闇を統べる者

吉岡我龍

ジョーロン -東奔西走-


 残り二日強の道のりを、休みを削って馬車を走らせ続けるイルフォシア。
クレイスも重傷を負ってはいるものの、
突如現れて色々と助けてくれる彼女を前に弱音を吐いてはいられなかった。

ほぼ真っ暗になるまで移動を続けていたが流石に道を踏み外すと危ない。
「今夜はここで休みましょう。」
イルフォシアが馬車を止めると手際よく後ろの荷物を下ろしていく。
クレイスも手伝おうとするが、
「駄目です!貴方も重傷なんですよ?!」
言われるがままに引き下がる。
ただカズキの看護をすることに口を挟むことはなかった。
その間も火おこしから料理までをてきぱきとこなす王女。
「お食事の用意が出来ました。どうぞ。」
焚火の傍に誘われ、隣に座ったイルフォシアから椀によそった汁物を渡された。
(・・・・・)
今まで人が作った料理は沢山食べてきたが、この時ほど心臓がどきどきしたことはない。
嬉しさを抑えつつその熱い汁を匙で掬って口に入れると、
「・・・・・に・・・・・」
「に?」
思わず苦いと言いそうになった。いや、恐らくこれは様々な薬草が入っているのだろう。
良薬は口に苦し。基本中の基本だ。
クレイスの怪我が早く治る為にこのような心の籠った料理を・・・
嬉しくてどんどんかきこんでいく、が。苦味が強すぎて時々むせかえりそうになる。
その様子を隣で見ていたイルフォシアも、
「お口に合ったみたいでよかった。では私も・・・にがっ?!」
一口食べた瞬間激しく拒絶していた。



 あの後イルフォシアから平謝りを頂いたが、
心を奪われたクレイスにとっては十分すぎるご馳走だった。
「ご、ごめんなさい!私料理とかやった事なくて・・・」
しおらしく謝る姿も可憐で美しい・・・いや、そうじゃない。
「い、いえいえ!初めてであれだけ美味しい料理を作れたら凄い!!・・です。」
クレイスに媚びへつらう気持ちは無い。本当にそう思ったから口に出したまでだ。
しかしそれを聞いたイルフォシアはまるで花が咲いたかのように笑顔を浮かべる。
ビャクトルが亡くなり、カズキが重体なのはわかっている。
しかしこんな可愛い姿を目の前で見てしまうと思考の全てが彼女一色に染まるのを感じてしまう。
(うう・・・僕ってこんなに薄情だったのか・・・)
友情より愛情という言葉もあるくらいだ。
ましてやこれがクレイスの初恋。となればそれくらい浮かれても仕方がないのだが、
自身の左肩にある傷の痛みが時々彼を正気に戻し、その都度罪悪感に駆られる。

後片付けも手伝う事を許されなかったクレイスは厚手の毛布を渡されて、
「先に休んでて下さい。私もすぐに横になりますから。」
そうは言ってもユリアンとの戦いの後からずっとお世話になりっぱなしだ。
彼女の事を知りたい、いや、彼女に質問したい事も沢山ある。
『トリスト』という国の王女だと言ってたがそんな国は聞いた事が無い。
恐らく『ジョーロン』の近隣国なのだろうが、
そもそも何故そのような身分の方があの場所にいたのか・・・・・
クレイスの名前を知っていたのも気になる・・・・・
一体彼女は・・・・・

心身共に疲れ果てていた。そこに左肩の傷。
体力的にはとうに限界を超えていたクレイスはいつの間にか深い眠りに落ちていた。



 昨夜は相当早くに寝てしまったらしい。
左肩の傷が痛む中、目が覚めると周囲はまだ仄暗く肌寒い。
しかし最後まで焚火の調整をし続けてくれたお陰か、未だに炎は燻っている。
(・・・優しい子だな・・・)
そんな事を思いながら体を起こすと、すぐ隣に何かの重みを感じる。
見れば毛布に身を包んだイルフォシアが少しだけだが触れ合うような距離で寝ていたのだ。
「?!?!?!?」
一気に目が覚めたクレイスは全身の毛穴が逆立つのを感じ、
誰かがいるわけでもないのに後ろめたさから周囲を見回して何かを警戒してしまう。

