闇を統べる者
クレイスの憂鬱 -王と共に-⑧
『トリスト』だけだとかなり小規模な国なので留まっていれば様々な噂が嫌でも耳に入ってくる。特に第二王女イルフォシアが『アデルハイド』の王子クレイスと恋仲になっている話は城内外問わずにとても有名な話なのだ。
(それでも城内では次期国王反対派が大多数を占めてるっていうんだから不思議な話よね。)
もちろんスラヴォフィルが御子を授かられたという理由は最も納得がいく。しかし彼はその前からクレイスに王位継承を告げていたので順序は逆になってしまい、筋が通らなくなる。
となると一体誰が、何の為に反対しているのか。
ノーヴァラットはクレイスに任された部隊を指揮して『ダブラム』侵攻の事後処理にあたっていると同じく復興作業を任されていた将軍チュチュが話しかけてきた。
「いや~参ったね。異世界の猛者はあたし達の想像を超えてくる。そう思わないかい?」
「・・・そうですね。」
自分も少し前までは戦闘国家『ネ=ウィン』の4将だったはずだが既に時代に取り残された感は否めない。それは普段さばさばしている彼女も思う所があるらしい。
クレイスによって『トリスト』で登用されて以降、性格の二面性からも敬遠されがちなノーヴァラットだが同い年で同性という事もあるのか、チュチュだけは気兼ねなく接して来てくれた。
「あ、またその性格か。よし!」
「ひゃあっ!!チ、チュチュ様!!い、いつも言っていますが人の胸を無暗に握りしめないで下さい!!」
そんな同僚を嫌いではないのだが1つだけ毎回苦言を呈する事がある。それが無理矢理驚かせて性格を切り替える強引な手段にこちらの胸を自慢の握力で鷲掴みしてくる点だ。
「え~いいじゃん。減るものじゃあるまいし、これが一番手っ取り早いしね。しかしどうしたらそんなにでかくなるんだ?」
こちらの性格の方が気兼ねなく話せるらしいが彼女は猛者でありその力はノーヴァラットよりはるかに強いのだからせめてもう少し手加減して欲しい。
でないと毎回毎回驚きだけでなく過剰な痛みを伴ってはうんざりしてしまう。もちろんそれを懇切丁寧に伝えてはいるものの一向に改善は見られないのだから困ったものだ。
「へ、減っているものはあります!!そ、それはあなたへの信頼ですっ!!」
「お~やっぱノヴァはその性格が可愛くていいね!なんでつんけんした性格に戻そうとするんだ?勿体ない。」
「こ、こちらだとその、臆病さが邪魔になる事があるので・・・で、でも今回は違います!!チュチュさん、あ、あなたもクレイス様の次期国王に反対なのですか?!」
いつもいつもやられっぱなしで不満は蓄積していたノーヴァラットは今日こそはと直近の出来事を切り返して見せる。これは先程話題に上がった内容にも関係があった。
クレイスは異世界から迷い込んでくる猛者でさえも独力で制圧出来る程の力をつけているのだ。そしてその志、性格も王としての自覚を十分感じるまで成長している。
イルフォシアとの関係も良好で反対する理由などない筈なのに何故だ?
