闇を統べる者

吉岡我龍

王道 -夢に見た道-⑦

 確かな力を保有している『天人族』『魔人族』は強い。
にも拘らずフェレーヴァが勝てなかったのは単純に元『神族』であるイェ=イレィの方が強かっただけだ。
ガビアムが建物内に逃げ込んだ後、一瞬で間合いを詰めた2人は同時に攻撃を繰り出すが徒手空拳であるフェレーヴァと銀の杖を持つイェ=イレィでは間合いに差があり過ぎた。
いわゆる長柄物と呼ばれる武器に刀剣で対抗するには3倍以上の腕の差があって初めて互角に戦えるという。では無手の場合だとどうなるか。

びしびしびししっ!!!

刃こそ付いていないものの何か行動を起こそうとする毎に杖の突きや叩き付ける攻撃が放たれるので文字通り手も足も出ない。
そこに単純な力量差が加わってくると防戦一方になるのもやむなしといった状況だがこれは真剣勝負なのだ。
「『七神』ね・・・ヴァッツ様を差し置いて『神』を名乗るなんて不敬だわ。」
以前ナハトールに不覚を取った事から今回のイェ=イレィは油断する事無く立ち回っている。フェレーヴァの体は強烈な乱打撃によって一瞬で満足に動ける状態から遠ざかる。
そこに銀の鷹が『黒威』の長剣を持って戻ってきたのでイェ=イレィは上機嫌に、フェレーヴァはガビアムを見限って逃げる算段をつけ始めるのだが少し判断が遅すぎたようだ。

「イェ=イレィ、情報を聞き出すのだろう?そのままでは殺しかねないぞ?」

先に王城の方へ飛んで行った『悪魔族』の王フロウが傷だらけのアジューズを小脇に抱えて戻ってきた事により退路は断たれたらしい。
「え?私そんなに強く叩いてないけど・・・まだ目に光も残ってるしもう少しだけ、ね?」
ガビアムはともかく『七神』の仲間であるアジューズを放っておけなかったフェレーヴァは潔く彼女の攻撃を全身で受けるとその場で崩れ落ちる事を選ぶ。
しかし今夜の襲撃は彼らのものではない。首謀者が存在するのだ。
「ま、待て・・・」
「あら?銀ちゃん、あの子始末しなかったの?」
右手を失った痛みと絶望感に耐えながら何とか姿を見せたガビアムの顔色は既に死んでいる。しかし手負いのまま『リングストン』に残されてしまっては汚名を、生き恥を晒してしまう。
だったら『七神』と一緒に攫われるか、この場で散った方が良い。『黒威』から解放されたガビアムの心には後悔しかなかったが全てが遅すぎたのだ。

「知りたい事があるのなら私が教えよう。なので彼らは開放してくれ。」

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