美しくも可愛い寝顔だ。いつまでも見ていられる。
しかしそこでじっとしていたらいらぬ事を考えかねない。
心臓の鼓動が聞こえそうなほど激しく打ちつけているので、まずはそれを沈める方法を考え始める。

・・・・・

そうだ。夕べの汁物。
自身の得意な分野での出来事を思い出し、彼女を起こさないようにそっと移動すると
まずは薪を足して炎を熾す。そこから鍋を掛けて再度味見。
「・・・・・なるほど。」
恐らく山菜の類はえぐみを全く処理していない。
更に調味料や香辛料を何も使っていないのだろう。
疲れがある程度取れていた彼の頭に様々な情報が入ってくると、
馬車の荷物を漁って味が調えられる物が無いかを探し出す。
そしてそれを静かに投入し、再び味を見る事数回。
「・・・うん。大分マシになった。あ、いや・・・」
聞かれている訳でもないのだが、折角心を込めて作ってくれた料理にその言い方は失礼だと反省する。
少し離れた場所に横たえられていたカズキも厚手の毛布が掛けられていたが、
相変わらず意識を取り戻していない。
体中は晴れ上がり目立った刀傷が無いのだけが唯一の救いか。

「う、うーん?おはようございます・・・」
カズキの痣を冷やす為に濡れた手ぬぐいを当てながら、
「お、おはようご、ざいます・・・。」
その声で一気に緊張してしまうクレイス。
(いつになったら慣れるのだろうか・・・まさかずっとこのまま?)
絶対にあってほしくない可能性を思い浮かべて身震いする中、
「あ・・・朝食・・・昨日の残り・・・新しく作りますね・・・」
やや寝ぼけているのか、頭がはっきりしていない様子でそう言い始めたので、
「あ、いや・・・その・・・それ、美味しいですよ?」
まさか勝手に味付けをしたとも言えず、とりあえず美味しさの事だけを伝えてみるが、
「・・・クレイス様はお優しいですね。
私は苦すぎてちょっと・・・なので今度こそ美味しく作ります!!」
すくっと立ち上がり、握りこぶしを作って空を見上げるイルフォシア。
このままではせっかくの料理が破棄されるだけではなく、
また新しい料理を作る時間と手間がかかってしまう。
「あ、あの!本当に・・・えっと、一日置いたから、味が沁み込んでるかも?です・・・」
何とも苦しい言い訳だが料理経験のない彼女は目を丸くして、
「おお?!そういう事もあるのですか!では・・・もう一度だけ味見してみますね。」
驚きの声を上げると鍋を温め直し、椀にすくって匙で一口・・・
「・・・こ、これは?!クレイス様の仰る通りです!!」
味に満足したのか、昨日とは打って変わり沢山よそって美味しそうに食べ始めるイルフォシア。
クレイスも一緒に頂いた後あまりの満足感に急ぎだった事を一瞬忘れそうになるが、
思い立ってからは行動が早い。
すぐにカズキをまた馬車に乗せると、イルフォシアも瞬く間に片づけを済ませて御者席に飛び乗る。
「今日中には着けるよう頑張りますね!」
まだ朝霧が漂う中、3人は馬車を南へ走らせた。





 太陽が昇り始めて周囲が明るく照らし出された頃。
前方から蹄のけたたましい音と共にかなりの大部隊がこちらに近づいてくるのが目に入ってきた。
行く手を完全に塞がれ、動きが取れなくなったクレイス達。

