闇を統べる者

吉岡我龍

ジョーロン -邪術への切り札-

 4人の少年が王都に向かってから8日目。異変は突如形となって現れた。
『ジョーロン』の衛兵達が何の前触れも無く暴れだし、
国内では大規模な内乱が各地で起きていたのだ。
それらが『ユリアン教』の仕業だと気づいた者もいたが、
衛兵を抑える方法がわからず戦況がどんどん悪化していく。

もちろんクスィーヴの館も例外ではない。

その死霊のような動きにいち早く気が付いた時雨は、
以前襲われた村での出来事と同じく四肢を飛ばす戦いを提示するも数の多さから焼け石に水の状態だ。
そこに何も知らないクスィーヴの兵達が武具を身に着けた事で内側からも戦火が上がってしまう。
館の出入り口はとうに占拠され、
2階に避難した者たちが死体と家財道具を階下に落としながら辛うじて防ぎ切れているが・・・
「そう長くはもたないか。」
クスィーヴが全員の心境を代表して吐露する。
すでに一日近く攻防が続いているが操られている衛兵達の動きに陰りは見られない。
疲れを知らない彼らはこの先もずっと動いてこちらを襲ってくるのだろう。
「おいおい!領主が簡単に諦めんな!!最悪燃やしちまえば何とかなるだろ?!」
権力者に対して遠慮のないガゼルが檄を飛ばすと、
「ええ。わかっています。諦めるつもりはありませんよ!」
それに応えるクスィーヴの目には最後まで戦うという強い意志が宿っていた。

しかし現状は凄惨な事になっている。

衛兵で武具を身に着けなかった者、途中で察した者が二十数名。
召使いで生き残っているものが十数名だ。
戦力としてガゼルと時雨がいるものの付け焼刃にしかならず、この劣勢を打破するには至っていない。
「な、なんでこんなことにぃぃ~?!」
階段手前にはまず死体、その後ろから家財道具を立てる。
更に押し通れないように非戦闘員が後ろから押し返しているのだが、
その中に嫌疑をかけられた人物も駆り出されていた。
隙間を縫うように衛兵達が槍や剣を突き出し、四肢の破壊を狙う中、
「文句言ってんじゃねぇ!どうせ処刑一歩手前だったんだろ?!命懸けで気張らねぇか!!」」
「いやぁ~!殺されるのもイヤだし処刑もいやぁ~!」
ガゼルの獰猛な檄を受けてジェリアが泣きながら家財を押さえ込んでいる。
「ではこうしましょう。ここを切り抜けたらジェリアさんの処刑は免除。」
やり取りを聞いていたクスィーヴが軽く提案してみた。
「・・・そ、それ、本当??」
「ええ。このままでは全員殺されますからね。その代わり死ぬ気で押さえてて下さい。」
「・・・わかった!死ぬ手前くらいまでは頑張るわ!!」
階段は4か所ありそれぞれ均等に人数を割いている。
相手の永続的な攻めにある程度休息を挟む必要がある為、
交代制で皆がそれぞれの役割をこなさなければならない。
(どこかから援軍が来てくれればいいんだが・・・)
そんな淡すぎる希望を胸に奮闘する中、

