孤高の冒険者~パーティーが組めないんじゃない、組まないんだ~

鈍行

理想の冒険者を目指して①

「次、1452番!」

「はい!」
返事をして、1人の金髪で長身の男が部屋へ入っていった。

「おい、あれってイェル・ヴァンじゃねぇか?」
「例のLv.3を1人で倒しちまったって噂の…」
「おいおいそんなやつ来るなんて聞いてねぇぞ俺」

会場がざわつき始めた。それもそのはず、ここでは今、冒険者(ハンター)育成機関入学試験が行われているのだが、これはふつうLv.1の魔物にすら手こずる程度の者が受ける試験だ。そこにLv.3という、普通冒険者ですらパーティーを組まないと倒せない程の魔物を1人で倒してしまうような奴が来たのだ。騒ぎにならないわけが無い。

「ありがとうございました!」
イェル・ヴァンと呼ばれていた男は部屋から出るなり余裕そうな笑みを浮かべながらこちらへやって来た。イェルは僕と幼なじみなのだ。
「よォ、キレル。悪ィが首席は俺がいただいたぜ。お前ェは2番手ってとこだろうな!」
ガハハハと大きく笑うイェルにそう言われ、僕は精一杯の愛想笑いで応える。
「ハハハ…僕なんか、この試験に合格さえすればいいかなって感じだよ。」
「何言ってんだよ!謙遜しやがって。お前の魔法の腕はここらじゃかなりの評判だぜ?その魔法がありゃあ合格なんぞ余裕余裕!ま、俺を越すぐらいの勢いで頑張れや。じゃねぇと張合いってもんがねぇからな!」
自信なさげな僕の背中をバシバシ叩いて、イェルは行ってしまった。

「次、1511番!」

「はい…」
イェルにああは言われたものの、目立つのが嫌いな僕は真ん中か、中の下くらいの成績で合格しようと目論んでいた。目指すのはあくまで合格であって、首席入学ではない。僕は小さく深呼吸して部屋に入った。

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