獄卒鬼の暇つぶし
第33話
「二代目、いまさら言うが作戦会議をこういった場所だと無理があると思います」
ここまでの滞在時間は実に二十分。パフェを完食してから二代目を侮蔑した目で眺めてたいた時間イコールであった。まぁその分私は冷静さを取り戻すことができたのが幸いだ。
「そうか?」
「そうです。今の今まで二代目はおなごに夢中で本来の目的など忘れていたのでしょう」
「失敬だな、手前はお主が心配でほかのことなど毛頭考えたことなかったぞ」
「ハァ……本当ですか?」
無意識にこぼれる深い吐息。二代目と一緒にいるとため息をつく回数が増えた気がする。二代目にもほんの少しの罪悪感というか、申し訳ないというかそういう気持ちがあるのだろうか。
「まぁおふざけはこのくらいにして……」
「さっきからあんたしかふざけてないけどな」
「なにか言ったか」
あぶない、あぶない。つい本音がもれる。
「いえ、別に何でも」
「まぁいいか、お主自分の額を触ってみろ」
私は言われるがまま額に手を触れてみる。
中央の位置に凹凸を感じ斜めに入った傷跡をなぞり終えると私は血の気が引いた。
「傷が治ってない」
「治ってないわけではない。治りが遅くなっているのだ」
「治りが遅く……そうか鬼のパンツか」
「そうだ、鬼のパンツは地獄の霊力を開放する能力と、鬼が持っている霊力を蓄積する能力を持っている。浮世では地獄の力を開放すると使用後体力が持たなくなるから、必然的に手前の霊力に頼らざる得ない」
「その話からすれば私は霊力を溜めにくい体質ということか」
「そのとおりだ。だからこそ主は天邪鬼に狙われている。奴の狙いは主の霊力を完全に奪い、主に成り代わり再び地獄に戻ることだろう。そうなれば主は鬼でなくなる」
「ちょ、ちょっと待って、鬼じゃなくなる? じゃあ私は一体どうなるのですか」
「手前にもわからぬ、ただ鬼でなくなるということは地獄に鬼として戻ることができなくなるということだ」
言葉がでてこない。鬼でなくなる? 地獄に戻れない? 一体どうすればいいのか。
「なんとか天邪鬼を見つけなければ」
二代目は周囲を気に駆けながら、
「おちつけ貫徹、がむしゃらに探し回っても意味がない。それに奴は瀕死の状態のはず向こうからはすぐに仕掛けてくることはないだろう。しかしこれは時間との勝負になってくる」
「二代目どうすればいい? 私には時間がない」
ダッと立ち上がり二代目の肩を掴みかかる。その拍子にテーブルのコップが床に落ち周囲の注目を一遍に集めたが私には関係なかった。
「落ち着け、そのために私がいる。まず、主がやることはひとつだ。あの天使のお嬢さんが持つ悪魔の本とやらを貸してもらえ」
「セラの……しかし」
思ってもいなかった言葉を受けた私は動揺しながら席についた。二代目はテーブルに頬杖をつき真剣なまなざしで続ける。
「わかっている、天使のお嬢さん件も手前がなんとかする」
「しかし、関係のないセラをこれ以上巻き込むわけにはいきません」
「案ずるな。悪いようにはしない、ただちょっと借りるだけだ。それに手前は悪魔を使役する方法を知っているし、上手くいけば天使の輪を取り返すことができるかもしれん」
「悪魔を使役する……。西口殿」
「不思議現象事物最強研究所副所長を見くびる出ないぞ」
二代目はそれだけ言うと席を立ち伝票をウェイトレスに渡した。金額を確認すると苦い笑いをして会計をすませ、「まずは霊力の回復を待て、微力だが二、三日リラックスできる環境で大人しくしていればある程度は回復するであろう」私の肩をたたき再び念を押した。
「天邪鬼に住処を知られてしまった以上仕方がないことだが、私はこれから不思議現象事物最強研究所に雲隠れをする。あとお主に近づいてくるものはすべて疑え、天邪鬼は変化の手練れだ油断するでないぞ」
「疑えって、そんなのどうやって見分けるんです?」
「それは簡単だ、変化の手練れとはいえ完璧に変化することはできない。主にしか知らない相手の口癖や身体的特徴をよく思い出して目の前の相手をよく観察するのだ」
「用心します」
「うむ、貫徹これを」
名前で呼ばれたのは何千年ぶりだった。私の手に握らせた一枚の紙きれには、地獄の言葉でかかれた文字が書かれている。
「天使のお嬢さんから悪魔の本を借りることが出来たら、本を開いてその紙に書いてあることを唱えろ、するとその本から悪魔が出てきて、3つの願い事を主に尋ねるだろう。そうしたら霊力の回復とパンツの奪還を願うのだ。いいか、どんなことがあっても3つ目の願いだけは答えるな。契約はしても最後の願いだけは必ず保留にするのだ」
二代目の目が尖ってきつく見つめている。
私は緊張のあまり生唾を飲み込んだ。
「二代目、セラの天使の輪っかを必ず取り戻す方法を見つけてください、約束ですよ」