・・・不意に正面玄関から左右に伸びる階段への攻撃が弱くなっていくのを感じた。

階下では操られている衛兵が密集状態で武具同士がかちゃかちゃと音を立てていたが、
それらの音もだんだんと少なく、小さくなっていってるようだ。
(何だ?無尽蔵だと思われた奴らの力も底をついたのか?)
やがて完全に物音が聞こえなくなると、
「あれ??なにこれ??どうなってるの??」
「ヴァッツか?!?!よく入ってこれたな?!」
喜色の声で家財道具の隙間から階下を覗くガゼル。
「うん!めっちゃ人がいるから無理矢理通ってきたんだけど。これ何してるの??」
「ヴァッツ様!!周囲の衛兵に襲われておりませんか?!?!」
時雨もヴァッツの質問に答える前に彼の身を案じて尋ね続ける。
「うん?大丈夫だよ?皆動かなくなったけど。本当に何なのこれ??」
動かなくなった?
何を言っているのかよくわからないが、彼を知る2人はその言葉を聞くと頷き合って、
「全員か?全員動かなくなったんだな??俺らがそっちにいっても大丈夫そうか??」
ガゼルが確認を取り始める。
「大丈夫じゃない?ちょっと狭いけど。」
軽い返事だ。ヴァッツというのは『羅刹』のお孫様である。
その彼がそう言うのなら信じてもいいのか?
「よし。ちょっとその家具どけてくれ。」
いきなりそう言って下に降りようとするので、
「ガゼル様!流石に安全かどうかわからない今、その行動は危険過ぎます。」
館の主として、他の者に危害が及びそうな行動を看過するわけにはいかない。
思わず口を挟むが、
「・・・俺はヴァッツを信じている。あいつが『大丈夫』って言うんなら間違いない。
お前らもその『羅刹』の孫っていうのを信じてみな。世界が変わるぜ?」
むさ苦しい見た目とは裏腹に非常に清々しい笑顔で答えるガゼル。
更にその後ろから時雨も迷いなく降りていった。
彼女は従者なのでその行動も分からなくはないが、それでも一切戸惑いがない。

「む・・・・・またお前が止めてるんだな?微妙にみんなぴくぴくしてるぞ?」
「もう何度命を救われているかわかりません。この時雨、感謝の極みでございます。」

2人のそんな声が聞こえてくる。
確かにここにいてても打開策はなかった。
信じるかどうかはともかく安全は確保出来ていそうなので、
「よし!皆壁を一度引け!我らも階下へ!!館を抜けるぞ!!!」
全員に号令を出し、その目に飛び込んできた光景。

ぎっしりと館内にいる衛兵の数にまず驚く。
そしてそれらが全く動かなくなっている事に再度驚く。

密集しすぎて階下に降りるのに一苦労する中、
ヴァッツが無理矢理すり抜けてきた中を、全員が後に続いて外に出る。
館を出てもその衛兵の数は凄まじい物だった。
中庭を通り、外壁と正門が見え始めた所でやっと人だかりを抜けると、
「これ何人くらいいるんだ?」
「私の兵だけでも1000はいましたからね。
武具を見ると南の国境から来てる者もいるみたいですし。」
「それらが全て操られている・・・ということでしょうか。」
時雨が言っていた『ユリアン教』の邪術。
彼女が遭遇した聖騎士達は一度絶命してからこの状態になったという。
そしてそれらは四肢を落とせば解けるという話だが。
「ではこれらの衛兵全て四肢を落として無力化をしなければならない、ということですか。
・・・・・とんでもない損失ですね。」
思わず大きなため息が出てしまう。その気持ちは周囲の召使いや衛兵も同じだろう。
「そ、その・・・クスィーヴ様、彼らの家族には何と言えばいいのか・・・」
「私達の夫もいます・・・何か他に手立てはありませんか?」
そういう声が上がる事もわかってはいたが、それに対する答えが1つしかない。
心を殺して声を絞り出す。
「しかしこのまま放っておけば我々の命が、ひいては国の命が滅ぶ。
それを看過するわけにはいかない。すまないが・・・」
操られることのなかった兵や召使いが項垂れて涙をこぼし、嗚咽の声を静かにあげる中、

「あ、ショウだ。」
ヴァッツが街道を南下してくる馬に向かって手を振った。
確かに目立つ赤毛ではあったが今はその髪の毛が燃えているようにすら見える。
いや、クスィーヴ達の元にたどり着いた彼は間違いなく炎を纏っていた。
「お待たせしました。ああ・・・やはり襲われた後でしたか。」
全てを察していたのか、少年は館を取り囲んで止まったままの衛兵達に目をやると、
「ヴァッツ。ザクラミスの話はもうされましたか?」
ザクラミス??
確か『フォンディーナ』の総務長の名前だ。何故その名が今?
「あ。まだ言ってない。今やっとあそこから皆で出てきたところなんだ。」
ヴァッツが館を指さして答える。
「なるほど。とりあえずあの衛兵をどうにかしないといけませんね。」
彼も衛兵の処分方法は知っているのだろう。
他国の人間からすれば痛くもかゆくもないだろうが、
これらに引導を渡すのは考えただけでも心が病みそうになる・・・そうだ。

