闇を統べる者
クレイスの憂鬱 -王と共に-⑨
クレイスの次期国王に反対している噂というのはある程度の人物であればその違和感にすぐ気が付く。それが左宰相なら猶更だ。
「正妻はイルフォシア様で良いとして、ルサナやウンディーネを受け入れるのも国の繁栄を考えると間違いではない思うんですが彼も頑固ですからね。」
しかしウンディーネがそれを暴こうと積極的に行動するとは思わなかった。小耳に挟んだ話だと本気でクレイスを想い、助ける為だったとの事だがこれをけしかけたのもまた例の召使い達なのではないかという噂もある。
「えーーー。ショウ君は本当に女心をわかってないなぁ。」
最近では一緒にいる事が当たり前になっていたショウはつい本音を漏らすとルルーから白い視線を向けられたのでこちらも負けじと目を丸くした。
「おや?いけませんか?王たるもの後継者の事まで考えて一人前ですよ?」
「でも腹違いの子供達が皆仲良くなれるとは限らないでしょ?将来後継者争いが起こったりしたら困るんじゃないの?」
「む・・・」
確かに子供というのは親の意思で授かるものでも育つものでもないし3人を娶ったとして、もしイルフォシアとの子が生まれなければ大きな混乱が生じるのも容易に想像出来る。
「そう考えるとスラヴォフィル様の英断は見事ですね。自身の御子を授かる前にクレイスを指名されたのですから。」
それを素早く理解したショウは話題を切り替える為にわざとらしいつぶやきを漏らして見せるのだがこれは紛れもない本心だ。
彼も高齢であり指名した時には御子の存在もなかった。つまり表明した時期がややこしかっただけでしっかり後世の事まで考えていたのは間違いないのだ。
「なのにクレイス君が王様になる事を反対してる人がいるんだから国って良くわからないわ。スラヴォフィル様の御命令って絶対じゃないの?」
「もちろん絶対です。ただあまりにも常軌を逸していたり大きな損害が発生する場合は周りも止めるでしょう。」
「ふーん。でも今回だとどちらにも当てはまらないよね?」
「そうですね。国家単位だと当てはまりません。」
「???」
書類を整理する手が完全に止まってしまったルルーが小首を傾げるとショウは周囲を窺った後、静かに彼女の背後に立って耳元に顔を近づける。
「・・・クレイスが国王になったとして皆が皆幸せになるとは限りません。特に高い地位を持つ人間ならそれを脅かされる可能性もあるのです。」
「ほう?つまり保身に走る人が邪魔したいって事ね?」
聡明な彼女もすぐに理解し、今度はこちらの耳元に囁くと静かに頷いた。これはどんな国でもそうなのだ。全員が全員国家に完全なる忠誠を誓っている訳ではない。
それは『シャリーゼ』でも同様だった。だからアンも厳しい法律をいくつも制定していたのだ。国家を正しく導く為に。
「そういう事です。人間ですから私欲に走ったり変化を恐れるのは仕方のない事。しかし官人はその覚悟を持って国務に勤めねばなりませ、んっ。」
ところが真面目な話をしている最中、近すぎたルルーの顔がゆっくり動いて唇を重ねてきたのだから無理矢理中断されてしまった。
「・・・あれ?避けられると思ったのに・・・あれれ?」
「・・・・・私も変化に対応していかねば、とは思ってました。」
「えっ?それって、んんっ?!」
それにしても彼女は悪戯が過ぎる。ここは執務室で今は国務中だというのに。ショウはそれを諫める意味と変化を受け入れる意味からルルーの後頭部に優しく手を回すと今度はこちらから唇を奪い返す。
「・・・ショウ君、今は仕事中だよ?」
「ほほう?自分の事を棚に上げるような口には再教育が必要ですね。」
会話をきっかけに気持ちの整理、いや、箍が外れたと言うべきか。この日、やっと気持ちが通じ合った2人は何もかも忘れて夢中で唇を貪り合うと仕事は半日分ほど滞ってしまうのだった。