「え?う~ん・・・あたしは形だけ反対派だからなぁ。理由は上官命令だとしか言えないよ?」
「え?!そ、そうなのですか?」
「そりゃそうだよ。あたしだって最近のクレイス様の御姿には思わず見惚れちゃうからね。容姿端麗っていうの?それでいて心身ともに強靭でイルフォシア様と懇意にされてるんならむしろ大賛成さ。でも反対しとけって言われてるんだ。あ、これ内緒ね?」
どの部分を内緒にしておけばよいのかわからなかったが彼女が心から反対していないのであれば一安心だ。そのせいで考える間もなく何度も頷くと2人は笑い合う。
「・・・でも本気で反対している奴らもいるのは事実だ。そこはどうにかしなきゃいけないかもしれないな。」
しかし作業に戻る時、ふとチュチュが険しい表情と厳しい内容を漏らした事でノーヴァラットは驚きと共に冷静な性格に切り替わるのだった。
(それでも城内では次期国王反対派が大多数を占めてるっていうんだから不思議な話よね。)
もちろんスラヴォフィルが御子を授かられたという理由は最も納得がいく。しかし彼はその前からクレイスに王位継承を告げていたので順序は逆になってしまい、筋が通らなくなる。
となると一体誰が、何の為に反対しているのか。
ノーヴァラットはクレイスに任された部隊を指揮して『ダブラム』侵攻の事後処理にあたっていると同じく復興作業を任されていた将軍チュチュが話しかけてきた。
「いや~参ったね。異世界の猛者はあたし達の想像を超えてくる。そう思わないかい?」
「・・・そうですね。」
自分も少し前までは戦闘国家『ネ=ウィン』の4将だったはずだが既に時代に取り残された感は否めない。それは普段さばさばしている彼女も思う所があるらしい。
クレイスによって『トリスト』で登用されて以降、性格の二面性からも敬遠されがちなノーヴァラットだが同い年で同性という事もあるのか、チュチュだけは気兼ねなく接して来てくれた。
「あ、またその性格か。よし!」
「ひゃあっ!!チ、チュチュ様!!い、いつも言っていますが人の胸を無暗に握りしめないで下さい!!」
そんな同僚を嫌いではないのだが1つだけ毎回苦言を呈する事がある。それが無理矢理驚かせて性格を切り替える強引な手段にこちらの胸を自慢の握力で鷲掴みしてくる点だ。
「え~いいじゃん。減るものじゃあるまいし、これが一番手っ取り早いしね。しかしどうしたらそんなにでかくなるんだ?」
こちらの性格の方が気兼ねなく話せるらしいが彼女は猛者でありその力はノーヴァラットよりはるかに強いのだからせめてもう少し手加減して欲しい。
でないと毎回毎回驚きだけでなく過剰な痛みを伴ってはうんざりしてしまう。もちろんそれを懇切丁寧に伝えてはいるものの一向に改善は見られないのだから困ったものだ。
「へ、減っているものはあります!!そ、それはあなたへの信頼ですっ!!」
「お~やっぱノヴァはその性格が可愛くていいね!なんでつんけんした性格に戻そうとするんだ?勿体ない。」
「こ、こちらだとその、臆病さが邪魔になる事があるので・・・で、でも今回は違います!!チュチュさん、あ、あなたもクレイス様の次期国王に反対なのですか?!」
いつもいつもやられっぱなしで不満は蓄積していたノーヴァラットは今日こそはと直近の出来事を切り返して見せる。これは先程話題に上がった内容にも関係があった。
クレイスは異世界から迷い込んでくる猛者でさえも独力で制圧出来る程の力をつけているのだ。そしてその志、性格も王としての自覚を十分感じるまで成長している。
イルフォシアとの関係も良好で反対する理由などない筈なのに何故だ?
「え?う~ん・・・あたしは形だけ反対派だからなぁ。理由は上官命令だとしか言えないよ?」
「え?!そ、そうなのですか?」
「そりゃそうだよ。あたしだって最近のクレイス様の御姿には思わず見惚れちゃうからね。容姿端麗っていうの?それでいて心身ともに強靭でイルフォシア様と懇意にされてるんならむしろ大賛成さ。でも反対しとけって言われてるんだ。あ、これ内緒ね?」
どの部分を内緒にしておけばよいのかわからなかったが彼女が心から反対していないのであれば一安心だ。そのせいで考える間もなく何度も頷くと2人は笑い合う。
「・・・でも本気で反対している奴らもいるのは事実だ。そこはどうにかしなきゃいけないかもしれないな。」
しかし作業に戻る時、ふとチュチュが険しい表情と厳しい内容を漏らした事でノーヴァラットは驚きと共に冷静な性格に切り替わるのだった。
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