「もしよろしければそちらの皆様で彼らの処断をお願い出来ませんか?」
「ク、クスィーヴ様・・・」
衛兵から抗議らしい横槍が刺されるが、
「この国の人間を、これだけの数を手にかけるのは非常に心苦しいのです。どうか・・・」
嘘偽りない発言を言い切るクスィーヴ。
もちろん労力的にも厳しいという言っていない本音は隠したままで。
「・・・うーむ。俺も何とかしてやりたいんだが。ヴァッツ。どうにかなんねぇか?」
ガゼルが腕を組みながら『羅刹』の孫に意見を求めている。
彼のどこにそれだけの信頼を置ける要因があるのだろう?
「・・・私はやらないわよ?処刑を免れたんだからもう関わるつもりもないし?!」
「ジェリアさん・・・気持ちはわかりますが今それを言わなくても。」
「・・・ああ。なるほど。彼らの邪術を解くために全員処刑してしまおうとしているのですか。」
後からやってきたショウが手を叩き全てを理解したように頷いた。
「え?!全員処刑って?!この人達を?!」
ヴァッツは指をさして驚愕している。
四肢さえ落とせば命まで取る必要はないので厳密には処刑とは言い難い。
しかし四肢のいかなる部分を欠損しても今後の生活に大きく支障をきたす事は想像に難くなく、
傷口が化膿すれば死に至る。皆が皆助かる保証もないのだ。

「まぁそうしないと操られたままでしょうし・・・む・・・」
纏っていた炎が弱くなっていくショウ。それと同時に少しふらつきはじめた。
「大丈夫?」
「ええ。そろそろ活動限界が近いので簡単に説明します。
あれらは四肢と胴、頭の武具を六つ装備しているから操られているのです。
ですからそれを外せばもしかすると正気に戻るかもしれません。」
「それは本当ですか?!?!」
非常に有益な情報に年甲斐も権力者としても普段見せない驚きを表してしまう。
「あくまで推測ですが。ただ先程ザクラミスと話した感じだと不可能ではない、と思います。
あと私はこの後寝ます。起きるまで起こさないで頂けると助かります。」
そうか、眠気でふらついたのか。
体が燃えている事が既に普通ではないのだ。そこに眠気が襲ってきても何ら不思議とは思わない。
それよりも今は光明が見えたことに領主をはじめ、衛兵も召使いも喜びを隠せない様子だ。
「で、では早速やってみます!!・・・あの・・・彼らはもう動きませんよね?」
今はどういう訳か邪術にかかった衛兵全ての動きが止まっている。
クスィーヴ自身もそれが非常に気になって入るのだが、これは誰かが止めているのか。
それとも『ユリアン教』の命令により止まっているのか。
「念のために守りに入ろう。ヴァッツがやってる事だから問題ないとは思うが。」

(ヴァッツがやっている・・・・・???)

いくら『羅刹』のお孫様とはいえ、このような邪術に対抗できる手段を身に着けておられるとは。
4領主の地を纏め上げて国にまで導いた『羅刹』スラヴォフィル。
彼の活躍も実際目の当たりにしたのは数度ほどしかないが、
その孫にはどれだけの力が秘められているのだろう。

全てを伝え終わったショウはジェリアの前まで歩いていくとそのまま、
「おわっ?!熱っ・・・くない?あれ?ちょっと?!」
彼女の腰に手を回し、抱き着いたのかと思ったら炎が沈下しそのまま眠ってしまった。
仕方なくショウを抱き寄せて周囲に寝かせる場所を探すジェリア。

