闇を統べる者
クレイスの憂鬱 -八人目-④
「あとさ、その力は誰に貰ったの?」
「へぇっ?こ、これは僕が生まれた時から持っている力でして・・」
「違うね。それは誰かに与えられたものだよ。誰だ・・・・・お前は誰だ?」
そして彼が徐に右手を向けたので周囲は一瞬で緊張感に包まれる。まさかこんな場面が生まれるとは思わずクレイスも乾いた口内で喉を鳴らすがそれは一瞬で霧散した。
「・・・・・とにかくもう悪さはしない方がいいよ。でないと奴に利用されちゃうから。」
「奴?」
「うん。よくわからないんだけどクンシェオルト達を生き返らせたりしてくるし、皆も気を付けてね。」
それは流石に気を付けようがないのでは?名前を出された本人も珍しく気恥ずかしい様子を見せているがヴァッツの雰囲気から『奴』と呼ばれた存在こそ最大限に警戒しなければならないらしい。
「・・・という事じゃ。セイドも良く良く理解したようじゃし会談は終わりでよいのか?」
「ま、待て!ティナマよ。今後争いに首を突っ込む真似は控えるから『七神』に戻って来んか?きっとア=レイも喜ぶじゃろうて!」
どうやら彼らには確かな絆が存在しているようだ。特にアジューズと呼ばれる老人はそれを大切に思っているのか、彼女を再び誘うもティナマはそっぽを向いてしまう。
「いらぬ。というかア=レイとは誰じゃ?」
そして些細なやり取りから話は再び予期せぬ方向に展開され始める。
元『七神』の長である彼女が仲間の事を認知していない訳がない。にも拘らず不思議そうに小首を傾げて尋ねると今度は『七神』の面々が驚いて顔を見合わせていた。
「・・・いや、ア=レイだよ。ほら、興味ある事でしか動かない我儘な中年だ。私より少し年下のあいつだよ。」
「まぁ確かに奴は『七神』としての自覚は薄いからの。しかし存在感はあった筈じゃが・・・」
「いや全く知らんな。姿も声も名前にも記憶にない。わらわが抜けて以降新しく入った仲間ではないのか?」
突如始まった妙なやり取りは本人達が一番違和感を覚えていただろう。周囲も一先ず様子を見る姿勢に入っていたのだがここで決定的な食い違いを垣間見る。
「だ、だって僕達は7人で『七神』だよ?ティナマを長に僕、フェレーヴァ、アジューズ、ダクリバン、ガハバ、マーレッグにア=レイ・・・」
「・・・それだと8人ですね。」
ずっと黙っていたショウも嫌な予感からつい口を挟んでしまったようだ。しかし『七神』の面々は不思議そうに小首を傾げるだけでイェ=イレィは薄笑いを零す。
「やれやれ、数も数えられぬ者達でしたか。ヴァッツ様、やはりこやつらは抹消すべきかと。生かしておいてもまた騒ぎを起こすだけですよ?」
「お前は本当に元『神族』か?狭量にもほどがあるぞ。こやつらは長を除いて7人だという勘違いをしていたに過ぎん。クレイスはどう思う?」
「そ、そうですよね。流石に数え間違う事はないでしょうし・・・恐らく認識のずれ、ですよね。」
そう思いたい。思いたかったが妙に引っかかるのは何故だ?
辛うじてフロウに同意したものの一向にもやもやの晴れないクレイスは周囲の様子を窺うと皆困惑こそ見せていたが深く追求しようとするものはいないらしい。
そう、ただ一人を除いて・・・
がたんっ!
だが既に限界を超えていたのだろう。会談はガビアムが意識を失って椅子から転げ落ちた事で幕を閉じてしまったのだが終わり際に気になったヴァッツがア=レイの所在を尋ねるも誰一人として答える事は出来なかった。
「へぇっ?こ、これは僕が生まれた時から持っている力でして・・」
「違うね。それは誰かに与えられたものだよ。誰だ・・・・・お前は誰だ?」
そして彼が徐に右手を向けたので周囲は一瞬で緊張感に包まれる。まさかこんな場面が生まれるとは思わずクレイスも乾いた口内で喉を鳴らすがそれは一瞬で霧散した。
「・・・・・とにかくもう悪さはしない方がいいよ。でないと奴に利用されちゃうから。」
「奴?」
「うん。よくわからないんだけどクンシェオルト達を生き返らせたりしてくるし、皆も気を付けてね。」
それは流石に気を付けようがないのでは?名前を出された本人も珍しく気恥ずかしい様子を見せているがヴァッツの雰囲気から『奴』と呼ばれた存在こそ最大限に警戒しなければならないらしい。
「・・・という事じゃ。セイドも良く良く理解したようじゃし会談は終わりでよいのか?」
「ま、待て!ティナマよ。今後争いに首を突っ込む真似は控えるから『七神』に戻って来んか?きっとア=レイも喜ぶじゃろうて!」
どうやら彼らには確かな絆が存在しているようだ。特にアジューズと呼ばれる老人はそれを大切に思っているのか、彼女を再び誘うもティナマはそっぽを向いてしまう。
「いらぬ。というかア=レイとは誰じゃ?」
そして些細なやり取りから話は再び予期せぬ方向に展開され始める。
元『七神』の長である彼女が仲間の事を認知していない訳がない。にも拘らず不思議そうに小首を傾げて尋ねると今度は『七神』の面々が驚いて顔を見合わせていた。
「・・・いや、ア=レイだよ。ほら、興味ある事でしか動かない我儘な中年だ。私より少し年下のあいつだよ。」
「まぁ確かに奴は『七神』としての自覚は薄いからの。しかし存在感はあった筈じゃが・・・」
「いや全く知らんな。姿も声も名前にも記憶にない。わらわが抜けて以降新しく入った仲間ではないのか?」
突如始まった妙なやり取りは本人達が一番違和感を覚えていただろう。周囲も一先ず様子を見る姿勢に入っていたのだがここで決定的な食い違いを垣間見る。
「だ、だって僕達は7人で『七神』だよ?ティナマを長に僕、フェレーヴァ、アジューズ、ダクリバン、ガハバ、マーレッグにア=レイ・・・」
「・・・それだと8人ですね。」
ずっと黙っていたショウも嫌な予感からつい口を挟んでしまったようだ。しかし『七神』の面々は不思議そうに小首を傾げるだけでイェ=イレィは薄笑いを零す。
「やれやれ、数も数えられぬ者達でしたか。ヴァッツ様、やはりこやつらは抹消すべきかと。生かしておいてもまた騒ぎを起こすだけですよ?」
「お前は本当に元『神族』か?狭量にもほどがあるぞ。こやつらは長を除いて7人だという勘違いをしていたに過ぎん。クレイスはどう思う?」
「そ、そうですよね。流石に数え間違う事はないでしょうし・・・恐らく認識のずれ、ですよね。」
そう思いたい。思いたかったが妙に引っかかるのは何故だ?
辛うじてフロウに同意したものの一向にもやもやの晴れないクレイスは周囲の様子を窺うと皆困惑こそ見せていたが深く追求しようとするものはいないらしい。
そう、ただ一人を除いて・・・
がたんっ!
だが既に限界を超えていたのだろう。会談はガビアムが意識を失って椅子から転げ落ちた事で幕を閉じてしまったのだが終わり際に気になったヴァッツがア=レイの所在を尋ねるも誰一人として答える事は出来なかった。
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