「そこの馬車におられるのはビャクトル様か?」
ジェリアの身柄を拘束していた領主クスィーヴがこちらに向かって歩いてきた。
(何故彼がここに?)
その声が聞こえたので窓から顔を覗かせるクレイス。
彼の館も『ユリアン教』の邪術で相当な損害が出ているはずだ。
しかし引きつれている兵の数を考えると既に館への侵攻は対処を終えて、
心配になったクスィーヴが王の下へ援軍を寄越したといったところだろうか?
(多分ショウとヴァッツが間に合ったんだ。)
ほっと胸をなでおろすも、その王はもう・・・・・
布で覆われて馬車の長椅子に安置されている遺体に寂しさと悲しさを感じていると、
「クレイス君も無事か。王の身辺に危険はなかったかい?」
どう答えればいいのか・・・
崩御の報告など一体どれだけの落胆を与えるか想像するのも怖いが黙っているわけにはいかない。

「私が説明いたします。」

扉を開けて降りたクレイスを手で制するイルフォシア。
御者席に座っていた彼女は朝霧を凌ぐために深く被っていた外套を脱いで立ち上がると、

ふぁさ・・・

背中から真っ白い大きな羽が姿を現した。
美しくきめ細やかな真っ白な肌と煌めきを放つ金の髪、
整った容姿の少女が青い衣装を身に纏っているだけでも目と心を奪うには十分なのだが、
今はその背中に羽まで生えている。
初めて見るその姿にクレイスも周囲と同じように唖然とする中、
まるで重さを感じさせない様子でふわりと御者席から降りてきた彼女は、
「初めましてクスィーヴ様。私は『トリスト』王国第二王女、イルフォシアと申します。」
裾を摘まんで恭しく頭を下げる。
姿形だけではなく所作まで美しい彼女にその場の全員が見とれてしまって数秒後。
「失礼しました。
『ジョーロン』の南国境部を治める領主、クスィーヴ=ダフタ=シャムールです。」
何とか領主が一番最初に我を取り戻した後挨拶を交わすと、
「ところでその『トリスト』というのはどちらの国でしょう?そもそも王女様は何故ここに?」
国土を任されている者として当然の疑問から始まった。
クレイスが聞きたくても聞くことが出来なかった内容に耳を傾ける。

「父王の命によりクレイス様一行をお迎えに参りました。
その時偶然ビャクトル様がご乱心になられた所に居合わせまして。
これ以上の犠牲を生み出さないように魂の開放をお手伝いさせていただきました。」
ビャクトルの乱心。ユリアンに変貌した事を言っているのだろう。
魂の開放とはもちろん・・・
「それは貴方自らの手で?」
「いいえ。クレイス様が『フォンディーナ』の剣で。」
イルフォシアがの報告にいくつもの動揺が軍内に走った。
クスィーヴも厳しい目でクレイスを見つめてくるが視線は左肩に向いている。
「その傷はその時の・・・ふむ。カズキ君も一緒にいたはずだが?」
「彼は死闘の末、重体の身です。辛うじて生きておられますが一刻を争う症状です。」
(えっ?!?!)
言葉通りに内容を受け取ったクレイスは驚愕する。
刀傷はなく体中痣だらけではあるが、昨夜も馬車から降ろして看護していた。
一言も話さなかったが体には力があったのでそんな心配は全くしていなかったのだ。
「・・・わかりました。こちらも今は時間がありませんので話はまた後ほど改めて。
念のためビャクトルの遺体だけ確認させていただきます。」
「どうぞ。」
クスィーヴが無表情のまま馬車に入っていく。
自国の若き王が崩御したのだ。思うところは沢山あるだろう。

「あ、やっぱりクレイスだ!ん?その羽はえてる人誰?」
分かれてから数日しか経っていないが、その声を聞いて一気に体中が弛緩していく。
「ヴァッツ。よかった、無事だったんだね。」
彼が危険に晒される事など早々無いだろう。
しかしその思い込みがカズキには当てはまらなかった。
イルフォシアのいう事が本当なら急いでクスィーヴの館に向かってしっかりした手当てを施さないと・・・
「・・・・・ぁ・・・の・・・貴方が・・・ヴァッ・・・ツ?」
うん???
あれ???
いつの間にか白い羽が無くなり、
自信と威厳を漂わせていた少女が随分しおらしく、もじもじとした態度に変わっていた。
(・・・この子、今ヴァッツの名前を・・・)
ずっと『迷わせの森』にいた彼の存在を知っている人間はそうはいない。
『ネ=ウィン』と接触したのでその関係者、それと亡命先からやってきたショウくらいか。
ということは彼女もそれらの関係者?いや、それより・・・