それからすぐに邪術によって操られているであろう衛兵達の武具を外す作業が始まった。
「んぎぎぎぎぎ・・・・」
「どれ。俺にもやらせろ・・・・んごごごごごご!!」
棒立ちの衛兵に2人がかりで武具を外そうとしている声が聞こえてくる。
近づいて様子を見てみるが
腕の帯紐を解いた状態にも関わらず、その武具は腕に張り付いたまま外れることはない。
そもそも帯革を外した時点で勝手に外れて地に落ちてもおかしくないはずだ。
「やはり邪術の力でしょうか。」
時雨もその様子から一筋縄ではいかない事を確信しているのか。
しかしこれを外さないと斬り落とすしかなくなる。
何とか成功させたいので、
「隙間に剣を挟み、こじ開けてみてくれ。」
衛兵に指示を出してみるが、
「うぐぐぐぐ・・・・駄目・・・です・・・・硬くて全然・・・」
何という事だ。
折角見いだせた光明がまた暗雲に遮られていくとは。
他の衛兵達も諦めまいと別の棒立ちになっている衛兵の武具を外そうとそれぞれ奮闘し始める。

「それ外せばいいの?」
時雨の横にいたヴァッツが不思議そうに尋ねてくる。
「そうですね。あれを外せば皆正気に戻る可能性が・・・・・!?
そうですね!!ヴァッツ様!!
いつも頼ってばかりですみませんが、彼らの武具を外していただけませんか?」
不意に明るくなった時雨が彼にその手伝いを願い出る。
たしかに『羅刹』様も無類の怪力だった。
その孫ともなれば我々が束になっても敵わぬ力を持っているわけだ。
2人のやりとりをみて納得したクスィーヴも、
「お願いします。あれを外せるかどうかで、彼らの命が救われるかどうかにかかってきます。」
不思議な力をもつ彼に期待を込めて頭を下げる。
「うん。わかった。ちょっと外してくる。」
軽い足取りでととと~と近づいていくと軽い感じで手を伸ばし、

めきゃきゃ・・・

その軽やかな行動とは裏腹に非常に耳障りな音が響く。
そしてその手には武具が彼の指状に変形し、収まっていた。
「あー。そうか。お前に任せればよかったんだ。必死すぎて忘れてたわ。」
それをみて軽く笑いだすガゼル。
「これってどこでもいいの?全部外す?あ・・・形歪んじゃった・・・」
武具を素手で歪ませる事にも驚くが、それに対して申し訳なさそうな顔をするヴァッツにも驚く。
「まずは腕の部分だけ、片手だけで大丈夫なので全ての衛兵の武具を外して回ってもらえませんか?
あと形は変形しても問題ありません。むしろ変形させて下さい。」
クスィーヴもここは彼に任せるしかないと確信した。
ガゼルや時雨が口を挟む前に彼に全てを託す。
「わかった!んじゃ丸めとこ。」
丸める?

ぎりぎゅぎゅ・・・・ぎりぎりぎゅ・・・・

先程よりもより更に不愉快な音が彼の掌から漏れてくる。
ヴァッツは泥団子を作るかのように手に握った武具をころころと転がし丸い鉄球が完成した。
そして地面にぽとりと落とすと、またも軽い足取りでててて~と衛兵達に近づいて行き、
それぞれに腕の武具をめきゃり、めきゅきゃ、と音を立てて剥がすと
同じようにその足元に鉄球を落として回って歩く。

1000人以上いた衛兵の武具が全て外し終わるまでに時間はかかったが、
最後の1人、館の裏庭にいた衛兵から武具を剥がして鉄球を作った後、
「これで全部おわったかな。」
「はい。本当にありがとうございます。」
彼一人で作業をさせて放っておくわけにもいかないクスィーヴは、
全ての行動を一緒に見届けて、最後に笑顔で感謝を述べた。





 そこからはあっけなかった。
剥がしている最中に気が付いていたが邪術が解けたのであろう。
正気を取り戻した衛兵達から歓喜の声が上がっていく。
それらは数が増える毎にどんどん大きくなり、
ヴァッツが最後の1人の武具を外し終えた後、周囲から鬨の雄叫びが湧き上がる。
クスィーヴと2人で感謝の意を述べてくる衛兵達の中をかき分け、
皆が待っていた門扉前に戻ってくると、領主がこれまでの出来事を説明し始めた。