「正妻はイルフォシア様で良いとして、ルサナやウンディーネを受け入れるのも国の繁栄を考えると間違いではない思うんですが彼も頑固ですからね。」
しかしウンディーネがそれを暴こうと積極的に行動するとは思わなかった。小耳に挟んだ話だと本気でクレイスを想い、助ける為だったとの事だがこれをけしかけたのもまた例の召使い達なのではないかという噂もある。
「えーーー。ショウ君は本当に女心をわかってないなぁ。」
最近では一緒にいる事が当たり前になっていたショウはつい本音を漏らすとルルーから白い視線を向けられたのでこちらも負けじと目を丸くした。
「おや?いけませんか?王たるもの後継者の事まで考えて一人前ですよ?」
「でも腹違いの子供達が皆仲良くなれるとは限らないでしょ?将来後継者争いが起こったりしたら困るんじゃないの?」
「む・・・」
確かに子供というのは親の意思で授かるものでも育つものでもないし3人を娶ったとして、もしイルフォシアとの子が生まれなければ大きな混乱が生じるのも容易に想像出来る。
「そう考えるとスラヴォフィル様の英断は見事ですね。自身の御子を授かる前にクレイスを指名されたのですから。」
それを素早く理解したショウは話題を切り替える為にわざとらしいつぶやきを漏らして見せるのだがこれは紛れもない本心だ。
彼も高齢であり指名した時には御子の存在もなかった。つまり表明した時期がややこしかっただけでしっかり後世の事まで考えていたのは間違いないのだ。
「なのにクレイス君が王様になる事を反対してる人がいるんだから国って良くわからないわ。スラヴォフィル様の御命令って絶対じゃないの?」
「もちろん絶対です。ただあまりにも常軌を逸していたり大きな損害が発生する場合は周りも止めるでしょう。」
「ふーん。でも今回だとどちらにも当てはまらないよね?」
「そうですね。国家単位だと当てはまりません。」
「???」
書類を整理する手が完全に止まってしまったルルーが小首を傾げるとショウは周囲を窺った後、静かに彼女の背後に立って耳元に顔を近づける。
「・・・クレイスが国王になったとして皆が皆幸せになるとは限りません。特に高い地位を持つ人間ならそれを脅かされる可能性もあるのです。」
「ほう?つまり保身に走る人が邪魔したいって事ね?」
聡明な彼女もすぐに理解し、今度はこちらの耳元に囁くと静かに頷いた。これはどんな国でもそうなのだ。全員が全員国家に完全なる忠誠を誓っている訳ではない。
それは『シャリーゼ』でも同様だった。だからアンも厳しい法律をいくつも制定していたのだ。国家を正しく導く為に。
「そういう事です。人間ですから私欲に走ったり変化を恐れるのは仕方のない事。しかし官人はその覚悟を持って国務に勤めねばなりませ、んっ。」
ところが真面目な話をしている最中、近すぎたルルーの顔がゆっくり動いて唇を重ねてきたのだから無理矢理中断されてしまった。
「・・・あれ?避けられると思ったのに・・・あれれ?」
「・・・・・私も変化に対応していかねば、とは思ってました。」
「えっ?それって、んんっ?!」
それにしても彼女は悪戯が過ぎる。ここは執務室で今は国務中だというのに。ショウはそれを諫める意味と変化を受け入れる意味からルルーの後頭部に優しく手を回すと今度はこちらから唇を奪い返す。
「・・・ショウ君、今は仕事中だよ?」
「ほほう?自分の事を棚に上げるような口には再教育が必要ですね。」
会話をきっかけに気持ちの整理、いや、箍が外れたと言うべきか。この日、やっと気持ちが通じ合った2人は何もかも忘れて夢中で唇を貪り合うと仕事は半日分ほど滞ってしまうのだった。
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