闇を統べる者

吉岡我龍

クレイスの憂鬱 -王と共に-⑩

 「何だこの俗物は?身に着けている物とは裏腹に随分と幼い・・・まさか我に子守りでも任せようというのではあるまいな?」
「ふむ。今の言動で全て理解しました。ヴァッツ様、この者は私めが速やかに処刑致しますのでご許可を。」
クンシェオルト達が蘇って以降、新たな異変には出来得る限りヴァッツに直接調べてもらおうという方針なので一行は『ダブラム』に向かったのだ。
ところが問題の異邦人が情報以上に傲慢だった為、初対面時のやり取りでつい頭に血が上ってしまったクンシェオルトは据わった眼で吐き捨てるとクレイスも慌てて仲裁に入ってきた。
「す、すみません。この人の理想の王というのがこういう言動をするものらしくて・・・」
「・・・いいえ、私の方こそつい取り乱してしまいました。申し訳ございません。」
「ほう?身分を弁えてすぐに身を引ける胆力は中々に見どころがある。貴様は我の配下に加えてやっても良いぞ?」
やはり殺すか。
見た所手枷足枷を付けられたア=ディラファという男に大した力もあの光も感じられない。であれば主に無礼を働く存在を生かしておく理由もない。

「まぁまぁクンシェオルト落ち着いて。でも変わってるね君。自分の意思で色んなものを取り出せるんだ・・・これは危険かな。」

しかし海のように大きく広い器を持つヴァッツは不遜な言動など全く気にする様子もなく徐に手を伸ばすといつの間にか妙な長剣が握られているではないか。
「えっ?!ヴ、ヴァッツ?!それどこから出したの?!」
「む?我が宝剣を・・・貴様、どうやって宝物庫に干渉した?」
「え?どうやって?手を突っ込んだだけだよ?とにかくこの剣は持ち主の意思に応えて武器をいっぱい呼び寄せるみたいだね。クレイスよく勝てたね?」
腕を伸ばした時に手先が一瞬だけ歪んで見えたがそれこそ宝物庫とやらに手を入れた瞬間だったらしい。理屈はわからないが相手の戦力を差し押さえたのなら後は粛々と任務をこなすだけだ。
「ではもう此奴を生かす理由はありませんね。早速首を跳ね飛ばしましょう。」
「クンシェオルトどうしたの?!今日はいつになく不機嫌じゃない?!」
流石にヴァッツからそう言われると一度冷静さを取り戻さねばなるまい。ア=ディラファから顔を背けたクンシェオルトは無理矢理感情を押し殺すが奴から放たれる敬意のない言動一つ一つが一々癇に障って仕方無いのだ。
「で、どうかな?この二人からヴァッツの気になる気配は感じる?」
「うううん。何も感じないね。多分本当に迷い込んできただけだと思うけど、どうしよう?元の世界に返してこようか?」
そうだ。こんな無礼な輩は始末するか二度と接する事が無いよう廃棄するのが良い。クンシェオルトもあの光が関係していないのであればと速やかなる帰国を促すが面倒臭い輩というのは永遠に面倒臭いのだ。

「待て。元の世界とは何だ?我にもわかるよう説明するがよい。」

「貴様の都合など知らんし知る必要もあるまい。さっさと自分の世界に帰って誰かに殺されてくれ。」

「も~クンシェオルト?!」
自分の手で始末出来ないのであればとつい本音が漏れると再び主からお

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