SEASON
第40話
「っと言われました」
「っと言われましたって言われてもね~」
菜穂の宿題を持ち帰った私とあんこはすぐにラインで先輩たちを部室に集めた。なぜかヤンキー座りのりかこがいきりながらこちらを睨む。
「難しい問題……分からないな」
雅はバットのグリップを入念に磨きながらささやいた。他の先輩たちも首を傾げて悩んでいる。
「やっぱりさ就活のためとか、自分のスキルアップのためとかそういえば先生は納得するのかもよ」
詩音の考案に一度は頷いたもののすぐさまりかこさんが却下する。
「なにも私は就職のためとかそんなことのために野球をやっているんじゃないわ」
「じゃあプン子はなんのために野球をやっているの?」
「それは……」
美雨の質問に言葉が詰まるりかこ。
「じゃあさ、蔵田先生がいやいやアイドルやってだ時のプロマイド持ってるから、それでつる?」
美雨が悪い顔になって言った。確かに女子プロ野球は一時期試合後の握手会とか、プロマイド配りとか頻繁にやっていた気がする。
「美雨あんた少し黙りなさい。ソヒィー、希はどうなのよ」
苦し紛れの飛び火にソヒィーさんは答える。
「ウ~ン、あらためてきかれるとなやむネ、デモ」
「でも?」
「ヤキュウタノシイネ!!」
ソヒィーの答えに私たちは不意を突かれて思わず笑う。「なによそれ」「答えになってないよ」そんな言葉と笑い声が部室に響き渡る。
「私はソヒィーちゃんの気持ちわかります。私も野球を実際にやるのがこんなに楽しいなんて思わなかったですし」
「希ちゃんも?」
「うん。そうだよあんこちゃん。私はここにきて初めて野球をしたのよ」
部室の笑い声が消え少しの静寂のあと希さんが口を開いた。
「私はもともと高校生のとき男子野球部のマネジャーをやっていたの。それでこの大学でも男子野球部のマネージャーをやろうと思っていたのだけれど、教育学部だからという理由で断られちゃってそれで女子野球部のマネジャーをやろうと思って河川敷のグラウンドに見学しに行ったのそしたらね」
「りかこが無理やり希の服を脱がしてユニフォームを着せたんだよね。懐かしいなあのときのりかこの嬉しそうな顔ったら……」
翔子が割って入るとりかこは慌てて翔子の口を塞ぐ。
「聞かせてくださいよりかこさんと希さんの話し」
あんこが屈託のない笑顔で迫るものだから他の三年生が面白がって続ける。
「まぁ見ての通りうちが他の大学に比べて人数が少ないのは過去にいろいろあったからでね。希が選手として入部してくれなかったら人数不足でリーグ戦出来なかったんだよ。だからりかこは希がグラウンドに来たときあんこが久留美を見つけたときみたいに喜んでさ。それはもう大はしゃぎで……」
「詩音いい加減にしなさいよ」
りかこが翔子から詩音にとびかかり口を塞ぐと今度は美雨の口が開く。
「全くの素人だった希を徹底的に鍛えて教育したのはりかこだったよね。やるからには戦力になってもらうとか言って、懐かしいな。周りからバカにされながらも二部リーグで優勝して入れ替え戦に勝ってようやく一部に帰ってきたんだ。ねっ雅」
「うん。りかこはマウンドでうるさいくらいだったけど野球ができることに誰よりも楽しそうだった」
狭い部室の中で自分のバッティングフォームをスローモーションで確認する雅はいつもよりにこやかだった。
希はさらに続ける。
「わたしって運動おんちで野球をやることを諦めてました。それでも野球が好きで傍らでみんなの夢を支えるマネジャーでも十分だと思ってました。でも実際やってみて改めて選手の大変さが分かったんです。はじめはシートノックはまともに捕れないし、前からくるボールにもかすりもしなかったけれど先輩たちに特訓してもらって試合で初めてアウトをとったときなんていうんだろうすごくうれしかったんです。そして本当の意味で野球が好きになれた気がしました」
「それが答えなのではないでしょうか?」
久留美の言葉にみんなが振り向いた。少し面食らったが気を取り直して自分の感じたことを口にする。
「私たちが野球をやっている理由って本当はすごく単純で拍子抜けするようなシンプルなものだと思ったんです。ここにいるみんなは野球が好きでなにより野球を基準に生活をしている。好きという理由以外になにか理由がいるんですかね……」
部室が静まり返る。一瞬見当違いなことを言ってしまったかと後悔したが琴音が突然立ち上がり久留美の隣に立つ。
「私は久留美の意見に賛同します。私がケガをしてまで野球をやっている理由はヒットを打った時のあの感触が忘れられなくてできれば何度も味わいたいからだから」
「あたしもくるみちゃんと同じ野球大好き!!」
あんこは元気な声でそういうと先輩たちは? と問いかけた。
すると一人また一人と立ち上がり最後にりかこさんが立ち上がるとみんな部室のドアの前に立っていた。
私たちの出した答えを蔵田先生は笑うだろうか、いや笑われても関係ない。私たちは野球が好きで好きだからうまくなりたくてそんなみんなと勝利を分かち合いたいだけのバカなのだから。
