闇を統べる者
クレイスの憂鬱 -王の誇り-⑤
「・・・何故殺さん?」
それからすぐに口を開いたかと思えばこれまた意外な内容だったので言葉に詰まってしまう。
「・・・勝敗はつきました。僕は無益な殺生を好みませんから。」
「・・・甘いな。もし我がメラーヴィ王に武器を放てば全てが無に帰すぞ?」
言われてどきりとしたが彼の傍にはワーディライやイルフォシアもいるのだ。もしそれを実行されても十分凌げた、と信じたい。
「威光を語る王がそんな姑息な手を使うでしょうか?」
「・・・ふむ。クレイス、と言ったか。気に入った。我の配下になれ。」
なので念の為釘を刺す意味でそう告げると想定していない答えが返ってきたので再び言葉を失った。この男、傲慢というか不遜というか、己が最上位だという思考を変えるつもりは一切ないらしい。
「クレイス様は将来『トリスト』の国王になる御方、貴方のような男の配下にはなり得ません。」
「そうそう!!『マスィール』だか何だか知らないけどクレイス様は覇者になる御方なのです!!っていうか負けたのに大きすぎませんか?!その態度!!」
「でも不思議な人ね。魔術じゃないのに魔術みたいな戦い方をしてた。クレイスもそこが気になったから生かしてあげたんでしょ?」
そしてア=ディラファの言葉はしっかり聞こえていたのか。やっと戦いに幕が閉じたかと思った瞬間、イルフォシア達が非難の声を上げつつこちらに抱き着いてきたのだから笑うしかない。
「しかし驚いたな。ア=ディラファでさえも敵わない猛者がいるとは。どうする?」
「・・・うむ。同盟くらいなら結んでやっても良いか。」
「やれやれ。若さ故の傲慢さ、というのも理解は出来るがここまでとは・・・ワーディライ、大槌の力でこやつも拘束出来るか?」
「どれ、試してみましょう。」
王都を壊滅させた彼らは間違いなく処刑されるだろう。それでも拘束に舵を切ったのはクレイスがア=ディラファに止めを刺さなかったからに他ならないのだがその行動はメラーヴィに大いなる感心と怒りを鎮めるのに一役買っていた。
彼も娯楽や興味本位で2人を戦わせたのではない。クレイスの絶対的な信念と勝利を信じていたからこそ全てを委ねたのだ。
ア=ディラファを討ち取れば『ダブラム』との強固な関係も生まれるし、何より話に聞いていた『トリスト』の後継者として十分すぎる戦果を残せた筈だ。
なのにクレイスはメラーヴィに倣った。部外者という立場も考慮して打ち勝つだけに留めたのだから王としての資質は疑いようがない。
「ほう?不思議な武具だ。しかし王である我に枷を掛けるとは・・・後で後悔する事になるぞ?」
「ア=ディラファ君、王の言動には王たる責任が伴うのだよ。ま、君には到底理解出来ないかもしれないけどね。」
彼を必ず『トリスト』王に推戴しよう。ルサナという少女の口から飛び出した覇者という道もクレイスなら十分踏破出来る筈だ。
この日母国が壊滅状態であったにも拘らずそれ以上に明るい未来を見たメラーヴィは固く決意するとワーディライの背中を軽く叩く。
「さて、今後の復興は『腑を喰らいし者』の力も必要だろう。彼を迎えに行こうじゃないか。」
だが詳細な心情を読み取れ無かったクレイスはメラーヴィの前向きな姿勢にただただ感銘を受けつつ、復興についても全力で手伝う事を誓うのだった。
それからすぐに口を開いたかと思えばこれまた意外な内容だったので言葉に詰まってしまう。
「・・・勝敗はつきました。僕は無益な殺生を好みませんから。」
「・・・甘いな。もし我がメラーヴィ王に武器を放てば全てが無に帰すぞ?」
言われてどきりとしたが彼の傍にはワーディライやイルフォシアもいるのだ。もしそれを実行されても十分凌げた、と信じたい。
「威光を語る王がそんな姑息な手を使うでしょうか?」
「・・・ふむ。クレイス、と言ったか。気に入った。我の配下になれ。」
なので念の為釘を刺す意味でそう告げると想定していない答えが返ってきたので再び言葉を失った。この男、傲慢というか不遜というか、己が最上位だという思考を変えるつもりは一切ないらしい。
「クレイス様は将来『トリスト』の国王になる御方、貴方のような男の配下にはなり得ません。」
「そうそう!!『マスィール』だか何だか知らないけどクレイス様は覇者になる御方なのです!!っていうか負けたのに大きすぎませんか?!その態度!!」
「でも不思議な人ね。魔術じゃないのに魔術みたいな戦い方をしてた。クレイスもそこが気になったから生かしてあげたんでしょ?」
そしてア=ディラファの言葉はしっかり聞こえていたのか。やっと戦いに幕が閉じたかと思った瞬間、イルフォシア達が非難の声を上げつつこちらに抱き着いてきたのだから笑うしかない。
「しかし驚いたな。ア=ディラファでさえも敵わない猛者がいるとは。どうする?」
「・・・うむ。同盟くらいなら結んでやっても良いか。」
「やれやれ。若さ故の傲慢さ、というのも理解は出来るがここまでとは・・・ワーディライ、大槌の力でこやつも拘束出来るか?」
「どれ、試してみましょう。」
王都を壊滅させた彼らは間違いなく処刑されるだろう。それでも拘束に舵を切ったのはクレイスがア=ディラファに止めを刺さなかったからに他ならないのだがその行動はメラーヴィに大いなる感心と怒りを鎮めるのに一役買っていた。
彼も娯楽や興味本位で2人を戦わせたのではない。クレイスの絶対的な信念と勝利を信じていたからこそ全てを委ねたのだ。
ア=ディラファを討ち取れば『ダブラム』との強固な関係も生まれるし、何より話に聞いていた『トリスト』の後継者として十分すぎる戦果を残せた筈だ。
なのにクレイスはメラーヴィに倣った。部外者という立場も考慮して打ち勝つだけに留めたのだから王としての資質は疑いようがない。
「ほう?不思議な武具だ。しかし王である我に枷を掛けるとは・・・後で後悔する事になるぞ?」
「ア=ディラファ君、王の言動には王たる責任が伴うのだよ。ま、君には到底理解出来ないかもしれないけどね。」
彼を必ず『トリスト』王に推戴しよう。ルサナという少女の口から飛び出した覇者という道もクレイスなら十分踏破出来る筈だ。
この日母国が壊滅状態であったにも拘らずそれ以上に明るい未来を見たメラーヴィは固く決意するとワーディライの背中を軽く叩く。
「さて、今後の復興は『腑を喰らいし者』の力も必要だろう。彼を迎えに行こうじゃないか。」
だが詳細な心情を読み取れ無かったクレイスはメラーヴィの前向きな姿勢にただただ感銘を受けつつ、復興についても全力で手伝う事を誓うのだった。
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