闇を統べる者
クレイスの憂鬱 -王の誘い-⑧
「ワーディライ、加減が難しいのなら殺してしまっても構わないからね。」
少し離れた場所でキャイベルに乗ったままメラーヴィが許可を下ろすと彼もヴァッツから与えられた大槌を構える。
「殺す?俺を殺すだって?!はっはっは~面白い冗談だ。それならこちらも一応名前を聞いておいた方がいいのかな?」
「わしはワーディライ、『ダブラム』唯一の将軍じゃ。では行くぞ?」
既に周辺は瓦礫と化しているので遠慮は要らないだろう。ワーディライはダム=ヴァーヴァの乗る二輪の重装馬車を無力化しようと前に跳んで大槌を放ったのだが想定外の動きを見せたことでその一撃は空を切った。
「えっ?!」
これにはクレイスが誰よりも早くに声をもらすが当然だ。
「おお~老体なのに動けるねぇ!」
何故なら二頭引きの重装馬車は速さもさることながら間違いなく空を駆っているから。『トリスト』ではその技術が外部に漏れないよう厳しい管理下に置かれている筈なのにどうなっているのだ?
しかし答えを悠長に考えている暇はない。ダム=ヴァーヴァの乗った重装馬車は速度を増して中空を旋回するとそのままワーディライに突撃してきたので魔術で援護すべきかどうか悩んだが彼もまた『孤高』と呼ばれる一人なのだ。
「ぬぅぅんっ!!!」
ばっきんっ!!!
突っ込んできた馬の横面に大槌が当たると重装馬車はダム=ヴァーヴァを乗せたまま大きく傾いて地面に激突する。だが相手もかなりの猛者なのだろう。
その瞬間に飛び降りつつ右手で長槍を突き出してきたのでワーディライも素早く身をひるがえすと2人は距離を置いて対峙し直した。
「いやいや、流石は将軍様だ。まさか俺の鉄騎が潰されるとは・・・これは少し本気でいかなきゃいけないかな。」
地面に引きずりおろしたにも拘らずダム=ヴァーヴァの気配と発言には余裕がある。
「ワーディライ、気を付けろ。奴は魔術らしきものを使ってくるぞ。」
それを誰よりも警戒したのは他でもない『腑を喰らいし者』だ。直接対峙した彼だからこそ、空を飛ぶ馬車以上に警戒せねばと伝えたいらしい。
対してワーディライも忠告に応えるかのように大槌を握る手から筋肉の収縮する音が聞こえてくる。
「気を付けた所でどうにかなるかな?いくぜ。雷光の槍撃。」
それからすぐ余裕の原因が解放されるとクレイスは目を見張った。何とダム=ヴァーヴァは雷が宿った穂先から刺突攻撃を放ってきたのだ。
それは自身が長剣に水の魔術を施すのと同じようなものなのだろう。威力は容易に想像がつくし、何より雷を走らせる魔術は水とは比べ物にならない程速い。
もしワーディライが普通の武器や『黒威』のままなら今の攻撃で心臓を貫かれていたかもしれない。
ところが相手を傷つける事を制限されていた大槌は持ち主の危機を察知したのか、誰の眼にも止まらぬ動きを見せるとダム=ヴァーヴァの攻撃は失われた筈の左手によって受け止められていた。
少し離れた場所でキャイベルに乗ったままメラーヴィが許可を下ろすと彼もヴァッツから与えられた大槌を構える。
「殺す?俺を殺すだって?!はっはっは~面白い冗談だ。それならこちらも一応名前を聞いておいた方がいいのかな?」
「わしはワーディライ、『ダブラム』唯一の将軍じゃ。では行くぞ?」
既に周辺は瓦礫と化しているので遠慮は要らないだろう。ワーディライはダム=ヴァーヴァの乗る二輪の重装馬車を無力化しようと前に跳んで大槌を放ったのだが想定外の動きを見せたことでその一撃は空を切った。
「えっ?!」
これにはクレイスが誰よりも早くに声をもらすが当然だ。
「おお~老体なのに動けるねぇ!」
何故なら二頭引きの重装馬車は速さもさることながら間違いなく空を駆っているから。『トリスト』ではその技術が外部に漏れないよう厳しい管理下に置かれている筈なのにどうなっているのだ?
しかし答えを悠長に考えている暇はない。ダム=ヴァーヴァの乗った重装馬車は速度を増して中空を旋回するとそのままワーディライに突撃してきたので魔術で援護すべきかどうか悩んだが彼もまた『孤高』と呼ばれる一人なのだ。
「ぬぅぅんっ!!!」
ばっきんっ!!!
突っ込んできた馬の横面に大槌が当たると重装馬車はダム=ヴァーヴァを乗せたまま大きく傾いて地面に激突する。だが相手もかなりの猛者なのだろう。
その瞬間に飛び降りつつ右手で長槍を突き出してきたのでワーディライも素早く身をひるがえすと2人は距離を置いて対峙し直した。
「いやいや、流石は将軍様だ。まさか俺の鉄騎が潰されるとは・・・これは少し本気でいかなきゃいけないかな。」
地面に引きずりおろしたにも拘らずダム=ヴァーヴァの気配と発言には余裕がある。
「ワーディライ、気を付けろ。奴は魔術らしきものを使ってくるぞ。」
それを誰よりも警戒したのは他でもない『腑を喰らいし者』だ。直接対峙した彼だからこそ、空を飛ぶ馬車以上に警戒せねばと伝えたいらしい。
対してワーディライも忠告に応えるかのように大槌を握る手から筋肉の収縮する音が聞こえてくる。
「気を付けた所でどうにかなるかな?いくぜ。雷光の槍撃。」
それからすぐ余裕の原因が解放されるとクレイスは目を見張った。何とダム=ヴァーヴァは雷が宿った穂先から刺突攻撃を放ってきたのだ。
それは自身が長剣に水の魔術を施すのと同じようなものなのだろう。威力は容易に想像がつくし、何より雷を走らせる魔術は水とは比べ物にならない程速い。
もしワーディライが普通の武器や『黒威』のままなら今の攻撃で心臓を貫かれていたかもしれない。
ところが相手を傷つける事を制限されていた大槌は持ち主の危機を察知したのか、誰の眼にも止まらぬ動きを見せるとダム=ヴァーヴァの攻撃は失われた筈の左手によって受け止められていた。
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