「っと言われましたって言われてもね~」
菜穂の宿題を持ち帰った私とあんこはすぐにラインで先輩たちを部室に集めた。なぜかヤンキー座りのりかこがいきりながらこちらを睨む。
「難しい問題……分からないな」
雅はバットのグリップを入念に磨きながらささやいた。他の先輩たちも首を傾げて悩んでいる。
「やっぱりさ就活のためとか、自分のスキルアップのためとかそういえば先生は納得するのかもよ」
詩音の考案に一度は頷いたもののすぐさまりかこさんが却下する。
「なにも私は就職のためとかそんなことのために野球をやっているんじゃないわ」
「じゃあプン子はなんのために野球をやっているの?」
「それは……」
美雨の質問に言葉が詰まるりかこ。
「じゃあさ、蔵田先生がいやいやアイドルやってだ時のプロマイド持ってるから、それでつる?」
美雨が悪い顔になって言った。確かに女子プロ野球は一時期試合後の握手会とか、プロマイド配りとか頻繁にやっていた気がする。
「美雨あんた少し黙りなさい。ソヒィー、希はどうなのよ」
苦し紛れの飛び火にソヒィーさんは答える。
「ウ~ン、あらためてきかれるとなやむネ、デモ」
「でも?」
「ヤキュウタノシイネ!!」
ソヒィーの答えに私たちは不意を突かれて思わず笑う。「なによそれ」「答えになってないよ」そんな言葉と笑い声が部室に響き渡る。
「私はソヒィーちゃんの気持ちわかります。私も野球を実際にやるのがこんなに楽しいなんて思わなかったですし」
「希ちゃんも?」
「うん。そうだよあんこちゃん。私はここにきて初めて野球をしたのよ」
部室の笑い声が消え少しの静寂のあと希さんが口を開いた。
「私はもともと高校生のとき男子野球部のマネジャーをやっていたの。それでこの大学でも男子野球部のマネージャーをやろうと思っていたのだけれど、教育学部だからという理由で断られちゃってそれで女子野球部のマネジャーをやろうと思って河川敷のグラウンドに見学しに行ったのそしたらね」
「りかこが無理やり希の服を脱がしてユニフォームを着せたんだよね。懐かしいなあのときのりかこの嬉しそうな顔ったら……」
翔子が割って入るとりかこは慌てて翔子の口を塞ぐ。
「聞かせてくださいよりかこさんと希さんの話し」
あんこが屈託のない笑顔で迫るものだから他の三年生が面白がって続ける。
「まぁ見ての通りうちが他の大学に比べて人数が少ないのは過去にいろいろあったからでね。希が選手として入部してくれなかったら人数不足でリーグ戦出来なかったんだよ。だからりかこは希がグラウンドに来たときあんこが久留美を見つけたときみたいに喜んでさ。それはもう大はしゃぎで……」
「詩音いい加減にしなさいよ」
りかこが翔子から詩音にとびかかり口を塞ぐと今度は美雨の口が開く。
「全くの素人だった希を徹底的に鍛えて教育したのはりかこだったよね。やるからには戦力になってもらうとか言って、懐かしいな。周りからバカにされながらも二部リーグで優勝して入れ替え戦に勝ってようやく一部に帰ってきたんだ。ねっ雅」
「うん。りかこはマウンドでうるさいくらいだったけど野球ができることに誰よりも楽しそうだった」
狭い部室の中で自分のバッティングフォームをスローモーションで確認する雅はいつもよりにこやかだった。
希はさらに続ける。
「わたしって運動おんちで野球をやることを諦めてました。それでも野球が好きで傍らでみんなの夢を支えるマネジャーでも十分だと思ってました。でも実際やってみて改めて選手の大変さが分かったんです。はじめはシートノックはまともに捕れないし、前からくるボールにもかすりもしなかったけれど先輩たちに特訓してもらって試合で初めてアウトをとったときなんていうんだろうすごくうれしかったんです。そして本当の意味で野球が好きになれた気がしました」
「それが答えなのではないでしょうか?」
久留美の言葉にみんなが振り向いた。少し面食らったが気を取り直して自分の感じたことを口にする。
「私たちが野球をやっている理由って本当はすごく単純で拍子抜けするようなシンプルなものだと思ったんです。ここにいるみんなは野球が好きでなにより野球を基準に生活をしている。好きという理由以外になにか理由がいるんですかね……」
部室が静まり返る。一瞬見当違いなことを言ってしまったかと後悔したが琴音が突然立ち上がり久留美の隣に立つ。
「私は久留美の意見に賛同します。私がケガをしてまで野球をやっている理由はヒットを打った時のあの感触が忘れられなくてできれば何度も味わいたいからだから」
「あたしもくるみちゃんと同じ野球大好き!!」
あんこは元気な声でそういうと先輩たちは? と問いかけた。
すると一人また一人と立ち上がり最後にりかこさんが立ち上がるとみんな部室のドアの前に立っていた。
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