イントロバートガール·シヴァルリィ~無気力少女の異世界冒険記
第八話 世界は平和に
リンリがホーリー·ソードでバハムートを倒してから数ヶ月後――。
私はライト王国の城にある一室のベットの上にいた。
長い黒髪はだらしなさを強調するようにボサボサで、さらに元の世界で着ていた上下黒のスエット姿でだ。
私は特に何をするでもなく、ただ横になって猫のように丸まっていた。
「ちぃーす、ってビクニ、まだそんな格好をしてたんすか?」
今私の部屋に入ってきた女の人の名前はラビィ·コルダスト。
このライト王国のメイドの一人であり、私の身の回りの面倒をみてくれるお世話係だ。
いつも半目で何かとかったるそうにしているけど、元は凄腕の傭兵で武芸百般だとか。
彼女の武勇は他の国でも有名なようで、通称――暴力メイドと呼ばれ、超武闘派で通っているみたい。
ちなみに私は、彼女のことをラビィ姉って呼んでる。
喋り方とか態度を見て、その呼び方が合っていると感じたからだ。
「え~別にいいじゃん。どうせ今日も誰とも会わないし」
「うちと会ってんじゃないっすか」
「ラビィ姉はいいの」
私の態度を見て、ラビィ姉は大きくため息をついた。
何故こんなことになっているのかというと――。
リンリがバハムートを倒した後。
私たちは剣の扱いや魔法の使い方を、城にいる兵士や宮廷魔術師に教わることとなった。
だけど――。
「では、打ってきてください」
「は、はい。うおりゃ! って!? 重い、重すぎるよこの剣ッ!? うわあ~!」
剣を振れば、その重さで身動きが取れなくなった上に転んでしまう。
「では、手を翳し、的に向かって魔力を込めてみてください」
「は、はい。はぁぁぁ! うん!? やった出たよ!」
「うわぁ! 城壁に大きな穴がッ!」
魔法を使ってみれば、魔力のコントロールはできずにお城を穴を開けてしてしまう始末(その上、出せる魔法の属性はバラバラで、しかも出る日と出ない日がある)。
といった感じで、何もものにならなかった。
そんな私と違い、リンリはメキメキと実力をつけて、ついには大賢者メンヘルと共にモンスターたちが暴れる原因を突き止める冒険へといくことになった。
本当だったら私も一緒にいくはずだったのだけれども……。
「ビクニ。すぐに世界なんか平和にしてすぐに戻って来るからね」
ライト王国の宝物庫にあった純白の甲冑に身を包んだリンリ。
すぐすぐ言っていて頭悪そうだけど、もう誰がどう見ても聖騎士様だよ。
「気を付けてね、リンリ。死んじゃったらイヤだよ」
「大丈夫だよ、ビクニ。世界を救うなんてワンパンだよ、ワンパン」
そう、前と同じことを言いながら、何もない空中に向かってシュシュっとジャブを連打するリンリ。
おいおい、あんたは聖騎士なんだから剣と魔法を使わないとダメだろう、と言いたくなったがやめておいた。
そして、私はメンヘルにもお別れの挨拶をした。
「メンヘル。あの……リンリのことをお願いします」
「任せてくれ。この僕の命に代えてもこの聖騎士少女は守ってみせるよ」
「あと、リンリの貞操観念が低いからって、変なことしたり見せたり考えたりしたら、必ずあなたを呪い殺します」
「信用ゼロだねぇ……」
それから二人は、リンリが倒したことで正気に戻ったバハムートに乗り、世界を救う旅へと飛び立ってしまった。
その間の数ヶ月――。
私は元の世界と同じく部屋に引きこもり、ライト王に頼んで作ってもらったオセロの台と表と裏が白と黒の小さな石をもらって、ひたすらひとりオセロをする日々を送った(いや、寝ていることのほうが多いか)。
そして、今や世界は平和になった。
モンスターが暴れることがなくなり、他の種族も再び他の国と友好関係を持つようになった。
そう――。
リンリとメンヘルが世界を救ってくれたんだ。
「たまには散歩でも行ったらどうっすか? 今日は陽射しが気持ちいいっすよ」
やる気のない声で私に言うラビィ姉。
積極的に何かしてくるわけではないのだけれども、けしてほっとく感じでもない。
こういう暑苦しくない距離感。
それが、私が彼女を気に入っている理由だ。
どうも他の人はお節介というか、口うるさいか、放置するかの二択だから――。
だから、私はラヴィが好き。
まあ、ライト王国の人はみんな良い人なんだけどね。
どうも私にとって、それが居心地が悪かったりする。
この性格はいつか直したけれども。
居心地が悪いとか生理的に不快なことって、自分でどうにかできることじゃないねぇ。
「え~別にいいって。それよりも今日の晩ゴハンは何?」
「さっき朝と昼の分を食べたばかりなのにもう夜メシの話っすか? まったくリンリは食うことにかけちゃ貪欲っすね」
呆れているラビィ姉の横で、ひとりオセロを続ける私。
こうして私――ビクニの異世界引きこもりライフは続いて行くはずだったのだけれども……。