少し顔を紅潮させて落ち着きの無いイルフォシアは彼に特別な思いを抱いているようにしか見えない。

・・・・・
確かに彼の事を知っていれば好意を抱いても仕方が無い。
優しくて明るい。純粋で無類の強さも持っている。
(・・・ヴァッツが相手じゃ僕なんか・・・)
すでに自身の中で失恋と決めつけたクレイスは先程までと違って心から落ち込んでいく。
「うん?そうだけど・・・あれ?会った事あったっけ?」
ヴァッツが不思議そうにこちらへ向かってくると
至近距離でまじまじとイルフォシアを観察するように見つめる。
(・・・う、うらやまし・・・)
未だ彼女が傍にいるだけで緊張して声が裏返るクレイスには出来ない芸当だ。
「そのお方はイルフォシア様。我が国の王女様ですよ。」
「し、時雨~っ!!」
彼と同じ馬車に乗っていた時雨が降りてくると後ろからイルフォシアを紹介する。
それが大層嬉しかったのか、今まで見たことのない笑顔を時雨に向ける王女。
「そうなの?よろしくイルフォシア!!」
しかし2人の関係など全くお構いなしにいつもの握手を求めて、
「よ・・・よろしく・・・」
気恥ずかしそうな彼女もそれに答えている。
短いやり取りの間に様々な事実が語られていたのだが今のクレイスではそれを拾いきる事が出来なかった。

「時雨様の国の方なのですか?」

ビャクトルの遺体を確認していたクスィーヴが降りてきてすぐに尋ねてきた。
「はい。私は『トリスト』王国国王直下の隠密兼、王女様お二方の世話役ですから。」
「なんと・・・わかりました。それは道中お聞きしましょう。」
初めて耳にする『トリスト』という国。そして時雨がその関係者。
ビャクトルの身がユリアンに乗っ取られた話といい、
この2日ほどの出来事でいくつか文献が作れるくらい大量の情報が湧いて出てきた。

そこからクスィーヴとイルフォシアのお互いが切迫しているという理由から、
すぐに双方の目的地へ馬を走らせてその場は別れた。





『ジョーロン』内各地で起きていた反乱。

理由もわからず、ただ暴れている衛兵達を抑える為、
正気を確保出来ていた衛兵達が奮戦するが力と数の差が激しい。
王が不在の今、
「相手は操られておるようじゃ!!!
手足か首を落とせば動きは止まる!!!無理をせず確実に仕留めていけ!!!!」
王都に出向いていた来たの領主ナルバリが巨躯と大声で檄を飛ばしながら自身の親衛隊を引き連れ、
大きな長剣を振り回して邪術の犠牲となった衛兵を斬り伏せていく。
城内にはまだ戦える者が多数いる為、戦況は拮抗すれど不利になることはなかった。

しかし城下町でも駐屯していた衛兵が邪術によって歪められて市民を無差別に襲っている。
衛兵の数が圧倒的に少ない為、城内ほど混沌とはしていないがそれでも犠牲は出てしまうものだ。



「よし!ここからは走るよ!」

馬を酷使し、強行の更に上の速度で王都付近までやってきたヴァッツは時雨とクスィーヴにそう伝えると、

ばばっ!!

颯爽と馬車から飛び降り、だん!!っと地面を足の裏で捉えると、
そこから馬よりも速く走って城内に入っていった。
「時雨様!我々は城下町の方へ!!出来れば傷つけずに動きを止められればいいのですが。」
今後の事も考えて犠牲をなるべく最小限に抑えたい意向を示す。
「出来る限りやってみましょう。時間さえ稼げばすぐヴァッツ様が駆けつけて下さると信じて。」
他国の事とはいえ、この状態を放置し屍の山が量産されるのをただ見守るわけにはいかない。
縛りつける事ができればそれが一番だが、果たしてそれが可能なのか・・・
2人は悲鳴があがる方へ駆けて行った。



城内に入ったヴァッツの動きは速かった。操られている衛兵に向かって手を伸ばし、

めりっめりっ!