「御意。では、さらばだ」
それから風のように大通りの人ごみに消えていった。
ここまでの滞在時間は実に二十分。パフェを完食してから二代目を侮蔑した目で眺めてたいた時間イコールであった。まぁその分私は冷静さを取り戻すことができたのが幸いだ。
「そうか?」
「そうです。今の今まで二代目はおなごに夢中で本来の目的など忘れていたのでしょう」
「失敬だな、手前はお主が心配でほかのことなど毛頭考えたことなかったぞ」
「ハァ……本当ですか?」
無意識にこぼれる深い吐息。二代目と一緒にいるとため息をつく回数が増えた気がする。二代目にもほんの少しの罪悪感というか、申し訳ないというかそういう気持ちがあるのだろうか。
「まぁおふざけはこのくらいにして……」
「さっきからあんたしかふざけてないけどな」
「なにか言ったか」
あぶない、あぶない。つい本音がもれる。
「いえ、別に何でも」
「まぁいいか、お主自分の額を触ってみろ」
私は言われるがまま額に手を触れてみる。
中央の位置に凹凸を感じ斜めに入った傷跡をなぞり終えると私は血の気が引いた。
「傷が治ってない」
「治ってないわけではない。治りが遅くなっているのだ」
「治りが遅く……そうか鬼のパンツか」
「そうだ、鬼のパンツは地獄の霊力を開放する能力と、鬼が持っている霊力を蓄積する能力を持っている。浮世では地獄の力を開放すると使用後体力が持たなくなるから、必然的に手前の霊力に頼らざる得ない」
「その話からすれば私は霊力を溜めにくい体質ということか」
「そのとおりだ。だからこそ主は天邪鬼に狙われている。奴の狙いは主の霊力を完全に奪い、主に成り代わり再び地獄に戻ることだろう。そうなれば主は鬼でなくなる」
「ちょ、ちょっと待って、鬼じゃなくなる? じゃあ私は一体どうなるのですか」
「手前にもわからぬ、ただ鬼でなくなるということは地獄に鬼として戻ることができなくなるということだ」
言葉がでてこない。鬼でなくなる? 地獄に戻れない? 一体どうすればいいのか。
「なんとか天邪鬼を見つけなければ」
二代目は周囲を気に駆けながら、
「おちつけ貫徹、がむしゃらに探し回っても意味がない。それに奴は瀕死の状態のはず向こうからはすぐに仕掛けてくることはないだろう。しかしこれは時間との勝負になってくる」
「二代目どうすればいい? 私には時間がない」
ダッと立ち上がり二代目の肩を掴みかかる。その拍子にテーブルのコップが床に落ち周囲の注目を一遍に集めたが私には関係なかった。
「落ち着け、そのために私がいる。まず、主がやることはひとつだ。あの天使のお嬢さんが持つ悪魔の本とやらを貸してもらえ」
「セラの……しかし」
思ってもいなかった言葉を受けた私は動揺しながら席についた。二代目はテーブルに頬杖をつき真剣なまなざしで続ける。
「わかっている、天使のお嬢さん件も手前がなんとかする」
「しかし、関係のないセラをこれ以上巻き込むわけにはいきません」
「案ずるな。悪いようにはしない、ただちょっと借りるだけだ。それに手前は悪魔を使役する方法を知っているし、上手くいけば天使の輪を取り返すことができるかもしれん」
「悪魔を使役する……。西口殿」
「不思議現象事物最強研究所副所長を見くびる出ないぞ」
二代目はそれだけ言うと席を立ち伝票をウェイトレスに渡した。金額を確認すると苦い笑いをして会計をすませ、「まずは霊力の回復を待て、微力だが二、三日リラックスできる環境で大人しくしていればある程度は回復するであろう」私の肩をたたき再び念を押した。
「天邪鬼に住処を知られてしまった以上仕方がないことだが、私はこれから不思議現象事物最強研究所に雲隠れをする。あとお主に近づいてくるものはすべて疑え、天邪鬼は変化の手練れだ油断するでないぞ」
「疑えって、そんなのどうやって見分けるんです?」
「それは簡単だ、変化の手練れとはいえ完璧に変化することはできない。主にしか知らない相手の口癖や身体的特徴をよく思い出して目の前の相手をよく観察するのだ」
「用心します」
「うむ、貫徹これを」
名前で呼ばれたのは何千年ぶりだった。私の手に握らせた一枚の紙きれには、地獄の言葉でかかれた文字が書かれている。
「天使のお嬢さんから悪魔の本を借りることが出来たら、本を開いてその紙に書いてあることを唱えろ、するとその本から悪魔が出てきて、3つの願い事を主に尋ねるだろう。そうしたら霊力の回復とパンツの奪還を願うのだ。いいか、どんなことがあっても3つ目の願いだけは答えるな。契約はしても最後の願いだけは必ず保留にするのだ」
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