいどは――。


「全部わかってるから。言いたくないことは言わなくていいよ。こう見えても私はデリカシーのけた行為こういには気を付けてるし、けして野暮やぼな女じゃないから」


「全部わかってるってお前……。なんか妄想もうそうっていうか、なにか一人で勘違かんちがいしてないか?」


……わかってる、わかってるよ。


両腕りょううでを組んでコクコクうなづく私を見たソニックはあきれている様子だったけど。


私は、そんな君の「何言ってんだお前?」というしんせまった演技えんぎも受け入れようではないか。


そんな私たちのそばで、小さな容器ようき入ったミルクをペロペロと美味しそうにめるバグがいた。


どうやらバグも、私と同じこと考えているにちがいない。


うんうん、バグも私と同じだ。


繊細せんさいな者には人のいたみがわかってしまうものなのだよ。


「くぅ~自分の才能さいのうこわいわ~」


「完全に自分の世界に入っていやがるな……。お前……友達いないだろ……」


そんな中で私たちが食事を続けていると、部屋にコンコンコンとノックの音が聞こえてきた。


「お~い、吸血鬼族の少年。ビクニはそこにいるっすか? 自分の部屋にいなかったんすよ」


声としゃべり方からするにラビィ姉だ。


ソニックがドア越しに私がいることを伝え、そしてラビィ姉へ部屋に入ってきていいと言った。


そしてラビィ姉が私を捜していた理由は――。


「やっぱりここにいたんすね、ビクニ」


「うん。だけど、一体どうしたの? ご飯ならここで食べてるからいらないよ」


「実は大賢者けんじゃメルヘン様がたった今王宮に戻られたっす」


リンリと一緒にたびへ出たメルヘン。


彼が帰ってきたことを伝えるためだった。

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