SEASON

うさみかずと

第12話

朝練になった、昨日の夜ラインで練習時間が変更になったのだ。というのも四年生の真咲さんが就職活動で三年生も就職セミナーがあり放課後の練習に支障をきたすというものだった。そのため私は、五時五十分の電車に乗るために朝の五時に目覚ましをセットして眠りについた。までは良かったのだ私が起きたのは六時五分。電車はもう出た後だった。七時集合なのに五分で準備して家を出ても次に来る電車に間に合う保証はない。私は父のいる寝室に走った。ドアを乱暴に開けて強引に体の上に飛び乗る。ぐふううぅ。父はそう唸ると目を覚ました。
「お父さん助けて」
娘の悲痛の叫びに父は飛び起きて何事かと急いで枕もとの眼鏡をつける。父の視界に映ったのは半泣きの娘だ。
「なにがあった」
「寝坊した。車で駅まで送ってぇ~」
父は時計を確認すると勘弁してよといいながら寝巻きのまま車のエンジンをつけに行った。私も慌てて乗り込むと車は勢いよく発進した。
「その河川敷のグラウンドはどこにある住所とか分かるか?」
私は住所を調べて父に教えるとカーナビに入力した。どうやら最後まで付き合ってくれるらしい。
「まったくお前もお母さんによく似て朝に弱いなぁ」
たしかに母は、あれだけ寝室でどたばたしていたのに気持ちよく寝息を立てていたし起きる気配がなかった。
「ごめんねぇ~お父さん」
「その困ったときに語尾を延ばすところもお母さんそっくりだ」

河川敷のグラウンドに着いたのは六時五十分だ。危ない、危ない。遅れたらりかこさんに何を言われるか、想像しただけで恐ろしい。
私は父に今世紀最大の角度で頭を下げて感謝の意を表した。父は笑いながら手を振ると来た道を颯爽と戻っていく。グラウンドにはすでに先輩たちが来ていた。挨拶を済ませ真咲さんの前に集合する。
「上級生の都合で申し訳ない。一時間集中してやれば濃い練習はできるから今日は守備をメインにやろう。各自アップを済ませキャッチボールの後に野手はシートノックに入る。りかこ、咲坂もノックに入ること。ノックが終わったあとは野手はノルマの三百スイング。投手はPPメニューをこなすように、さあ行こう」
よーし。
かけ声と共に走り出す。私はりかこさんに声をかけた。
「りかこさん。慶凛大についてなんですけど」
「分かってる慶凛大の対策でしょ。土曜日までにたたきこんであげるから覚悟しなさい」
それだけ言うとりかこさんはダッシュして遠くに行ってしまった。

シートノックはいつもオールファースト七本。ゲッツー五本でまわす。その間外野手はフェンスに当たって跳ね返ったクッションボールの処理や背走の練習をしている。ピッチャーはファーストゴロの時のベースカバーの連携とバント処理の練習をした。正直言えば守備は苦手だ。バッターとの勝負は好きだし投げるのも好きだがどうも守備は好きになれない。ピッチャーは五人目の野手と言うけれど三振にとればいいことだしランディー・ジョンソンも確かそんなこと言ってた様な気がする。
「ちょっと動き遅すぎそんなんじゃふたつ殺せないでしょ」
セカンドをグラブで指すりかこさんに急かされて足がふらつく私に対してりかこさんのフィールディングはキレッキレだ。ボールを捕ってからが早いし正確なコントロールを見せる。
内野ノックを終えると外野ノックが始まる。ここでノッカーが翔子さんからキャッチャーの真咲さんにバトンタッチする。真咲さんは高々と左中間にボールが飛ばした。レフトの織部さんが捕球してセカンドに送球する。ゴロ、フライを一本ずつ受けると次はサードに送球するそして最後にバックホームというわけだ。
ノックが終わると野手は素振りが始まる。時間がない中で三百振り終わるにはハイスピードで振らなければならない。みんな一度も休まず振りまくる光景を見るとピッチャーでよかったとつくづく思う。
朝練が終わると部室代わりに使ってる小屋に行き急いで着替えて電車に乗った。三年生は二限からの講義だが一、二年生は一限がある選手がほとんどで特に一年生は必修科目だから遅刻するわけにはいかなかった。あと部室は大学にしっかりしたやつがあるから心配しないで欲しい。しかし朝練後の講義がこんなに眠いとは思いもしなかった。大学の講義は九十分もあるから退屈でしかたない。携帯をいじる学生やテーブルに突っ伏して寝てる学生(隣に座るあんこ)がいる中で私は眠気と必死に戦っていた。しかし眠気というものは我慢すればするほど牙を向けて襲ってくるもので何度か意識がとんだ。ノートをとるとか、話を聞くとかそんな余裕はなく私はただ眠気と戦っただけで講義を終えてしまった。

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