闇を統べる者
クレイスの憂鬱 -王と共に-③
ルサナが『腑を喰らいし者』との親睦を深めていた時、ウンディーネもまた己の立場について深く考えていた。
この先ア=ディラファやダム=ヴァーヴァといった異邦人がまだまだ現れるのだとすれば世界はますます混乱していくだろう。
ショウもヴァッツが敵対視している存在に対して警戒を高めており、クレイスを『トリスト』王にする事で体制を整えようと動いている。
では自身は何をすべきなのか。
答えが見つからないまま帰国したウンディーネは無意識に『気まぐれ屋』へ足を運ぶと親友がすぐに持て成してくれた。
「いらっしゃいませ。珍しいな、お前がこんな店に顔を出すとは。」
「・・・自分が働いてるお店に『こんな』ってつけるのはどうかと思うの。」
「うむ。イフリータの仕事は決して悪くないのだがどうにも愛想がな・・・ウンディーネからも言ってやってくれ。」
店長気取りのティナマも勿体ないといった様子で首を突っ込んでくると後方では表情の読みにくいウォダーフがはらはらした様子を見せている。
「ねぇイフリータ、あなたは今のままでいいの?」
「???本当にどうした?」
しかし今は自分の問題が最優先なのだ。焦りから説明をすっ飛ばして質問をぶつけるとイフリータは本気で戦う時でさえ滅多に見開かない双眸をぱちくりとさせてこちらを見つめてきた。
それに何かを察したのだろう。ティナマも彼女に休憩時間を設けてくれたので2人は小さな円卓を挟んで向かい合う。
「今の『トリスト』、っていうかこの世界が凄く変遷を迎えてるじゃない?なのに私達って何の力にもなれないのかなって・・・何かしなきゃいけないんじゃないかなって思うの。焦りっていうのかな。イフリータはそういう気持ち、無いの?」
良い香りのする紅茶のお陰で少しは考えを簡潔にまとめる事が出来たようだ。親友は更に目を大きく見開いて固まっていたがやがて優しく微笑むと質問に答えてくれる。
「・・・お前もそこまで考えるようになったのか。成長したじゃないか。」
「そ、そう?でも何も出来てないよ?何をすればいいのかもわからないし・・・」
「そんな事は無い。国や世界の為に何をすべきかを考えているだけでも十分だ。しかしクレイスからは何か言われていないのか?」
困惑するウンディーネを前にイフリータが楽しそうに尋ねてきたので記憶を思い返す。クレイスが何か私に・・・場面場面で多少頼まれ事を受けてはいたがノーヴァラットのように副将軍みたいな地位を任せられた事は無い筈だ。
そう考えるとクレイスを最も支えているのは彼女なのかもしれない。バルバロッサの復讐を未だ諦めていないかもしれないというのに重用するのは如何にも彼らしいが危なっかしさもある。
「・・・何も言われてないわね。イフリータは?このお店で働いているのもショウに頼まれたから?」
「それもあるが今の環境を気に入っている、というのも大きいな。」
もしかすると『魔族』というのはそういうものなのかもしれない。イフリータがウンディーネ以上に自由を謳歌していた事実に今度はこちらが目を丸くすると彼女はいたずらっぽい微笑みを返してくるのだった。
この先ア=ディラファやダム=ヴァーヴァといった異邦人がまだまだ現れるのだとすれば世界はますます混乱していくだろう。
ショウもヴァッツが敵対視している存在に対して警戒を高めており、クレイスを『トリスト』王にする事で体制を整えようと動いている。
では自身は何をすべきなのか。
答えが見つからないまま帰国したウンディーネは無意識に『気まぐれ屋』へ足を運ぶと親友がすぐに持て成してくれた。
「いらっしゃいませ。珍しいな、お前がこんな店に顔を出すとは。」
「・・・自分が働いてるお店に『こんな』ってつけるのはどうかと思うの。」
「うむ。イフリータの仕事は決して悪くないのだがどうにも愛想がな・・・ウンディーネからも言ってやってくれ。」
店長気取りのティナマも勿体ないといった様子で首を突っ込んでくると後方では表情の読みにくいウォダーフがはらはらした様子を見せている。
「ねぇイフリータ、あなたは今のままでいいの?」
「???本当にどうした?」
しかし今は自分の問題が最優先なのだ。焦りから説明をすっ飛ばして質問をぶつけるとイフリータは本気で戦う時でさえ滅多に見開かない双眸をぱちくりとさせてこちらを見つめてきた。
それに何かを察したのだろう。ティナマも彼女に休憩時間を設けてくれたので2人は小さな円卓を挟んで向かい合う。
「今の『トリスト』、っていうかこの世界が凄く変遷を迎えてるじゃない?なのに私達って何の力にもなれないのかなって・・・何かしなきゃいけないんじゃないかなって思うの。焦りっていうのかな。イフリータはそういう気持ち、無いの?」
良い香りのする紅茶のお陰で少しは考えを簡潔にまとめる事が出来たようだ。親友は更に目を大きく見開いて固まっていたがやがて優しく微笑むと質問に答えてくれる。
「・・・お前もそこまで考えるようになったのか。成長したじゃないか。」
「そ、そう?でも何も出来てないよ?何をすればいいのかもわからないし・・・」
「そんな事は無い。国や世界の為に何をすべきかを考えているだけでも十分だ。しかしクレイスからは何か言われていないのか?」
困惑するウンディーネを前にイフリータが楽しそうに尋ねてきたので記憶を思い返す。クレイスが何か私に・・・場面場面で多少頼まれ事を受けてはいたがノーヴァラットのように副将軍みたいな地位を任せられた事は無い筈だ。
そう考えるとクレイスを最も支えているのは彼女なのかもしれない。バルバロッサの復讐を未だ諦めていないかもしれないというのに重用するのは如何にも彼らしいが危なっかしさもある。
「・・・何も言われてないわね。イフリータは?このお店で働いているのもショウに頼まれたから?」
「それもあるが今の環境を気に入っている、というのも大きいな。」
もしかすると『魔族』というのはそういうものなのかもしれない。イフリータがウンディーネ以上に自由を謳歌していた事実に今度はこちらが目を丸くすると彼女はいたずらっぽい微笑みを返してくるのだった。
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