闇を統べる者
クレイスの憂鬱 -八人目-③
「ではまず『黒威』を手掛けておられる方は名乗って頂けますか?あと種族も教えてください。」
「は、はい。セイドと申します・・・一応『天人族』です。」
事前情報で把握はしていたがまさかこんな老人があれ程豪奢で強力な武器を作っていたとは。意外過ぎて思わず凝視していたがそれは周囲も同じだったようだ。
「ふむ。『天人族』というと『天族』の血を色濃く引き継いでおられる筈。という事は単純な膂力や人を操る能力に特化されておられるのですね?」
「い、いえ、ぼ、僕はその、戦う力がほとんどなくて・・・それで『黒威』を作っては人に渡して世界の均衡を計る役目を担ってました・・・はい。」
ヴァッツだけでなく『悪魔族』や『神族』の存在にも怯えているのか、しどろもどろしながら答える内容を確認すべくショウがティナマに視線を向けると彼女は頷いてみせた。
続いてショウがこちらに頷いてきたのでクレイスは自身の役目を果たす為に要件を伝える。
「ではセイド様、今後『黒威』を人間に渡さないようにお願い出来ますか?」
すると彼はくぼんだ眼窩から目玉が零れ落ちそうな程驚いた後、静かに口を開いた。
「そ、それは出来ません。も、もし僕から『黒威』を奪われたら・・・ほ、本当に存在価値がなくなってしまう・・・」
なるほど。戦いで貢献出来ない以上、セイドが『七神』の中で認められるにはそれしか手段がない訳だ。自身もつい最近まで何も持たない存在だった為彼の気持ちは少し理解出来てしまうが誰よりも『黒威』に恨みを持つ人物にそんな泣き言は通用しない。
「ではこの場で処刑しましょう。ね?ヴァッツ様?」
「えっ?!」
「だって人間に害成す存在なのでしょう?そして改心するつもりもない。なら抹消するしかありません。ショウ様もそうは思われませんか?」
「はい。仰る通りです。」
「二人とも極端すぎるよ?!」
流れるようなやりとりに一人納得のいかなかったヴァッツは呆れ返るがクレイスも2人の意見に近い。つい先日も『黒威』に染まったボトヴィという人間が『アデルハイド』の黒い竜を襲ったのだから猶更だ。
「そもそも!!セイドだっけ?もう作っちゃ駄目だよ!!」
しかしここで説得に走るのが心優しき親友なのだ。破格の発言を前に誰もが見守る姿勢に入るとセイドも戸惑いつつそれに答え始める。
「で、でも・・・本当に僕ってなんの取り柄もないんだよ?も、もし『七神』に参加してなくても僕が生きてる意味を見出すにはこれしか・・・」
「でもじゃないよ!!その『黒威』っていうのがどういうものかわかってるの?!」
「へっ?」
「・・・ねぇセイド、『黒威』には『天人族』の力が込められてるのはわかるよね?」
「は、はい。それはもちろん。こ、この形でしか僕は力を発揮出来ませんから・・・」
「その時君の命も削られてるのは知ってる?」
「・・・えっ?」
そのやり取りは本人こそ驚いていたもののクレイスからすれば妙に腑に落ちるものだった。ならばあの強さも納得がいくと、そう感じたのだがヴァッツが止める理由はまだ先にあるらしい。
「君は『天族』が持つ人の心を操る力と戦う力を『黒威』に込めている。でもそれだけじゃない。持ち主が力を発揮する度君の力の全てが消費されてるんだよ。」
「そ、そこに命も入っている、と?」
つまり『黒威』とは文字通り命を懸けて作られた代物なのだ。何とも禍々しい話に周囲は様々な反応を見せていたがヴァッツは優しく断言する。
「多分次に『黒威』を作れば君は死ぬ。それでもいいの?」
「そ、それは・・・・・」
彼が何の根拠もなくこんな事を言う訳が無い。恐らくセイドとやらの寿命はそこまで削られているのだろう。となれば今後『黒威』の脅威に晒される心配もなくなるか?