武具が潰れる音と同時に引き剥がすとそのまま片手で潰してその場に捨てた。
剥がし忘れがないように素早くも注意深く、
この作業を両手を使ってめいっぱいの成果を出し続ける。

ぎぎぎ・・・めりめりっ・・・めきゃっ・・・

異音を常に木霊させながら、やがて奮闘していた最前線まで到着すると、
身動きの取れなくなった衛兵に剣を振り下ろそうとしている一向が目に入ってきたので、
「待って待って~!オレが治すから!!」
慌ててそれを止めに入り、腕の武具をべりぃっと引っぺがしてそのまま握りつぶす。
いきなり現れて訳のわからない事を言い出し、
更に片手で武具を握りつぶす行為を目の当たりにした衛兵達が口をぽかんと開けていると、

「おお!!??これは『羅刹』のお孫様!!!!助太刀感謝いたしますぞ!!!!」
大きな声の、自分の祖父と同い年くらいの領主がヴァッツの姿をみてどかどかと近づいてくる。
「あれ?!おじちゃん何で俺の事知ってるの?!」
あまりの大声につられてこちらも大声で返すと大きな顔に満面の笑みを浮かべて、
「先日スラヴォフィル殿から連絡を受けましてな!!!
『ジョーロン』国内での不穏な動きへの忠告と、この国に蒼髪のお孫様が来られていると!!!」
近距離でも声の大きさが変わらない。
しかしこの旅で初めて自身の祖父を名前で呼べる人間に出会えた事がヴァッツの心に歓喜の火を灯す。
「じいちゃんの事しってるの?!おじちゃんの名前は?!」
「私はナルバリと申します!!!さぁ!!!まずはこの戦況を打破してしまいましょう!!!!」

言い終わると2人は奥に駆けて行くとヴァッツは衛兵達の邪術を解いて回り、
ナルバリとその部隊は傀儡兵の動きを止めることに尽力する。
開放された衛兵達も正気に戻るとどんどんナルバリの元へ駆けつけてきた。
「我等は城下へ行って市民を守る!!!ここはヴァッツ様にお任せしようぞ!!!!」
大きな声で号令が下ると、
今まで操られていた鬱憤を晴らすかのように1000人近い衛兵が町へなだれ込んでいく。
途中からはクスィーヴの指示もあり、
1人に10人近くの衛兵をぶつける事が出来るようになり、
殺す事無く身動きを確保、そこからヴァッツによって順次邪術から解き放っていった。



 いち早く邪術の解除方法を知り、
手に入れていたクスィーヴはここに来る前、自身の館から各地に総勢100騎を送って対処方法を伝えていた。
王都の鎮圧に成功した3人は休む間もなく西、北、海沿いの東へと馬を走らせ、それぞれの解呪に向かう。
「兵士の数から考えると西も相当危険な状態のはず。
そして北。東の領土はほとんど衛兵がおりません故、後回しという事で。」
この順路は国情を良く知るクスィーヴ故の提案だ。

馬を乗り換え、食事も簡素な物を携帯し、休みもほどほどに国内を駆け回る3人。
馬鹿げた体力を持つヴァッツだけは景色を堪能しつつ最後まで元気にはしゃいでいたという。
東の領土に駐在している衛兵は確かにほとんどいなかった為、
大した被害も出ていなかったのであっと言う間に解呪が終わるが、
そこの領主に大層気に入られたヴァッツは必要以上に体を休めるようその場に留められた。
彼は全く疲れていなかったのだが他の2人は疲労困憊だった為、結果的には良かったのだろう。
王都に戻ってきたときには実に3週間以上過ぎていた。

こうして『ジョーロン』を大いに混乱させた『ユリアン教』の侵攻はここに終わりを告げた。

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