闇を統べる者
クレイスの憂鬱 -王と共に-④
「ねぇクレイス、私にも何か出来る事はないの?」
「クレイス様、私を正式に近衛として採用して頂けませんか?」
奇しくもこの日、彼の部屋にいたルサナとウンディーネがそう切り出すと2人は顔を見合わせて、クレイスも目を丸くしている。
「え?ど、どうしたの二人とも?」
その問いにどう答えるべきか。目が合ったルサナの様子を窺っていると彼女は何かを決意したように口を開いた。
「・・・クレイス様はもうすぐ『トリスト』の国王になられる存在です。なのに傍にいる私が宙ぶらりんの状態では周りも納得しないでしょう。私は足を引っ張りたくない。だから唯一の特技を生かしてクレイス様のお役に立ちたいんです。時雨様のように。」
彼女も彼女なりに考えていたらしい。時雨の名前を出した事でより明確な立ち位置を望んでいるのだとわかったがそうなるとウンディーネの方が戸惑ってしまう。
自分はそこまで考えていなかった。クレイスが立派に成長していくのが眩しくて、その姿に憧れと愛しさと誇りを感じただけだ。
「・・・ウンディーネは?やっぱりルサナと同じように考えているの?」
役に立ちたいとは思うがルサナと同じ・・・ではない気がする。どちらかというと支えたいのかもしれない。ただ護衛とか従者ではない。もっと違う形で彼の傍にいたいのだ。
「・・・・・私はクレイスと結婚したい。」
「「は?!」」
となるとそう答えるのが最も適切だと思った。故にぽつりと呟いてみるとルサナはともかく、普段は淑女を演じるイルフォシアからも素に近い驚愕の声が漏れていた。
「・・・ありがとう。でもそれは難しいかな・・・僕にはイルフォシアしか愛せないと思うから。」
「うん。でも私がクレイスを想うのは自由でしょ?」
「え?!い、いや・・・そうだけど・・・え?ウンディーネ?」
何故こんな事を口走ってしまったのかわからないのだが今、彼を前に素直な心境を吐露したらこうなったのだ。クレイスも久しぶりに昔の顔を覗かせるとウンディーネもくすくすと笑いながら気持ちを整理していく。
「私はイフリータの事もあるから人間をあまり好きじゃないの。でもクレイスにだけは死んでほしくない。それくらいは大切な人、になってたみたい。」
「あ、ありがとう・・・」
そんな本気の告白にいつもは絶対に譲らないイルフォシアも無言を貫いている。
「だから婚約者にして欲しいな。時雨ちゃんみたいに。」
「「はぁ?!?!」」
「えっと?!ウンディーネ?僕の話は聞いてた?今はイルフォシア以外に愛を注ぐつもりは無いんだけど・・・」
「『今は』でしょ?私も長寿だしね。何時までも待つの。」
「それを言ったら『天族』である私も長寿ですよ?それにクレイス様は誰にも渡しません!!」
「ちょっと待って!多分私も結構長生き出来るよ?!じゃあ私も時雨様みたいに婚約者も兼任したい!!」
最後は誰が最も長生き出来るかという横道に逸れてしまったがウンディーネは本気なのだ。どれだけ強くなってもクレイスが人間である事に変わりはない。
今の関係はとてもとても心地が良く、これが永遠に続けば良いと思っていたがこの中だと彼やノーヴァラットは自分達を置いて先に寿命を迎えるだろう。
ならばその前に、一瞬でもいい。自分に向き合ってくれれば。
クレイスとの子を授かれば今後も前向きに生きられる筈だ。
(・・・・・他の『魔族』もそんな風に考えて結婚、したのかな・・・・・)
まだ愛と呼ぶには少し薄いのかもしれないが自ら見出した道に間違いはないと信じたい。ウンディーネは友人達との掛け合いを楽しみつつ、芽生えた決意を胸に刻むのだった。
「クレイス様、私を正式に近衛として採用して頂けませんか?」
奇しくもこの日、彼の部屋にいたルサナとウンディーネがそう切り出すと2人は顔を見合わせて、クレイスも目を丸くしている。
「え?ど、どうしたの二人とも?」
その問いにどう答えるべきか。目が合ったルサナの様子を窺っていると彼女は何かを決意したように口を開いた。
「・・・クレイス様はもうすぐ『トリスト』の国王になられる存在です。なのに傍にいる私が宙ぶらりんの状態では周りも納得しないでしょう。私は足を引っ張りたくない。だから唯一の特技を生かしてクレイス様のお役に立ちたいんです。時雨様のように。」
彼女も彼女なりに考えていたらしい。時雨の名前を出した事でより明確な立ち位置を望んでいるのだとわかったがそうなるとウンディーネの方が戸惑ってしまう。
自分はそこまで考えていなかった。クレイスが立派に成長していくのが眩しくて、その姿に憧れと愛しさと誇りを感じただけだ。
「・・・ウンディーネは?やっぱりルサナと同じように考えているの?」
役に立ちたいとは思うがルサナと同じ・・・ではない気がする。どちらかというと支えたいのかもしれない。ただ護衛とか従者ではない。もっと違う形で彼の傍にいたいのだ。
「・・・・・私はクレイスと結婚したい。」
「「は?!」」
となるとそう答えるのが最も適切だと思った。故にぽつりと呟いてみるとルサナはともかく、普段は淑女を演じるイルフォシアからも素に近い驚愕の声が漏れていた。
「・・・ありがとう。でもそれは難しいかな・・・僕にはイルフォシアしか愛せないと思うから。」
「うん。でも私がクレイスを想うのは自由でしょ?」
「え?!い、いや・・・そうだけど・・・え?ウンディーネ?」
何故こんな事を口走ってしまったのかわからないのだが今、彼を前に素直な心境を吐露したらこうなったのだ。クレイスも久しぶりに昔の顔を覗かせるとウンディーネもくすくすと笑いながら気持ちを整理していく。
「私はイフリータの事もあるから人間をあまり好きじゃないの。でもクレイスにだけは死んでほしくない。それくらいは大切な人、になってたみたい。」
「あ、ありがとう・・・」
そんな本気の告白にいつもは絶対に譲らないイルフォシアも無言を貫いている。
「だから婚約者にして欲しいな。時雨ちゃんみたいに。」
「「はぁ?!?!」」
「えっと?!ウンディーネ?僕の話は聞いてた?今はイルフォシア以外に愛を注ぐつもりは無いんだけど・・・」
「『今は』でしょ?私も長寿だしね。何時までも待つの。」
「それを言ったら『天族』である私も長寿ですよ?それにクレイス様は誰にも渡しません!!」
「ちょっと待って!多分私も結構長生き出来るよ?!じゃあ私も時雨様みたいに婚約者も兼任したい!!」
最後は誰が最も長生き出来るかという横道に逸れてしまったがウンディーネは本気なのだ。どれだけ強くなってもクレイスが人間である事に変わりはない。
今の関係はとてもとても心地が良く、これが永遠に続けば良いと思っていたがこの中だと彼やノーヴァラットは自分達を置いて先に寿命を迎えるだろう。
ならばその前に、一瞬でもいい。自分に向き合ってくれれば。
クレイスとの子を授かれば今後も前向きに生きられる筈だ。
(・・・・・他の『魔族』もそんな風に考えて結婚、したのかな・・・・・)
まだ愛と呼ぶには少し薄いのかもしれないが自ら見出した道に間違いはないと信じたい。ウンディーネは友人達との掛け合いを楽しみつつ、芽生えた決意を胸に刻むのだった。
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