ところがこの話にはもう1つ確認しておかねばならない事があったらしい。ヴァッツがそれを尋ねた時、会談は別の方向に動き始めた。
「は、はい。セイドと申します・・・一応『天人族』です。」
事前情報で把握はしていたがまさかこんな老人があれ程豪奢で強力な武器を作っていたとは。意外過ぎて思わず凝視していたがそれは周囲も同じだったようだ。
「ふむ。『天人族』というと『天族』の血を色濃く引き継いでおられる筈。という事は単純な膂力や人を操る能力に特化されておられるのですね?」
「い、いえ、ぼ、僕はその、戦う力がほとんどなくて・・・それで『黒威』を作っては人に渡して世界の均衡を計る役目を担ってました・・・はい。」
ヴァッツだけでなく『悪魔族』や『神族』の存在にも怯えているのか、しどろもどろしながら答える内容を確認すべくショウがティナマに視線を向けると彼女は頷いてみせた。
続いてショウがこちらに頷いてきたのでクレイスは自身の役目を果たす為に要件を伝える。
「ではセイド様、今後『黒威』を人間に渡さないようにお願い出来ますか?」
すると彼はくぼんだ眼窩から目玉が零れ落ちそうな程驚いた後、静かに口を開いた。
「そ、それは出来ません。も、もし僕から『黒威』を奪われたら・・・ほ、本当に存在価値がなくなってしまう・・・」
なるほど。戦いで貢献出来ない以上、セイドが『七神』の中で認められるにはそれしか手段がない訳だ。自身もつい最近まで何も持たない存在だった為彼の気持ちは少し理解出来てしまうが誰よりも『黒威』に恨みを持つ人物にそんな泣き言は通用しない。
「ではこの場で処刑しましょう。ね?ヴァッツ様?」
「えっ?!」
「だって人間に害成す存在なのでしょう?そして改心するつもりもない。なら抹消するしかありません。ショウ様もそうは思われませんか?」
「はい。仰る通りです。」
「二人とも極端すぎるよ?!」
流れるようなやりとりに一人納得のいかなかったヴァッツは呆れ返るがクレイスも2人の意見に近い。つい先日も『黒威』に染まったボトヴィという人間が『アデルハイド』の黒い竜を襲ったのだから猶更だ。
「そもそも!!セイドだっけ?もう作っちゃ駄目だよ!!」
しかしここで説得に走るのが心優しき親友なのだ。破格の発言を前に誰もが見守る姿勢に入るとセイドも戸惑いつつそれに答え始める。
「で、でも・・・本当に僕ってなんの取り柄もないんだよ?も、もし『七神』に参加してなくても僕が生きてる意味を見出すにはこれしか・・・」
「でもじゃないよ!!その『黒威』っていうのがどういうものかわかってるの?!」
「へっ?」
「・・・ねぇセイド、『黒威』には『天人族』の力が込められてるのはわかるよね?」
「は、はい。それはもちろん。こ、この形でしか僕は力を発揮出来ませんから・・・」
「その時君の命も削られてるのは知ってる?」
「・・・えっ?」
そのやり取りは本人こそ驚いていたもののクレイスからすれば妙に腑に落ちるものだった。ならばあの強さも納得がいくと、そう感じたのだがヴァッツが止める理由はまだ先にあるらしい。
「君は『天族』が持つ人の心を操る力と戦う力を『黒威』に込めている。でもそれだけじゃない。持ち主が力を発揮する度君の力の全てが消費されてるんだよ。」
「そ、そこに命も入っている、と?」
つまり『黒威』とは文字通り命を懸けて作られた代物なのだ。何とも禍々しい話に周囲は様々な反応を見せていたがヴァッツは優しく断言する。
「多分次に『黒威』を作れば君は死ぬ。それでもいいの?」
「そ、それは・・・・・」
彼が何の根拠もなくこんな事を言う訳が無い。恐らくセイドとやらの寿命はそこまで削られているのだろう。となれば今後『黒威』の脅威に晒される心配もなくなるか?
ところがこの話にはもう1つ確認しておかねばならない事があったらしい。ヴァッツがそれを尋ねた時、会談は別の方向に動き始めた。
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