闇を統べる者
クレイスの憂鬱 -王の誇り-①
「これは・・・ダム=ヴァーヴァ、何故街をここまで破壊する必要があったの?」
最初こそあまり気乗りはしなかったが間近で『ダブラム』の惨状を目の当たりにしたクレイスは強く問いかける。ここまで壊滅状態だと復興までどれほど時間と労力が必要なのか見当もつかない。犠牲者も相当な数が出ているはずだ。
「何故ってそれはア=ディラファの威光を示す為だよ。ってか君はさっきから何だい?メラーヴィ王の側近や配下って訳でもなさそうだけど。」
威光。威光とは何だ?他国を滅亡させる事が威光なのか?
「クレイス君はとある国の王太子だよ。」
この時メラーヴィも怒りを必死に堪えていたらしい。普段通り温厚に受け答えしてはいたものの体を小刻みに震えさせて必死に我慢していたという。
「・・・ア=ディラファが周辺国を襲う可能性は無いか?」
そこにワーディライが感情の外から別の可能性を示唆するとダム=ヴァーヴァは他人事のように首を横に振った。
「さてね。王自ら侵攻するような真似をあの人が好むとは思えないけど俺はこの体たらくだしなぁ。見限られる可能性はあるかな。」
「その通りだ。よくわかっているな、ダム=ヴァーヴァ。」
そして自分達より更に上から声がかかると全員が空を見上げる。すると派手で豪奢な黒い鎧に身を包んだ男が外套を翻しながらこちらを見下しているではないか。
黒く短い髪とナルサスに似た切れ長な双眸は相当冷酷な性格を物語っているのだろう。他の面々が警戒する中、まずは最も発言すべき王が静かに語り出した。
「君か、ア=ディラファというのは。見た所まだ若いね。そして向こう見ずで世間知らずと。そんな未熟者が王を名乗るとは随分と烏滸がましいじゃないか。」
出てきた言葉は怨恨と憤怒を形に変えて遠回しに避難するものだがこれは仕方がない。むしろここまでの被害が出ているのに話し合いという形を崩さないのだからメラーヴィも相当な器だ。
「黙れ下郎。貴様がこの地の王を名乗っていたそうだが分不相応だ。今から『マスィール』の一部に組み込む。異論はないな?」
やはり中身もナルサスに似ているらしい。というより冷酷な人間というのは皆似たようなものなのだろう。
他者を慮る思考を持ち合わせておらず、勘違いのまま道を突き進む。その道が多くの人々から支持されるのであれば理解は出来るが今それに賛同するのはダム=ヴァーヴァしかいない。
「そんな理屈が通る筈がないでしょう。ア=ディラファ、貴方は国を、民を何だと思っているのですか?」
本当ならやり取りのすべてをメラーヴィに託すべきだった筈だが不思議に思ったクレイスはつい口を挟んでしまう。
「国も民も王の所有物であり王の威光を授かる下僕である。そこの少年よ。他に何があるというのかね?」
すると想定通り、いかもに異邦人らしい価値観や思想の異なる答えが返ってきたのだが納得いくかどうかは別問題だ。
他国同士のやり取りにこれ以上首を突っ込むのはよろしくない。しかし王族の血が抑えられなかったクレイスは軽く呼吸を整えた後再び口を開くのだった。
最初こそあまり気乗りはしなかったが間近で『ダブラム』の惨状を目の当たりにしたクレイスは強く問いかける。ここまで壊滅状態だと復興までどれほど時間と労力が必要なのか見当もつかない。犠牲者も相当な数が出ているはずだ。
「何故ってそれはア=ディラファの威光を示す為だよ。ってか君はさっきから何だい?メラーヴィ王の側近や配下って訳でもなさそうだけど。」
威光。威光とは何だ?他国を滅亡させる事が威光なのか?
「クレイス君はとある国の王太子だよ。」
この時メラーヴィも怒りを必死に堪えていたらしい。普段通り温厚に受け答えしてはいたものの体を小刻みに震えさせて必死に我慢していたという。
「・・・ア=ディラファが周辺国を襲う可能性は無いか?」
そこにワーディライが感情の外から別の可能性を示唆するとダム=ヴァーヴァは他人事のように首を横に振った。
「さてね。王自ら侵攻するような真似をあの人が好むとは思えないけど俺はこの体たらくだしなぁ。見限られる可能性はあるかな。」
「その通りだ。よくわかっているな、ダム=ヴァーヴァ。」
そして自分達より更に上から声がかかると全員が空を見上げる。すると派手で豪奢な黒い鎧に身を包んだ男が外套を翻しながらこちらを見下しているではないか。
黒く短い髪とナルサスに似た切れ長な双眸は相当冷酷な性格を物語っているのだろう。他の面々が警戒する中、まずは最も発言すべき王が静かに語り出した。
「君か、ア=ディラファというのは。見た所まだ若いね。そして向こう見ずで世間知らずと。そんな未熟者が王を名乗るとは随分と烏滸がましいじゃないか。」
出てきた言葉は怨恨と憤怒を形に変えて遠回しに避難するものだがこれは仕方がない。むしろここまでの被害が出ているのに話し合いという形を崩さないのだからメラーヴィも相当な器だ。
「黙れ下郎。貴様がこの地の王を名乗っていたそうだが分不相応だ。今から『マスィール』の一部に組み込む。異論はないな?」
やはり中身もナルサスに似ているらしい。というより冷酷な人間というのは皆似たようなものなのだろう。
他者を慮る思考を持ち合わせておらず、勘違いのまま道を突き進む。その道が多くの人々から支持されるのであれば理解は出来るが今それに賛同するのはダム=ヴァーヴァしかいない。
「そんな理屈が通る筈がないでしょう。ア=ディラファ、貴方は国を、民を何だと思っているのですか?」
本当ならやり取りのすべてをメラーヴィに託すべきだった筈だが不思議に思ったクレイスはつい口を挟んでしまう。
「国も民も王の所有物であり王の威光を授かる下僕である。そこの少年よ。他に何があるというのかね?」
すると想定通り、いかもに異邦人らしい価値観や思想の異なる答えが返ってきたのだが納得いくかどうかは別問題だ。
他国同士のやり取りにこれ以上首を突っ込むのはよろしくない。しかし王族の血が抑えられなかったクレイスは軽く呼吸を整えた後再び口を開くのだった。
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