恐らく武具をつけている人間全てが操られている事とその仕組み、
それによる国家存亡の危機が現在『ジョーロン』で起こっているという事、
今から討伐及び救出隊としてほぼすべての衛兵を王都へ派遣する事等を伝える。

その様子を傍らで見ていたヴァッツ達。
「さすがヴァッツだな。こいつの力は本当に底が知れねぇ。な?」
顔を向けて救世主の頭をぽんぽんと叩くガゼル。彼も嬉しそうだ。

そんな2人に目をやりつつ、時雨は今後の身の振り方についてぼんやりと考えていた。

現在彼の祖父であるスラヴォフィルに仕えている。それに不満は一切無い。
だが敵対している『ネ=ウィン』の4将筆頭がヴァッツの配下になりたいと申し出た件。
これにより時雨の心は大きく揺らぎだした。
彼の配下になる事を許されたクンシェオルトを羨ましいと思ったのだ。
従者としてその感情は褒められるものではないが、この旅では彼に沢山救われた。
それを考慮すれば心が動かないほうがどうかしていると言ってもいい。
自分も・・・ヴァッツ様にお仕えしたい。
しかしそれはスラヴォフィルを裏切る事になる。
彼にも昔、まだ時雨が幼かった時に命を救われている。
そこで主に一生仕えると胸に誓ったはずなのに、まさかこのような二心を持ってしまうとは。
(私という女は・・・本当に忍びには向いていないな。)

物思いにふけっていると、
クスィーヴの号令により衛兵達が王都までの準備に取り掛かり始めた。
火急の必要がある為、再編成も一瞬で終わらせた領主は、
「皆様にお話があります。急いでおりますのでこの場で手短に済ませますね。」
こちらに歩いてきてそう切り出した。
「まずジェリアさんは約束通り開放致します。
そしてヴァッツ様、貴方の力は今この国で沢山の人間が必要としています。
どうかもう少し、その力をお貸し願えませんか?」
「うん。いいよ!」
跪いて願いを請う前に元気な返事が帰ってきて、思わず顔が綻ぶクスィーヴ。
「誠にありがとうございます。では時雨様もご一緒に。」
従者への気遣いまでしてもらいヴァッツが快諾している以上、断る道理はない。
「はい。従者として付き従わせていただきます。」
時雨もヴァッツに倣い即答する。
「俺の席は空いてるのか?無くてもついていく予定だけどな!」
ガゼルが鼻息を荒くしてこれも元気に答える。しかし、
「貴方には我が館の留守番をお願いしたいのです。
ショウ様もお休みになられていますし、ジェリアさんも自由に使っていただいて結構です。」

間接的な言い回しで3人に館に留まるよう願い出る。
クスィーヴの狙いがあるにしても、
「私からもお願いします。まだカズキ様とクレイス様の安否も確認できていません。
ここでお2人の帰りを待っていただく方が必要です。」

そうなのだ。
ヴァッツの話だと彼ら2人はビャクトルと一緒にこちらに向かっているらしいが、
現在『ユリアン教』による邪術で国内は大混乱を起こしていると推測される。
カズキが傍にいれば王の御身は問題ないだろうが数で圧されたら守るのも困難だろう。

「まぁ、そうだよな。誰かは残ってたほうがいい。
戦力的には俺が一番足手まといになりそうだし、わかった。」
ヴァッツが絡んでいるからという理由もあるが、彼は個人的に領主を気に入っている。
潔く聞き入れるガゼルの態度にクスィーヴも時雨さえも感嘆の声をもらと、
「おっさんがそんな素直になると、
さっさと『フォンディーナ』に帰ろうとしてた私が薄情に見えるじゃない?!
まぁ、ショウ君が目を覚ますまでは私も残ろうかな・・・」
目の前で力尽きてしまった赤毛の少年を気遣い、ジェリアも留守番に協力する意思を見せた。
「皆様、本当にありがとうございます。
この礼は必ず、クスィーヴ=ダフタ=シャムールの名にかけて、約束させて頂きます。」
領主は深く頭を下げた後、
即座に編成された部隊はヴァッツ、時雨と共に王都へ向けて出発した。

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