私はライト王国の城にある一室のベットの上にいた。
長い黒髪はだらしなさを強調するようにボサボサで、さらに元の世界で着ていた上下黒のスエット姿でだ。
私は特に何をするでもなく、ただ横になって猫のように丸まっていた。
「ちぃーす、ってビクニ、まだそんな格好をしてたんすか?」
今私の部屋に入ってきた女の人の名前はラビィ·コルダスト。
このライト王国のメイドの一人であり、私の身の回りの面倒をみてくれるお世話係だ。
いつも半目で何かとかったるそうにしているけど、元は凄腕の傭兵で武芸百般だとか。
彼女の武勇は他の国でも有名なようで、通称――暴力メイドと呼ばれ、超武闘派で通っているみたい。
ちなみに私は、彼女のことをラビィ姉って呼んでる。
喋り方とか態度を見て、その呼び方が合っていると感じたからだ。
「え~別にいいじゃん。どうせ今日も誰とも会わないし」
「うちと会ってんじゃないっすか」
「ラビィ姉はいいの」
私の態度を見て、ラビィ姉は大きくため息をついた。
何故こんなことになっているのかというと――。
リンリがバハムートを倒した後。
私たちは剣の扱いや魔法の使い方を、城にいる兵士や宮廷魔術師に教わることとなった。
だけど――。
「では、打ってきてください」
「は、はい。うおりゃ! って!? 重い、重すぎるよこの剣ッ!? うわあ~!」
剣を振れば、その重さで身動きが取れなくなった上に転んでしまう。
「では、手を翳し、的に向かって魔力を込めてみてください」
「は、はい。はぁぁぁ! うん!? やった出たよ!」
「うわぁ! 城壁に大きな穴がッ!」
魔法を使ってみれば、魔力のコントロールはできずにお城を穴を開けてしてしまう始末(その上、出せる魔法の属性はバラバラで、しかも出る日と出ない日がある)。
といった感じで、何もものにならなかった。
そんな私と違い、リンリはメキメキと実力をつけて、ついには大賢者メンヘルと共にモンスターたちが暴れる原因を突き止める冒険へといくことになった。
本当だったら私も一緒にいくはずだったのだけれども……。
「ビクニ。すぐに世界なんか平和にしてすぐに戻って来るからね」
ライト王国の宝物庫にあった純白の甲冑に身を包んだリンリ。
すぐすぐ言っていて頭悪そうだけど、もう誰がどう見ても聖騎士様だよ。
「気を付けてね、リンリ。死んじゃったらイヤだよ」
「大丈夫だよ、ビクニ。世界を救うなんてワンパンだよ、ワンパン」
そう、前と同じことを言いながら、何もない空中に向かってシュシュっとジャブを連打するリンリ。
おいおい、あんたは聖騎士なんだから剣と魔法を使わないとダメだろう、と言いたくなったがやめておいた。
そして、私はメンヘルにもお別れの挨拶をした。
「メンヘル。あの……リンリのことをお願いします」
「任せてくれ。この僕の命に代えてもこの聖騎士少女は守ってみせるよ」
「あと、リンリの貞操観念が低いからって、変なことしたり見せたり考えたりしたら、必ずあなたを呪い殺します」
「信用ゼロだねぇ……」
それから二人は、リンリが倒したことで正気に戻ったバハムートに乗り、世界を救う旅へと飛び立ってしまった。
その間の数ヶ月――。
私は元の世界と同じく部屋に引きこもり、ライト王に頼んで作ってもらったオセロの台と表と裏が白と黒の小さな石をもらって、ひたすらひとりオセロをする日々を送った(いや、寝ていることのほうが多いか)。
そして、今や世界は平和になった。
モンスターが暴れることがなくなり、他の種族も再び他の国と友好関係を持つようになった。
そう――。
リンリとメンヘルが世界を救ってくれたんだ。
「たまには散歩でも行ったらどうっすか? 今日は陽射しが気持ちいいっすよ」
やる気のない声で私に言うラビィ姉。
積極的に何かしてくるわけではないのだけれども、けしてほっとく感じでもない。
こういう暑苦しくない距離感。
それが、私が彼女を気に入っている理由だ。
どうも他の人はお節介というか、口うるさいか、放置するかの二択だから――。
だから、私はラヴィが好き。
まあ、ライト王国の人はみんな良い人なんだけどね。
どうも私にとって、それが居心地が悪かったりする。
この性格はいつか直したけれども。
居心地が悪いとか生理的に不快なことって、自分でどうにかできることじゃないねぇ。
「え~別にいいって。それよりも今日の晩ゴハンは何?」
「さっき朝と昼の分を食べたばかりなのにもう夜メシの話っすか? まったくリンリは食うことにかけちゃ貪欲っすね」
呆れているラビィ姉の横で、ひとりオセロを続ける私。
こうして私――ビクニの異世界引きこもりライフは続いて行くはずだったのだけれども……。
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